2014年9月20日 (土)

鎌田實の一日一冊(216)

「愛と笑いの夜」(ヘンリー・ミラー著、福武文庫)
吉行淳之介の訳である。
自由の国アメリカでさえ、発禁書が7冊あるヘンリーミラー。
その激しいミラーの小説のなかでも、「初恋」「マドモアゼル・クロード」は柔らかくて美しい。
抒情的な一面が、吉行淳之介の訳でうまく出ている。
ミラーはデストロイヤー破壊者だ。
自分を破壊し、周囲の人間を破壊する。
ぼくは「人間らしい」ということにこだわってきたが、
ミラーを読んでいると、人間らしさの深さが見えてくる。
人間がどれほど暴力的で、狂気に満ちているか。

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「初恋」は、そんなミラーが、恋する男として自分自身を見つめている。
17歳のときの初恋が、この小説の材料になっているようだ。
一人の女性を愛しながら、何もできないミラー少年が初々しくていい。
「マドモアゼル・クロード」は、クロードという娼婦の話。
彼女の純粋無垢なエンジェルのような心の美しさにふれ、男は自分の汚れが、彼女をむしばむのではないかと恐れる。
こんな静かなヘンリー・ミラーがいる。

いつか近々、小説を書きたいと思っている。
ヘンリー・ミラーの影響が大きい。
自分の生き方にも迷いが出てきた。
もっと、自由に、と自分に言い聞かせている。

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