2019年6月16日 (日)

鎌田實の一日一冊(358)

「宮沢賢治の謎をめぐって わがうち秘めし異事の数、異空間の断片」(栗谷川虹著、作品社)

宮沢賢治は、ぼくたちが見えないものが見えている。
幻視者に似た視点をもつ賢治は、「見たものを書いている」という。
賢治の心象とは、想像力の拡大でも、夢の世界に浸ることでも、無意識の世界を探求することでもない。
ぼくたちの理性的意識界がじゃまをして見えないものが、彼には見えていたのではないか。
著者は、そんな視点で、宮沢賢治の心象の謎を解明していく。

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この本を読んで気づいたのは、
賢治を読むときには、ありのまま、そのまま、理屈をこねないで賢治が見る異界を受け入ること。
そうすることで、賢治が言おうしていることが素直にわかってくる。
宮沢賢治は深い。

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2019年6月15日 (土)

鎌田實の一日一冊(357)

「宮沢賢治 宇宙意志を見据えて」(長沼士朗著、コールサック社)

宮沢賢治は友人に宛てた手紙のなかで、「宇宙意志というものがある」という言葉を使っている。
相手は小学校の女性の教員。
天体や農業など科学的なことが好きな賢治、同時に信仰にものめり込む。
信仰か科学かというとき、自分はどうしても前者だと言っている。
宇宙意志とは、「超越」や「絶対」などと近い。
どうすることもできない「大いなるもの」という意味らしい。

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「デクノボー」とは何か、という視点が面白い。
宗教学者の山折哲雄さんは、食物連鎖のなかで生きている人間のあり方に強い不安を抱き、
そこから抜け出す人間を「デンノボー」と表現したのではないとしている。
「雨ニモ負ケズ」のなかに出てくるデクノボーは、病気の人や困っている人を助けているわけだから
役に立たない人間では決してない。
そんな「デクノボー」になりたいという賢治の視点は、新鮮に感じられた。
宮沢賢治はたくさんの人の心を揺さぶる作家。
その人にとっての「宮沢賢治」が存在する。

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2019年6月14日 (金)

鎌田實の一日一冊(356)

「明日への銀河鉄道 わが心の宮沢賢治」(三上満著、新日本出版社)

岩手日報文学賞を受賞している。
著者は学校の校長先生をしていた人。
「銀河鉄道の夜」は3種類あるが、
特に初期のものと、晩年に賢治自身の手でまとめられた最終稿の分析がおもしろい。
ジョパンニが「ほんとう幸せ」を探求して銀河鉄道に乗り込む。
その「本当の幸せ」とは何か。
結局は、未完になっている。

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この時代では生活に恵まれていた賢治だが、苦悩することが賢治をつくっていく。
苦悩があればいいというわけではないが、この作品を読んでいると
苦悩があってもいいと思えてくる。
苦悩そのものは目的でも目標でもないが、苦悩していてもいいんだ思うことができる本である。

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