2020年9月26日 (土)

鎌田實の一日一冊(380)

「アートリップ入門 対話型アート鑑賞プログラム」
(林容子著、誠文堂新光社)

認知症の人たちにアートを通して対応を広げるというプログラムを実践している林容子さんの本。
例えば、カミーユ・コローの絵を見ながら、何が描かれているかと聞いていきます。
すると、「ヨーロッパの風景」という人もいれば、「故郷の瀬戸内海に似てる」と答える人も。
「昔、山形に疎開してね、大きな木があったよ」などと語りだす人もいるそう。
絵をじっくりと鑑賞しながら、自由に発想が飛び交って、参加者がみんな楽しそうです。

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新型コロナウイルスの自粛中に認知機能が低下している人を時々、内科外来で見かけます。
アパシーと言う無気力にならないことが大事です。
いい絵を見る、音楽を聴くなど、感情にいつもいい刺激を与えること。
そして、上手に合いの手を入れてくれる人がいると、認知症の人も生き生きと楽しいおしゃべりを始めます。
たとえ認知症になっても諦めないで、アートリップのような感情を刺激することがとても大事なことのように思います。

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2020年9月25日 (金)

鎌田實の一日一冊(379)

「空の飛びかた」(セバスティアン・メッシェンモーザー著、光村教育図書)


11月中旬の発売に向け、「鎌田實の人生図書館」という本を執筆中。
そのなかで、ぼくのおすすめ絵本、ベスト10の中にこ本を選びました。
素敵な絵本です。
モノクロのデッサンで話が展開します。
主人公が、空を飛びたいペンギンと出会い、家に連れて行って一緒に生活を始めます。
飛ぶ訓練もしますが失敗します。
図書館行って、飛ぶためには何が必要かを勉強します。
色がついていきます。
世界が広がっていくのです。

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そして、ペンギンが飛びはじめます。
何がきっかけだったか、ここでは書かないことにします。
メタボペンギンがどうして飛び立つことができたのか。
人生を生きる上でのヒントになってるように思います。

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2020年9月24日 (木)

鎌田實の一日一冊(378)

「白い病気 マクロブロスの秘密」(カレル・チャベック著、栗栖茜訳、海山社)


昨日、カレル・チャペックの戯曲「白い病気」を紹介しましたが、この本に「マクロプロスの秘密」という戯曲も収録されています。
これも、約80年前に書かれた傑作です。

「マクロプロスの秘密」は、ヤナーチェクによってオペラにもなって、日本でも上演されています。
主人公は、300年前にから長寿の薬を使って生きています。
れが幸せなのかどうか。
長寿の薬の処方箋をめぐって議論が展開されます。

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337歳の主人公がこんなセリフを言います。
「長生きなんて我慢できないわ。肝心の魂が死んでしまい、アンニュイというか、何もかもが空虚でもういらない感じなの。
さっさと死んでしまえるからこそすべていいんじゃないか」
不老不死の秘薬をもらいたいと思ってきた人たちが、この言葉に揺れ動きます。
「例えばの話だが・・・・契約、年金、保険、給料、遺産相続権それに結婚、
どれもこれも300年も生きるという前提で作られてないんだ」
命や人権を大事にするヒューマニズムが根底にあって、300年も生きることができる薬が作られました。
命を大事にしているはずなのに、いくつまでもいつまでも生きることができると、
どこかで生きることを禁じなくてはならなくなってしまいます。
ヒューマニズムの矛盾が示されるのです。
なんだかシニカルでとても不思議な戯曲です。

翻訳者は、ぼくの5年ほど先輩の医師、栗栖茜さん。
海山社を作り、自分で翻訳した本を出版しています。

「ロボット」という言葉を作ったというチャペック。
チャペックの作品で「サンショウウオ戦争」、これはなかなかの傑作です。

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