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2008年5月26日 (月)

イラクの病気の子ども達2

今日は東京プリンスホテルで、全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会の主催の講演を行った。講演時間はたった30分ほどであったが、皆、涙を流して聞いてくれた。

夜遅く、約1週間ぶりに茅野の自宅、岩次郎小屋へ帰ってきた。山積みの原稿や書類がぼくを待っていた。

イラクの病気の子どもたち(2)

080526_3  治療は順調である。アハマド・サラームの中を流れている血液の中から、白血病細胞が消えた。完治がいよいよ近づいてきている。お父さんが言う、やっと希望が見えてきた。この子にすべてをかけた。この子は今、再び元気な命をもらうことができつつある。うれしい。

 イラクの病院をどう思うかと聞いた。
「すぐれた技術をかつては持っていたが、今はおくれてしまっている。とても自分の大切な子供を安心して任せられない。少し難しい病気のときは、結局、国外に脱出するしかないように思う。早く平和が来てほしい」

 平和は来るでしょうか」と聞くと、
「必ず来る、アメリカ軍がいなくなれば」とにこっと笑った。

 アメリカ軍がいなくなっても宗教の対立があるのではないかと僕が聞く。
「大丈夫、心配するな。私と妻はシーア派とスンニ派。こんな夫婦はたくさんいる。今のように戦争状態が続いているときでも、スンニ派とシーア派の若者が結婚をしている。すぐ仲よくなる、大丈夫だ」

 通訳をしてくれているアブ・アハマッドさんが、自分の意見を急に差し込んできた。私はクルド系イラク人だ。イラクから脱出してきた。クルドも、スンニ派も、シーア派も、いつでも仲よくなれる。私たちは一緒に助け合って、こうやって今だって生きている。大丈夫、アメリカ軍だけでなく、アルカイダを追い出すことが大事。

 アハマド・サラーム君のお父さんの言葉は明快だった。そうだ、そうだ、と思った。そうか、シーア派とスンニ派が憎しみあっている今でも、結婚する若者たちがいるって、何か救いのような感じがした。

 宗教の対立を見ていると悲しくなる。仏教はいい。おだやかでいい。考え方の違う人の存在を認める宗教はいい。チベット仏教なんか、あれだけひどい弾圧を受けても、理性を失わないのはすごい。世界を平和にするためには、仏教の力が必要なのかもしれない。

 JIM-NETは、サラーム君のようにイラクから重い病気の治療にやって来るときのアパートの家賃の援助をしている。せっかく白血病の治療が軌道に乗っても、その後の経過観察をきちんとしないために、再発をし、亡くなっている子供たちが多い。お父さんは、ぼくらのNPOのおかげで助かっていると喜んでくれた。

 イラクの子どもたちを救いたいと思って、5つの小児病院に毎月400万円の薬を送っている。フセインの国に生まれたいと思って生まれてきた子どもは一人もいない。子どもに責任はないのだ。
 困難の仲にいるときに、自分の国の子どもを救ってくれた国は、いつまでも忘れないものだと思う。これが日本のセーフティネットになると信じて、医療支援をこれからもしてきたいと思っている。

 悲報が入った。
 アハマド・サラームのお父さんが死んだ。「うれしい」とぼくの手を握ってくれたのは、数週間前のことだ。その後バグダッドの自宅に帰って、爆撃にあったという。
 戦争は悲しい。
 お父さんに代わって、サラーム君をなんとかぼくらが支えていかなければいけないと思う。応援をお願いします。JIM-NET:TEL 0263-46-4218

※写真は、白血病の少年と子どものお父さん。お父さんは、この写真撮影のあと1ヵ月程して爆撃にあって亡くなった。

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