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2008年6月26日 (木)

私の人生を変えた本2

Img080626これからオランダへ飛び立つ。
オランダから船に乗り、フィンランド、アイスランド、グリーンランドを通り、北極へ。

おもしろい計画がめじろおしだ。
オランダとNYの美術館でフェルメールを絵を見る。
自分の目で確かめながら何かを語ってみたいと思っている。

オランダでは憲法9条世界会議の報告会があり、
ピースボートの船の甲板で憲法9条の勉強会が行われると突然オランダから連絡が入った。
何らかの発言を求められるという。

憲法9条についてぼくの気持ちを書いた「この国が好き」の話をしようと、心の準備をしている。

出発間際まで取材は続いた。
ジャズシンガー石野みゆきさんについてのインタビューを受けた。

インターネットがつながれば、旅先からブログを更新します。お楽しみに。

それでは、いってきます!

私の人生を変えた本(2)

人間のすごさとか、面白さとか、わけのわからなさとかを教えてくれたのは、やっぱりドストエフスキーだろうか。
「罪と罰」や「白痴」や「悪霊」も良いけれど、最高は「カラマーゾフの兄弟」。
なんだか嫌な人間ばかり出てくるのである。

俗物で好色漢の父フョードル。
無頼漢で遊び人の長男ドミートリイ。
知的で冷徹な次男のイワン。
その中に三男のアリョーシャがえらく善良で、ほっとしながら読んだ。

初めて読んだときはアリョーシャに救われたが、二回目に読んだときには、なんともアリョーシャの人の好さに面白みを感じなくなった。

「どんな人間の中にもけだものが潜んでいる」
なんていうドストエフスキーの言葉が出てきて、人間ってそんなものかと思いながら、どうしようもない父や長男や次男の姿の中に、これが人間なんだという一面の魅力を感じるようになっていった。最近になってまた読み返している。

「カラマーゾフの兄弟」は、ドストエフスキーの遺作で、未完の大作である。
第2部の校正を考えている途中に亡くなったと言われている。

立派過ぎる三男が修道院を出て、恋に傷つき、革命家に変身していく構想があったと聞いて、ドストエフスキー恐るべしと思った。
この構想を聞いて、三男のアリョーシャが再び好きになった。

結局人間はいろんな面があるのだ。
もしかするとドストエフスキーは、俗物で好色的な面、無頼な面、知的で冷徹な面、人の好い面、登場人物4人それぞれの性格を合わせたような複雑さが、一人の人間の中に存在するということを言いたかったのではないだろうか。

チェルノブイリ支援のきっかけになったのも、ドストエフスキーだった。なんだか不思議な巡り会わせだ。チェルノブイリへ第1回目の調査に入ったとき、初めて聞かされた言葉がドストエフスキーの言葉だった。

「チェルノブイリの子どもたちは、今泣いています。悲しいことに、ロシアの大人たちは子どもたちを助けてあげることができません。助けてください。ドストエフスキーがこんなことを言っています。『一人の子どもの涙は、世界のすべての人々の悲しみよりも重い』」

なんだかロシア人は上手いことを言うなと思っていたら、実は「カラマーゾフの兄弟」の中に、これに近い言葉が出てきていたのである。
それ以来ぼくは、チェルノブイリの支援にのめり込んでしまった。

ドストエフスキーを若い人たちにも読んでもらおうと思って、最近、深夜まで読み直している。
クローニン全集を探すのは、古本屋へ行かなければならないだろう。
何冊かは手に入れることができる。図書館へいけばきっと読めると思う。
「帽子屋の城」とか、「人生の途上にて」はお薦めである。

もっともっと本を読みたいのに、まだまだ時間に追われている。
地方の小さな町で、電車が来るのを待つ間、小さな喫茶店でコーヒーを飲みながら、一冊の本を開いているときの幸せ感は、何にも変えがたい。

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