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2008年7月 2日 (水)

北極点が海に沈む日

6/29夜ベルゲンを出港し、丸3日をかけ、船はアイスランドへ向かっている。
アイスランドの有名な作家であり、環境保護運動家、マグナソンさんと、環境の専門家、田中優と語り合いながら、航海は続いている。

0705_06sこのままでは、今年の夏には、北極の極点は海に沈むと予測されだしている。それくらい氷の解け方が激しくなってきている。南米、南極、北極、シベリア、世界各地で氷が溶けている。いよいよ尋常ではないことがおき始めているような気がしてならない。

2月スイスのサース・フェー氷河を見に行ったときにも感じた。広大な美しい氷河が少しずつ細く小さくなっている。
今年の夏、スイスのジュネーブに講演に呼ばれている。もし再び氷河を見られたら、さらに痩せているのが克明にわかるのではないかと思っている。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告によると、温暖化には疑う余地がないと決定的な表現をしている。

これを陰謀だという説もある。温暖化を唱えながら、原子力産業を世界中に広めようとしているのだという穿った見方をする人もいる。原子力発電をこれ以上増やす必要は全くありえない。別の問題である。

温暖化は太陽そのものの活動の周期によって温度が上がったり下がったりする大きな波によるもので、二酸化炭素の排出量とは関係ないという意見もある。
確かに太陽は、100億年の寿命のうち今46億年を生き、これまでにも大きな活動の波があったことは間違いない。100~200年単位の中で、地球全体が小さな気温低下を起こし、冷害や疫病を増やした時期がある。
大きな流れが太陽によって影響を受けていることは事実だが、それとはまた違う、速度の速い温暖化、つまり人為的な影響を受けている可能性が強い。
それが今ぼくが北極で見ようとしている現実と、スイスの氷河で見た現実にあるように思う。

ぼくはチェルノブイリの病気の子供たちを救うため、シベリアの空を飛ぶ。
春先のベラルーシ一体の湖沼化が見て取れる。

熱を反射して宇宙へ逃がす氷河が解け、氷が水に変わることによって、熱を吸収しやすい状況になる。
永久凍土が解け出して水になると、さらに太陽の熱を受けて、周りの森をなぎ倒していく。
その池や湖からメタンガスが湧き、二酸化炭素の20倍以上の地球温暖化を進めてしまう。
立ち枯れた木々は微生物に分解され、逆に二酸化炭素を出すことになる。二酸化炭素を吸収し、酸素を作り出してくれるはずの森が、逆に二酸化炭素を排出するようになっている。
温暖化の悪循環が起き出しているのだ。

おそらくこれから、ヒマラヤやヨーロッパに広がっている氷河が解け出すことによって、下の街に水の飢饉が起こり、何千万人の人たちが水不足に悩み始めるだろう。
温帯や亜熱帯の地域で砂漠化はさらに進み、農業や牧畜ができなくなるだろう。
ペルーではアンデス山脈の氷河が消え、1千万人が水不足に直面するだろう。
アジアやアマゾンの熱帯雨林では森林火災が起き、さらにCO2を排出し、温暖化の悪循環は広がっていくだろう。
モンスーン、台風、スーパーエルニーニョが発生し、世界的な気候の混乱が起こるだろう。

時間に追われているぼくが、なぜ時間をやりくりしてまで北極を目指したのか。
それがだんだん見えてきた。

いつか時間を作り出して「ドリームプラネット」という小説を書きたい。
46億年の地球の歴史の中で、38億年の生命の営みが土壇場に今ある。それを小説という形でうまく書けないだろうか・・・。

アイスランドのレイキャビークを目指す海の上で考えている。グリーンランドではイヌイットと会えそうだ。

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