福島県立大野病院でおきたこと
2004年に帝王切開手術を受けた女性が福島県立大野病院で亡くなった。
産婦人科医は業務上過失致死罪に問われていたが、今回、
「過失のない治療行為をしたが女性の死亡は避けられなかったもので、異常死とはいえない。無罪」
と判決が下された。遺族にとっては大変残念な結果だったろうと思う。
もともと警察が乗り込み、司法が介入すること自体問題だったのである。
射水市民病院で人口呼吸器がはずされた事件に関しても、ぼくは主治医の軽率な行為と思いつつも、警察が介入すべきではないと主張してきた。
第3者機関が判断し、医師に倫理的な判断の誤りがあったとすれば、医師免許の停止などではなく、3ヶ月間の倫理教育の徹底とか、あるいは1年間の過疎地での医療業務の命令など、もっと違う処罰を下していくべきだと思っている。
今回の無罪判決は、遺族にとってはつらいだろうが、当然だと思う。
同じように東京都内の大学病院で、癒着胎盤と診断された女性が、帝王切開後直ちに子宮摘出手術を行ったにも関わらず、大量出血のため亡くなっている。
今回胎盤を剥離したことによって大量出血がおきたため、子宮摘出をするべきだったという意見が反対論としてあることを承知しているが、子宮全摘を行っても危険なわけである。
これは医療事故ではない。しかし家族にとってみれば、元気だったお母さんが突然亡くなったのである。
第3機関できちんとした話し合いが行われ、精神的な賠償は行われるべきだと思う。
そうすることによって医療者側も精神的なダメージを受けなくてすむ。
福島県立大野病院の産科医が警察に逮捕されたことによって、産婦人科を希望する若手医師が減ったことは間違いない事実である。
同時に、出産を扱っていた産院が、出産を扱わない外来だけの婦人科クリニックに衣替えしてしまったというケースも少なくない。
医療者側の「これじゃやってられない」という思いと、
患者側の「これじゃやってられない」という思いの妥協点を見つけるためには、
警察ではなく、医療安全調査委員会のようなものを作ることが大事だと思う。
病院の中で起きたことに対して、できるだけ警察は介入を慎むべきだ。
早急に第3機関の創設を望む。
追記:
翌日、舛添厚生労働大臣は、医療安全調査会の設置を前向きに検討し、次の臨時国会に設置法案を提出する意向を明らかにした。とてもいいことである。
無過失保障制度が大事だと思う。医療者側にとっては犯罪ではない。そういう意味では無過失である。しかし、なんらかの方法でこの母親を助けれらかもしれなかった。遺族にとっては本当に残念な結果である。無過失ではあるが、遺族の精神的な苦痛に対して、なんらかの保障をする制度があっていい。
医療を供給する側も、医療を受ける側も、恨みあうのではなく、お互いが理解しあうということ。それを第3者委員会を通して現実のものにすることが大事なのだと思う。
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