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2008年10月

2008年10月31日 (金)

妊婦はなぜ断られたのか

大都会の東京で、36歳の妊婦が脳内出血を起こし、8つの病院に受け入れを断られ、出産後に脳内出血で亡くなった。
2年前、奈良県でも分娩中、意識不明になった妊婦が、19の病院に受け入れを拒否され、亡くなっている。

1031 8つの病院は、都立墨東病院や慶応義塾大学病院など、そうそうたる病院が名を連ねている。
都立墨東病院はとくに、総合周産期母子医療センターで、こうしたリスクの高い妊婦を受け入れるという前提で病院が成り立っているはずである。
なおかつ、東京ERの一つで、救急患者を受け入れるはずの病院なのである。
にもかかわらず、断らざるを得ない状況が生じている。

なぜなのだろうか。
この8つの病院が悪いのではない。10312
日本の政治が悪いのである。
厳しい医療費抑制政策は、1998年ごろからはじまった。
さらに小泉首相の時代になると、極端な医療費削減が断行された。
その結果が、この医療崩壊なのである。

受け入れを断った病院をバッシングするのでは、問題は解決しない。
二度とこうした問題が起きないために、構造的な問題としてとらえ、緊急に考える必要がある。

写真は、諏訪中央病院のハーブガーデンを彩るお化けかぼちゃのランタン。ボランティアがつくってくれたものだ。今宵、ハロウィンは、看護師のお子さんや、入院しているお子さんたちらが庭に集い、ボランティア手作りのかぼちゃスープを味わうなど、大賑わいだった。

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2008年10月30日 (木)

動かないことを選んだ植物

081028 38億年前に、地球上に生命が生まれた。
少しずつ変化をしながら、一つ細胞が複雑な生命になっていく。
その進化の道筋のあるところで、劇的に枝分かれが起こる。
一方は動物へ、もう一方は植物へと。

植物は、動くことができない生き物となった。
動けないのではなく、動かないことを選んだような気がする。
植物と動物のDNAは、7~8割が同じと聞いている。
植物には植物の敏感な選択があって、動かないことを通して、生き抜こうとする仕掛けが作られているのではないか。

パラドックス。
逆転の発想をしていくと、見落としていたものが見えてくることがある。

閉じこもっている子どもや、学校に行けない子どもは、閉じこもる力をもっていると考えるほうがいい。
なんだか、子どもの問題を解決してあげられるような気がする。
キレる大人や暴走老人、クレーマーだって、そうだ。
ちょっとうんざりではあるが、キレ続けることができる人、文句をいい続けることができる人は、脳の中にドーパミンがほとばしっていて、並外れた集中力をもっている人なのかもしれない。
ただ、ちょっと方向性が違うだけだ。
ボタンのかけ直しができれば、生き抜くために大切な力になる。
逆転の発想は、病気の治療にも、生き方の軌道修正にも役に立つと思う。

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2008年10月29日 (水)

鎌田實の一日一冊(4) 絵本という手法にこだわる

『緩急時在 編集局長のコラム』(加藤幹敏著、中日新聞社、1700円)に、Photo
僕の絵本『雪とパイナップル』が取り上げられている。

『雪とパイナップル』は、瀬戸内寂聴さんや柳田邦夫さんだけではなく、たいへん多くの人に取り上げられ、論評や書評をいただいている。
ありがたいことである。

実は、この内容をテレビ番組にしたいとの交渉があった。
アンドレイ少年のお母さんと電話で相談し、協力してくれるというところまで話は進んだ。
だが、しっくりこない。
Photo_2 テレビの手法ではないほうがいいのではないかと思った。
憎しみや恨みの連鎖ではなく、やさしさがやさしさを呼ぶあたたかな連鎖を訴えていくには、絵本のほうがいい。
絵本という手法にこだわって、今回は、テレビ化しないことに決めた。

ときどき本棚から取り出しては、絵と文を味わう。読み返すたびに確認し、発見する。
絵本は、そこがいいんだよね。

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2008年10月28日 (火)

がん拠点病院に緩和ケア部門を

がん拠点病院の緩和ケア部門は不十分である。
朝日新聞が、351のがん拠点病院に行ったアンケート調査で、そんなことがわかった。

まず、緩和ケアを専門とする医師や看護師が不足している。081021
ほとんどのところで、緩和ケア病棟さえない。
緩和ケアチームといっても名ばかりで、充実した臨床医がそろっているとは言いがたい。

これでは、がんの患者を支えることはできない。
日本のがん専門病院で、がん難民を排出しているようなものである。
僕らの病院にやってくるがん難民の悲しみや苦しみは、多くはがん拠点病院でつくられてきている。

がん対策基本法ができても、まだまだ日本のがん医療は、クオリティーが高くならず、やさしくもなっていないような気がする。

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2008年10月27日 (月)

看護学生の一日研修

今年も、松本看護大学の学生たちが一日研修で、諏訪中央病院にやってきた。081027

一時間半たっぷり、レクチャーである。
できるだけ看護の大切さをわかってもらおうと思って、こっちも懸命だ。
いい感性とすぐれた技術をもち、患者さんのこころがわかる看護師になってもらいたい。
そんな、きっかけの時間になればいいなあ。

午後は予約外来。
56人の予約が入っていた。
「いいかげんがいい」なんて言いながら、ついついかげんを忘れてしまって、がんばってしまうのだ。

(写真は、レクチャーを終えて、看護学生たちと)

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鎌田劇場へようこそ!(4)オススメ映画3本

Hancock ウィル・スミス主演の『ハンコック』を観た。

『幸せのちから』という映画で、ホームレスから成功をつかんだ男を演じたウィル・スミス。
いちばん大切なのは、私が成功したことではなく、いちばんつらいときに、自分の子どもを放り出さなかったこと――。
そうんなふうに、かっこよく語る彼を観て以来、ウィル・スミスのファンになってしまった。
『ハンコック』では、大笑いのヒーローを演じている。
ドジばっかりしているところが、何となくいい。

Hana もう一本、オススメしたいのはドキュメンタリー映画の『花はどこへいった』。

ベトナム戦争で枯葉剤をまいた米軍兵士が、肝臓がんで亡くなる。
その日本人の妻が、監督した作品だ。
枯葉剤の恐ろしさがよくわかる。
アメリカにどんなにひどいことをされても、アメリカをうらむだけでなく、すべてを受け入れるように生きる。
障害に負けていない人間の生き方のすごさが映し出されている。
ぜひ、観てほしい。
僕は岩波ホールで観たが、長野市の千石劇場でも上映されている。
京都や札幌などでも上映予定。

Kara_2 『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』もオススメしたい。

天才劇作家で演出家・唐十郎が、劇団員たちとすさまじい情熱をぶつけながら、一つの芝居をつくりあげていく過程を描いている。
ドキュメンタリーのような、芝居のような不思議な映画で、映画好きにも、芝居好きにもたまらない。

監督は、大島新。ちなみに大島渚の息子である。
どうぞ、DVDでご覧ください。

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2008年10月25日 (土)

10/29 ラジオ出演

文化放送ゴールデンラジオに出演します。1029
僕の新刊本『いいかげんがいい』を通し、ほどほどに生きる大切さを、大竹まことさんと語り合います。
出演は、29日14時25分ぐらいから約30分の予定です。

ぜひ、お聞きください!

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2008年10月24日 (金)

新刊『いいかげんがいい』 本日発売!

海上自衛隊の特別警備隊で、25歳の自衛隊員が15対1という非常識な格闘訓練で亡くなった。Photo
自由のないところには、必ず暴力が生まれる。

このところ、ウンコと平和についてしみじみと考えている。
平和がなければ、安心してウンコも出せない。

ウンコが沈むときには、繊維が少ない。
おいしいものを食べ過ぎている。もっと繊維をとる必要がある。
繊維をたくさんとっていると、ウンコは浮いてくれる。
ウンコは健康と切っても切れない。

旧日本軍の初年兵たちは、トイレでよく泣いたと書かれている。
泣くだけでなく、トイレで自殺する初年兵たちも多かったという。
屋根裏部屋に隠れたアンネ・フランクは、昼間、人に悟られないようにするため、安心してウンコができなかった。

アメリカ軍の、イラクやアフガニスタンの危険な戦線を守っている兵士は、ワーキングプアの若者たちだという。
日本でも若者たちが、いい就職口を見つけられない。
その若者たちが生きるために、自衛隊に入る。
アメリカの若者がイラク戦線に行くことや、日本の若者が自衛隊に入ることは、自分の意思で選んでいるように見えながら、
根っこのところに、格差が隠れているような気がしてならない。

いま、日本は安心してウンコができる国だろうか?

本日発売の新刊本『いいかげんがいい』(集英社、1000円)http://gakugei.shueisha.co.jp/iikagen/index.htmlのなかでも、ウンコと平和、ウンコと健康、ウンコと幸せなどという、わけのわからないウンコ理論を展開しています。
ぜひ、お読みください。

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2008年10月23日 (木)

尾道を訪ねて

講演で、坂の町・尾道を訪ねた。 5

名刹、千光寺あたりを散策すると、山間から瀬戸内海が顔をのぞかせる。

Photo_4懐かしい町並みもけっこう残っている。
店屋の看板からは、かつて銭湯だったことがしのばれる。
ちゃんと、町の年輪が残っている。

狭い路地、徒歩のスピードは、人との距離も近くさせる。 Photo_5
「カマタ先生ですか?」と、不意に声をかけられた。
僕の本を読者だという。
おいしい尾道ラーメンを食べたいと言ったら、お店まで案内してくれた。
出会いに感謝!

Photo_6

丘の上にある、ベラビスタ境ガ浜に宿泊した。
夜遅く着いたにもかかPhoto_8わらず、生ハムやパスタなど、おいしい料理を用意してくれた。
あたたかいホスピタリティーに感謝!

一夜明け1_2、ホテルからの眺望に息をのむ。
山に抱かれる瀬戸内の海が美しい!
温泉も、体を癒してくれる。
いい景色といい温泉に、さらに感謝!!

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2008年10月22日 (水)

鎌田實の一日一冊(3) 名コラムニストの新刊

『日本人の忘れもの』(石井英夫著、産経新聞社、1680円)を読んだ。Sankeiishii20080902s
著者は、産経新聞のコラム産経抄を、昭和44年から平成16年まで書き続けた右側の論客である。

いつも僕の本が出ると、取り上げてくれた。
右と左、水と油のはずなのに、なんだか不思議。
育ての父から教え込まれた「義理と人情」が、右の人の琴線に触れるのかもしれない。

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2008年10月21日 (火)

小さな秋の一日

訪問看護の実習で、看護学生をつれ、97歳のおじいちゃんの家を訪問した。
僕とおじいちゃんは、27年来の付き合いである。
ご家族も、27年間、おじいちゃんを看てきた。
いま介護度5、完全に寝たきりであるが、おじいちゃんは明るい。

八ケ081021岳の山々は、紅葉で色づきはじめている。
いい空気を吸い、いい景色を見て、原村の往診を終えた。

病院に戻り、ホスピス病棟を回診すると、病室ででれっと寝ているヤツがいた。
患者さんのおうちから、ヒメという犬がやってきていたのだ。
ヒメは、ほかの患者さんをびっくりさせたりしない。Photo_2
頭のいい犬である。
いつも静かにしていてくれる。
ヒメのおかげで、空気がなごむ。
ファンも多い。

秋の収081021_2穫祭のこの日のメニューは、豚汁に栗ご飯、それに舞茸の天ぷら。
季節の恵みは、体にもこころにも栄養たっぷり。
栄養士と調理師が地下の厨房から上がってきて、ホスピス病棟でいろいろな料理を作ってくれる。
さつま芋がふける、甘いにおいが漂っている。

幸せな、秋の日の病棟である。

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ポール・ニューマンを偲ぶ

ポール・ニューマンが先月、83歳で亡くなった。

「私はじつに普通の男です」
これが、彼の口癖だったらしい。
だが、なかなかどうして。
銀幕のスターであっただけでなく、人間としてもかっこよかった。

4年前からイラクの子どもたちを支援するようになって、ポール・ニューマンの名をよく聞いてきた。
彼は、ポール・ニューマン財団を創り、イラクの白血病の子どもたちをずいぶん助けていたのだ。
僕たちが手を出せないような高額の治療を必要とする子どもたちも、ポール・ニューマンのおかげで、治療を受けることができた。
その子どもたちの治療が軌道に乗ったあと、後半の支援を僕たちが引き継いだこともあった。

ベトナム戦争のときにも、リベラルな立場を貫き、反戦や反核を唱えた。2
こういう人がたくさんいることが大事なんだろうなと思う。

ご冥福を祈りたい。

『明日に向かって撃て!』での、ロバート・レッドフォードとの共演はとにかく感動した→

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2008年10月20日 (月)

原発の嵐が吹きはじめた

現在、原子力発電は30カ国で439基が動いている。
一番多いのはアメリカで104基。二番目がフランスの58基。日本は55基で、世界の三番目になる。
現在建設中、あるいは具体的な計画ができているのが130基。そして将来構想として、新規導入を考えているのが220基。Photo
原発ラッシュなのである。

地球温暖化の危機感のなかで、低炭素社会をつくるには原発がいちばん、というストーリーが描かれている。

原発メジャーを中心に、莫大なお金が動く。
市町村や、口利きをする地元の政治家、顔役、国会を牛耳る大物の政治家、官僚・・・・。
原発に群がる利権に吸い寄せられるように、たくさんのお金の亡者が集まる。

穏やかに、丁寧に、本当に原発がどのくらい必要なのか、考えないといけない。
膨大なお金に群がるハイエナのような人たちの、ちょうちん持ちの意見はいらない。
きちんとした議論をして、原発の是非を問わなければいけないと思った。

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2008年10月19日 (日)

地域医療、そして安楽園

全国国保地域医療学会が17、18日、横浜で開かれた。081017_3
過疎の地域にある小さな病院や診療所の医療従事者、約1500人が参加した。

この学会の市民公開講座の座長をつとめさせていただいた。
発言者の一人、ドクター瀬戸上(=写真、右)は、鹿児島県の下甑島で、離島医療を30年展開。
漫画でベストセラーになり、テレビでは吉岡くんの好演で人気を博したドクターコトーのモデルとなった人物である。
優秀な外科医が離島にわたり、急に具合が悪くなった島民や旅行者たちを救う物語は、若い医学生たちにも人気がある。
夏休みなどには、地域医療の研修をしたいという情熱的な若者たちが、この離島にわたっていくという。

081017_4 市民公開講座の別枠では、大島渚監督の奥様で女優の、小山明子さんも講演した。
僕は映画好きだったので、とくに大島監督の映画はほとんどすべて観てきた。
女優小山明子もずっとウォッチングしてきた。
その大島監督が倒れて以来、一時はうつに陥りながら、介護を続けてきた。
これまで何度か、介護の話をお聞きする機会があったが、2人の間には映画とはまた別の、愛のドラマがある。

小山さんには、お会いするたびに、おいしいものをごちそうになっている。
今回も「一緒にお食事を」と誘われたが、小学校の同窓会があり、残念ながら今回は遠慮させていただいた。

081017_5学会の合間を縫って、横浜中華街の真ん中にあるレストランに行った。
「安楽園」という。
いつも気になっていた。お客を入れような雰囲気が漂っていた。
ほかのレストランが呼び込みをして必死に客を入れようとしているのに、この店の前は静かだ。
安さをアピールする値段表も、出していない。
 
081017_6「安楽園」という、名前もおかしい。
どこかの老人施設の名前ようだ。
30年くらい前の銭湯のような感じもする。
若い人は知らないだろうけど、連れ込み旅館があるような裏路地の、あの時代の空気も感じる。
この、とても入りにくい空気が、天邪鬼な僕は気に入っている。

↑「安楽園」の門構え。ここの麻婆豆腐が好き。

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2008年10月18日 (土)

大村崑さん 「笑いの処方箋」

10月13日、大村崑さんと「いのちの対話」を行った。
笑いの処方箋について、約3時間語り合った。
前日、羽田で落ち合い、二日間ご一緒した。楽しい人である。笑わせられ続けた。

子どものころにお父さんが腸チフスで亡くなり、親戚の家に養子に出された。
育ての母親から、ものさしで何度も何度も殴られた。
家を脱出し、産みのお母さんのところに戻ったが、すでに再婚していた。
新しい家庭には、父親の違う子どもがいて、自分はそこに住めないことがわかった。
再び、養父母の元へ戻った。

本名は、岡村睦治。ムツハルといったらしい。Photo_3
自分の名前をいうと、同級生は馬鹿にして、ほっぺたを6つ叩いた。
子どものころから、いじめられ役だったようだ。
継母が学校に乗り込み、この子どもたちや先生に怒鳴った。
「ムツハルではなく、ムツジと読みます!」
お母さんの怖さに、恐れをなした子どもたちは、ほっぺたを6つ叩くことはしなくなった。
かわりに今度は、睦治の上の音をとって、オムツ、オムツとあだ名をかえ、替え歌をつくり、校門の前ではやし立て続けた。

しかし、大村崑少年は、負けなかった。
いくつもつくられたオムツの替え歌を、自分で歌って登校するようになった。
みんなはあきれて、それからいじめはなくなった。

「シモネタや意味のない軽いギャグが横行する今のようなお笑いは、ちょっとさびしい」と、崑ちゃんは言った。

弱い者をいじめて笑いをとるのは、むなしい。
あふれるような笑いの奥底に、じわっとあたたかいものがある。
そんな笑いは、心を豊かにする。
『頓馬天狗』も見た。
『番頭はんと丁稚どん』も見た。
ミゼットの宣伝もおもしろかった。
どれもこれも、ペーソスのある笑いが基本になっているように思った。

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2008年10月17日 (金)

発見!特Bグルメ(12) 安くてうまい! 上条食堂

Photo 久しぶりに上条食堂に行った。
上条食堂は、僕の本にたびたび登場する、汚いことで有名な食堂であるが、とにかく安くてうまい馬肉料理のお店である。
JR茅野駅から歩いて2分。ネオンもなく、外から見ると食堂とはとても思えない。
中に入っても、つぶれかかったようなお店だが、年季の入ったおじいちゃんとおばあちゃんが全力投球でつくってくれる料理は、じつにうまいのだ!

この日は、馬刺しと、馬のステーキ、馬のすき焼きの馬づくし。
それにオヤジさんが釣った川魚と、やはりオヤジさんがとったキノコ、インゲンのしょうが焼き。
どれも最高にうまい!
一人当たり3500円で、おなかがはちきれそうになるほど食べられる。
最近は、東京や関西からもお客さんが来るようになった。Photo_2

それにしても、いい料理があると話が弾む。
この日、ご一緒したのは、医療経済学者である慶応大学教授、権丈善一先生と、京都の音羽病院の松村理司院長。
諏訪中央病院も、長野県でもっともレジデントの人気の高い病院であるが、音羽病院は、医師の研修病院として、日本全国でトップクラスの人気を誇っている。
「医療崩壊のなかの医療再生」というテーマで講演をいただいた後、上条食堂に場を移して、日本の医療はどうあるべきか、ひと晩語り明かした。
この内容は、おいおいこのブログで展開をしていこうと思っている。
ご期待ください。

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2008年10月16日 (木)

平成の米百俵

081020 諏訪中央病院に、新潟のコシヒカリが大量に届いた。
昨年7月16日、再び新潟は震災に遭った。
そのとき、たくさんの支援で、毎日おにぎりが届けられたという。

「未来予想図プロジェクト」が地域で立ち上がった。
子どもたちに未来の絵を描いてもらい、展示会をしてお金を稼いだり、
子どもたちと一緒に、有機農法で無農薬の米を育て、はざかけまいを作った。
たくさんの支援をもらった恩返しに、今度は途上国に支援をしたという。

震災時、諏訪中央病院からは、車いっぱい点滴や薬をつめ、医師や看護師を派遣した。
鎌田も新潟日報の依頼を受け、毎月1回1年間、一面を使ってメッセージを贈った。
鎌田實の筆文字とともにエッセイを描き、企業の協力を仰いで広告とし、震災に遭った子どもたちへのサポートにあてた。
「がんばらなくていいけど、あきらめない」というメッセージが、うれしかったという。
そのときの僕の筆文字は、今年のカレンダーになった。大変好評だった。

新潟の子どもたちからもらったお米は、諏訪中央病院の病気と闘う患者さんたちに食べてもらうことになった。
おいしい新米とともに、そのいわれを、鎌田が筆文字で書き添えた。

081020_2 「たくさんの人の支援と手で生まれた、あたたかいお米をいただいております。震災からの心の復興を目指していることが、ひしひしと伝わります」

かつて、長岡藩は戊辰戦争に破れ、7万4000石から2万4000石に減り、藩士の生活は貧窮を極めた。
そのとき、ほかの藩からお見舞いとして、米百俵が贈られた。
だが、藩士に分配はせず、そのお米を資金に換えて学校を設立し、人材の育成を図った。
藩士の子弟のみならず、町民や農民の子どもも、入学させたという。
何かを我慢して、子どもたちを大切にする。
志が高い。

困難にぶつかったときは、とにかく気持ちよく助けてもらう。
そして、少し元気になったら、今度は、より困難な人たちを助ける。
そんな世界ができたらいいなあ。
新潟の新米コシヒカリを味わいながら、そう思った。

(写真は、少し色づきはじめた諏訪中央病院の庭)

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2008年10月15日 (水)

貧困

ワーキングプアの人が、日本だけで1700万人いるという。
豊かな国になったはずなのに、豊かさを実感できない国らしい。
不登校の子どもが12万人、引きこもりは100万人いるらしい。

日本はこの10年、規制緩和をおしすすめながら、一部の人間にとってお金をもうけやすい国をつくってきた。
そのため、日本が自慢にしてきた、分厚い中流層が壊れはじめてしまった。
20年ほど前、多くの人が「自分は中流だ」と思っていた。
かなり厳しい生活をしている人たちも、自分は「中流の下」と考え、自己評価していた時代があった。
それは、当時のいろいろなアンケート調査に明らかだ。
実はこれがとても大事な、大事なことなのである。
年金制度や医療制度などの社会保障が、制度として十分に守られていくのも、分厚い中流層があるためだ。
地域で生きていくうえでのルールなども、中流意識が支えている可能性が高い。
しかし、僕たちのこの国のリーダーたちは、アメリカにそそのかされ、途方もないお金がもうけられるようなシステムに変えてきた。
いい加減を、見失ってしまったのである。

加減がいいことは大事なはずなのに、日本はいい加減を通り越して、もっといい生活をしたい、もっともうけたい、そう思いながら、一握りの大金持ちをつくったものの、社会を支える中流層を崩壊させてしまった。
格差社会である。
いや、格差社会よりも、さらに一歩悪い方向へと歩み出してしまい、「貧困大国ニッポン」になりPhotoはじめているような気がする。

一人ひとりの人生のあり方も、いい加減が大事である。経済も、いい加減が大事なのである。
途方もない経済成長の持続を望んでも、地球が悲鳴をあげている。
どこかの国が豊かに生活しようとすれば、その反対側に、貧困にあえぐ国をつくらざるを得ないのである。
同じ国のなかにも、豊かな人ができれば、貧しい人ができてしまう。

僕は子ども時代、貧しい生活をしていたので、貧困のつらさはよくわかる。
母は心臓病で入院し、父はタクシーの運転手をしながら、僕の面倒をみてくれた。
貧しかったために、母を病院にもつれていくこともできなかったこともあった。

貧困をゼロにすることはできないにしても、できるだけ貧困にあえぐ人々を生まない社会的なシステムが必要だと思う。
そういう国づくりを、日本のリーダーはしないといけない。
いい加減を、大切にしていきたいと思う。

(写真は、イラクの難民キャンプで、貧困に耐える子どもたち)

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2008年10月14日 (火)

発見!特Bグルメ(11) レストランピーター

今日は岩次郎さんの命日だった。
孫がやってきて、仏壇にお線香をあげてくれた。

夜は家族でレストランピーターへ行った。
おととい娘夫婦と一緒に来て、今日また来てしまった。

1014スープ3種、シーフードサラダ、
作りたてのベーコンなどが載ったソーセージの盛り合わせ、
どっちの料理ショーに登場したカレーピラフ、
カルボナーラ、オムライスなどなど・・・・を皆でおなかいっぱい堪能した。
何を食べても、とにかくうまい。

新しく離乳食メニューも作られていた。
小さいお子さんのいるご家族にもオススメのお店である。

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発見!特Bグルメ(10)蓼科で、イングリッシュガーデンとインド料理

10104ブログを始めて数ヶ月、訪問者が7万人を突破した。
ある出版社から、このブログを本にしたいというオファーがあった。
大変好評のようで、うれしい限りです。今後もご支援をお願いします。

10103特にB級グルメが楽しいとの声をよく聞く。

先週末、外来を終えて夕方、蓼科のイングリッシュガーデンに秋のイベントを見に行ってきた。

今年の春は、オランダから届いたたくさんのチューリップの球根を頂き、
諏訪中央病院の庭にもすばらしい花が咲き誇った。
イングリッシュガーデンのケイ山田さんのお陰である。

その後、蓼科東急にあるナマステというインド料理屋さんに行った。

10102_210101_2タンドリーチキンが大変おいしいと評判のお店。
もちろんカレーもおいしい。
ぼくは、ほうれんそうのカレーが好き。
チャイも手が込んでいて実においしい。

ここの親父さんは、インドでも有名な料理人らしい。
今月もインドの首相が来日すると、首相の料理を作るために東京へ呼ばれるという。

蓼科に来てわざわざカレーを食うこともないだろうとお思いでしょうが、
とにかくうまいのである。
ぜひどうぞ。

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2008年10月13日 (月)

幸せな介護

今日は往診日。八ヶ岳の裾野までやってきた。
紅葉が始まっている。八ヶ岳が秋の太陽の中で、まぶしいほど美しい。

娘さんご夫婦がパセリを摘んで、出荷の準備をしていた。
最後のとうもろこしだといって、職員とともに何本か頂いた。

10108s_3 おばあちゃんは、脳卒中があり、頚部骨折があり、認知症があるが、家族にとてもよく看てもらっている。
幸せな介護が行われている家だ。

今日は、車椅子に座って縁側で日向ぼっこ。
ぼくが庭からおばあちゃんのところへ行って手を振ると、おばあちゃんの反応がいつもよりいい。

「こんにちは」と声をかけると、最近はほとんど喋れなくなっていたのに、「先生」と久しぶりに声が出た。耳元で大きな声で喋っていくと、「うれしい」と単語が出る。半年ぶりくらいである。

ぼくも、訪問看護師も、看護学生も、なんとなく嬉しくなり、娘さんも嬉しくなり、みんなが嬉しくなった。介護をしているつらさをちょっと忘れ、介護していることの嬉しさがこみ上げてくる。介護にはときどきこういうとってもいい時間が訪れるときがある。

診察をし、血圧を測り、脈拍を診て、体温を測り、すべてがとってもよかった。
便通のコントロールが難しかった時期もあるが、なんとなく今は快適に過ごしている。

この家はいつでも前向きである。理学療法士の派遣も受け入れてくれている。
理学療法士の先生も前向きにやっているため、かなり重い寝たきり老人のはずが、寝たきりにならず、こうして車椅子で過ごすことができる。

訪問看護と、理学療法士の指導と、週2回のデイケア、これがおばあちゃんと、おばあちゃんを介護している娘さんを支えている。
そして、娘さんが疲れないように、ときどき病院の療養型病棟でおばあちゃんを預かる。
娘さんはリフレッシュして、また少し元気になって、おばあちゃんを迎え入れる。

良いリズムができている。
社会的な介護を上手に利用しながら、このうちはとても温かい。

11月11日は「介護の日」。
東京のシダックスホールで「介護の日」イベントが行われる。

失禁の勉強会やオムツの勉強会などセミナーが開かれ、ぼくも夕方から記念講演をする。厚生労働大臣に対談を申し入れているが、国会運営に隙間ができれば来てもらえる可能性もある。いずれにしろどなたか厚生労働省の方と、介護の日について、温かな対談をしたいと思っている。

ぜひシダックスホールに来て、「介護」を前向きに考えてみませんか。

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2008年10月12日 (日)

宮永匡和「ポーランドの風」

101210122 新宿の京王デパートで、宮永匡和(みやなが まさかず)画伯の展覧会「ポーランドの風」に行ってきた。

ぼくの家で一番お気に入りの場所のサンルームに、画伯のすばらしいテンペラが飾ってある。
ポーランドのワルシャワ、クラコフ、アウシュビッツを彼に案内してもらったのは8年前。
ポーランドでは彼のファンが多くいて、日本でも増えてきている。

ぜひ御覧下さい。

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おすしの日

老人保健施設のお年寄りたちが楽しみにしていた「おすしの日」がやってきた。

小学校の同級生の宿谷賢一君が事業に成功した。

それまで彼は、いくつも会社を作っては失敗をした。
野菜を料理しやすいようにカットしてパックに詰めて売ったり、今だったら大ヒット前間違いなしのものを、20年以上前から新しい発想で行って、波乱万丈の生活をしてきた。
魚を取り扱う会社を作り、大成功した。
今では食品一般なんでも扱う会社として成長を続けている。

10年ほど前から、毎年1回、老人保健施設のお年寄りに魚が送られてくる。
「お寿司でも食べさせてあげてよ」という軽い気持ちだった。
ホタテにマグロにイカ、アジ、イクラなど、大量に送ってきてくれる。

10107s老人保健施設にカウンターを作り、今回は、病院のすぐ上にある玉川寿司の親父さんが、ボランティアで朝からお寿司を握ってくれた。
お年寄りたちは「イカ」とか「マグロ」とか勝手なことを言いながら、嬉しそうにお寿司を満喫した。親父さんは1,000個以上のお寿司を握ったと思う。

35人程のデイケアのお年寄り、50人程のやすらぎの丘の入所者、そして職員とが、幸せな時間を過ごすことができた。お酒の好きな人たちには、ビールが振る舞われた。
みんな「幸せ、幸せ」と大はしゃぎである。

日本人は本当にお寿司が好きだ。

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2008年10月11日 (土)

10/15 グリーンボランティアのバザー

10106_2諏訪中央病院の庭にも秋がやってきた。
咲き誇っていたコスモスが少し勢いを失い始め、
その代わり、小さな森の木々が紅葉を始めた。

グリーンボランティアのちょっとした心遣いで、
森の中のテーブルに花が活けてある。
その花がなんとも美しい。
(左の写真)

10105右の写真は、ボランティアが作った「ひなたぼっこ」というサンルームの中で気持ちよさそうにしているぼく。

10月15日午前、グリーンボランティアの大バザーが行われる。
毎年20万近い売り上げがある。

ハーブの花束や、ハーブティー、ジャムなどが、お値打ち価格で売りだされます。ぜひご来場ください。

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2008年10月10日 (金)

鎌田實の一日一冊(2) 自殺で家族を亡くして

1011 「自殺で家族を亡くして―私たち遺族の物語」
(三省堂、全国自死遺族総合支援センター 編纂)という本を読んだ。
書評を書くつもりでいる。

今週は読書週間。家にいる時も、講演先に向かう電車の中でも、ずっと本を放さない。読み続けている。

今、3万3千人の人が毎年自殺をしている。もう3万人を10年間連続して越した。
3万人の人が自殺をしているということは、おそらくこの10倍は自殺未遂の人がいるだろうと言われている。膨大な数の人がいるはずだ。
そして4割の遺族が中傷を受けたり、誹謗をされたり、言葉の暴力を受けているということもよくわかった。

さらに自分を責めている。
あの時メールに返事を書いていたなら、あの時携帯に出ていたなら、あの時優しことばを言ってあげていたら、彼は自殺をしなかったかもしれないと、自責の年を持っている人達がいるのである。

18人の自殺をした遺族が手記を書いている。多くの方は実名で自分の辛い気持を書いた。妻を亡くした夫、親を亡くした子供、子供を失った親。安心して悩む事の社会が欲しいと、多くの人達が言っている。

自殺は語ることのできない死、とよく言われる。誰にも語れずに、時には表面上は違う病名が付けられ嘘で固められ、葬儀が出されることもある。遺族がその悲しみの罠から抜け出し、自らの言葉で語ったすごい本である。

ぜひ一度ご一読を。

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2008年10月 9日 (木)

鎌田實の一日一冊(1) 命がけの読書週間

水谷修さんとの共著の本が発売される予定だ。
今週、八王子で対談・打ち合わせを行う。今、頭の中をウォーミングアップしている。

そして今週は、命がけの読書週間である。

1010310102 「ひきこもりはなぜ『治る』のか?―精神分析的アプローチ」
(中央法規出版、斎藤 環 著)

「家族パラドクス―アディクション・家族問題・症状に隠された真実」
(中央法規出版、斎藤 学 著)

10104 「社会起業家に学べ! (アスキー新書 69)」
(今 一生 著)

社会起業家という言葉をご存じだろうか。環境問題や地域開発をひとつのビジネスとして成功させる、新しいやりがいのある仕事の形態である。
金融資本主義のようなバーチャルの世界で途方もないお金を稼ぐのではなく、地道な方策で知恵と汗を流しながら、人と人がとつながりながら、そして地球を守りながら、地域に貢献していく新しいビジネスが、いくつも紹介されている。

吉田屋旅館はつぶれそうな旅館だった。それを大学生の女の子が引き取り、若女将になり再生させた。
金・土・日は旅館を開き、全国からお客様が集まる旅館にした。一方月~木曜は、地域でお年寄りを助けたり、農家を助けたりする。なんだか若面白い若者達がこの旅館に集まってくるのである。

なかなか面白い本である。目から鱗の本であった。

10105 「心の旅人たち」
(ポプラ社、ポール・マクダーモット 著、宇丹 貴代実 訳)

これはぜひお勧めである。
72歳の女性が多発性骨髄腫で亡くなっていく。1人の心理療養師が、ボランティアで1年半、この女性の命に伴奏する。人間はこうやって死んでいくのかということがよく見えてくる、素敵な本である。

美しい言葉が繰り広げられていく。亡くなっていく女性が、「ありがとうたぶん…ここからは…一人で行けると思う…」と言って本当に一人で死んで行く。このおばあちゃんが初めから立派だったわけではなくて、ちょっと迷惑気味の困ったおばあちゃんが、実は淡々と自分を見つめ、最後はきちんと自分の人生をくくることができた。
なかなか素敵な本であった。

10106 「暴走する資本主義」
(ロバート ライシュ 著、雨宮 寛 訳、今井 章子 訳)

今日現在の金融資本主義が壊れていきかかっている姿を暗示するような本である。
本来どんな形の資本主義が良いのか、ライシュはこの本の中で明確に語っている。
これもお勧めの本である。

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2008年10月 8日 (水)

免疫力をあげる旅

1010 「サライ増刊 旅サライ」(小学館)に、「免疫力をあげる旅」というエッセイを書いた。

旅をすると、副交感神経が緊張し、血管が拡張し、循環が良くなってリンパ球が増え、免疫力が上がる。具体的な旅の効能を書いた。

ちょっと洒落た雑誌です。ぜひお読みください。

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2008年10月 7日 (火)

10/13「いのちの対話」生放送

1008 「いのちの対話 大人と子どもの絆」という本が出版されました。

(岩波ブックレット№741/税込504円/2008年10月7日発売)
(水谷修・大平光代・新沢としひこ・村上信夫・鎌田實)

テーマは、大人も子供も一緒に幸せになろう。抱腹絶倒、めちゃくちゃ面白いです。

例えば大平光代さんからは、北新地のバーのナンバーワンだった頃の収入のこと、入墨はあるのか、どんな状況になっても人間に手遅れは無く立ち直れる、等の話が大笑いの中で語られます。
ぜひ読んでください。

いよいよ「特集 鎌田實・いのちの対話」(NHKラジオ第1)が間近です。
放送時間は10月13日(月・祝)午前9時5分~11時50分。
今回のテーマは「笑いの処方箋」。

大村崑さん(喜劇俳優)、中島英雄先生(中央群馬脳神経外科病院理事長・落語家 桂前治さん)をゲストに、命と笑いについて楽しい番組をお届けいたします。

生放送をお楽しみに。

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2008年10月 1日 (水)

ソーラーパネル付バッグ

0928ソーラーパネル付バッグを使っています。
カタログハウスで買いました。

ICレコーダーや携帯の充電は、このソーラーパネルで行っている。

これを持って歩いていると、人と会ったとき、環境の話からスムーズに話が進んでいく。
持っていると話題が広がるおもしろグッズである。

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