大村崑さん 「笑いの処方箋」
10月13日、大村崑さんと「いのちの対話」を行った。
笑いの処方箋について、約3時間語り合った。
前日、羽田で落ち合い、二日間ご一緒した。楽しい人である。笑わせられ続けた。
子どものころにお父さんが腸チフスで亡くなり、親戚の家に養子に出された。
育ての母親から、ものさしで何度も何度も殴られた。
家を脱出し、産みのお母さんのところに戻ったが、すでに再婚していた。
新しい家庭には、父親の違う子どもがいて、自分はそこに住めないことがわかった。
再び、養父母の元へ戻った。
本名は、岡村睦治。ムツハルといったらしい。
自分の名前をいうと、同級生は馬鹿にして、ほっぺたを6つ叩いた。
子どものころから、いじめられ役だったようだ。
継母が学校に乗り込み、この子どもたちや先生に怒鳴った。
「ムツハルではなく、ムツジと読みます!」
お母さんの怖さに、恐れをなした子どもたちは、ほっぺたを6つ叩くことはしなくなった。
かわりに今度は、睦治の上の音をとって、オムツ、オムツとあだ名をかえ、替え歌をつくり、校門の前ではやし立て続けた。
しかし、大村崑少年は、負けなかった。
いくつもつくられたオムツの替え歌を、自分で歌って登校するようになった。
みんなはあきれて、それからいじめはなくなった。
「シモネタや意味のない軽いギャグが横行する今のようなお笑いは、ちょっとさびしい」と、崑ちゃんは言った。
弱い者をいじめて笑いをとるのは、むなしい。
あふれるような笑いの奥底に、じわっとあたたかいものがある。
そんな笑いは、心を豊かにする。
『頓馬天狗』も見た。
『番頭はんと丁稚どん』も見た。
ミゼットの宣伝もおもしろかった。
どれもこれも、ペーソスのある笑いが基本になっているように思った。
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