鎌田先生、バンザイ!
「鎌田先生バンザイ」という寄稿が、地元の新聞に大きく取り上げられた。
「私はもう80歳近い。いつお迎えがきてもいいが、痛みのない日がほしい。先生、がんの痛みなどに使うという絆創膏のようなものを使って、一日だけらくな日を何とかつくってもらえないかえ」
7月のある診察日、私は諏訪中央病院名誉院長の鎌田先生に直訴した。
平成14年春、柿の木の丸太をかついだまま、自宅横の川に転落、第一腰椎の圧迫骨折を負って以来六年、脊椎狭窄症や腎臓病や大腸の病気、膀胱などの病気で次々に手術。
いつも土俵際で奇跡的に助かってきた。
しかし、脊椎狭窄症のために、足のしびれは最近いちだんと強くなり、痛みのない日はなかった。
腎機能も低下しており、脊椎の手術は危険すぎた。
武(たけ)さんの泣きそうな顔で、僕は何とかしてあげたいと思った。
緩和ケア病棟の平方先生の予約外来をとった。
緩和ケアの専門医である平方先生の治療は、功を奏した。
武さんに冗談が戻ってきた。
そして、自称エッセイストの武さんが久々に地元新聞に寄稿したのである。
大きな取り上げ方である。
武さんの言葉はいつも痛烈だ。
僕はツッコミ返す。
だが、武さんも負けてはいない。
「なんで先生、いつもふらふら遊んでいて、どこにいるかわからねえ。どこへいっちゃったかな? なんて思っていると、地球の裏側からコンニチハなんて声を出して、ほんとにしょうがねえもんだ」
僕は笑うしかなかった。
その通りなのだ。
僕は苦笑しながら言った。
「武さんは、言いたいことを言って、あくたれて、一杯飲んで元気でいるのがいい。地元新聞に投稿するくらいにね」
やっと、武さんの、武さんらしい寄稿ができた。
うれしい文で結ばれていた。
武さん曰く、
「もっとも信頼でき、大好きな鎌田先生、万感の感謝をこめて、鎌田實先生バンザイ」
こんな患者さんがいる。
だから、病院は辞めたけど、外来は止められない。
なんとも、うれし、はずかしである。
写真は、内科外来で、武さん夫婦と
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