鎌田實の一日一冊(12) SMAPは効かない
読売新聞の医療情報部長、田中秀一さんが、『がん治療の常識・非常識』(講談社ブルーバックス)という本を書いた。
彼は、若い記者だったころ、松本支局にいたため、古いつきあいである。
ぼくと彼は、「コレステロールは少し高くても配ない」という点で、同じ考えをもっていた。
コレステロールの正常値は220と、かつて日本動脈硬化学会などで決められていたが、240~260くらいが、むしろ長生きをしている、と2人とも論陣を張っていた。
彼は「医療ルネサンス」という読売新聞の医療連載の中心的な役割を担っていた。
この「医療ルネサンス」が4000回を超えたとき、彼から声をかけられ、「医療ルネサンス」のキャンペーンに協力したこともある。
テレビのコマーシャルに出たり、銀座の大きなビルの壁一面にぼくの顔が映し出されたり、電車の中吊り広告がすべてぼくの顔になったりした。
月刊誌「がんサポート」でも対談した。
「SMAPは効かない」
そのとき、彼から聞いた話である。
サメ軟骨、メシマゴブ、アガリクス、プロポリス。
がん患者に人気の4つの健康食品の頭文字をとって、SMAPというらしい。
ぼくは笑ってしまった。
田中さんに聞いた。
「スマップでも、効きませんか?」
田中さんは答えた。
「まったく効かないと断定はできませんが、少なくとも効くという裏づけはまったくありません」
がんになったからといって、へんな健康食品に走らないほうがいい。
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