鎌田實の一日一冊(17) キーワードはタオイズム
『がんばらなくてもいい 自由にのびのび生きるヒント』(本多信一著、こう書房)。
ぼくが9年前に書いた『がんばらない』(集英社)をもじったような本が出た。
タイトルだけではない。
ぼくの『がんばらない』『あきらめない』『それでもやっぱりがんばらない』などに似ているなと思うようなところが、随所に出てくる。
たとえば、「諦める」は「明らめる」だとか。
ずいぶんパクっているなと思いながら、読んでいくうちに気が付いた。
本多さんは、老子の思想から、がんばらなくてもいいという発想を生み出しているようである。
ぼくは、ぼく自身が悩んだり、いろいろな人とのかかわりのなかでたどり着いたものが、老子のタオイズムと共通するものだった。
大きな老子の道を、本多さんは意識のなかで説いているのに対して、
ぼくは、老子の道的なことを、無意識に説いてきたことになる。
本多さんは自分に向き合いながら、老子を学んだ。
鎌田は自分に向き合いながら、老子は学ばなかったが、老子的なものに近づいたということだろう。
信州のタオイスト、加島祥造さんと対談をしたとき、「鎌田さんの言っていることは、孔子の儒教ではなく、老子の道と同じだよ」と言われた。
キーワードは、タオイズム、無為。
本多さんの『がんばらなくてもいい』という本も、鎌田の『がんばらない』からはじまり『いいかげんがいい』までの本も、息苦しい今という時代を、やらわかに生き抜くヒントになるように思う。
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