鎌田實の一日一冊(15) あらためてグリム童話
高校の同級生、池田香代子さんから送っていただいた『完訳グリム童話集』(グリム兄弟著、池田香代子翻訳、講談社文芸文庫)を読んだ。
全3巻である。
なんとなく子どものころに読んだ話をもう一回、確認のために読んでいると、新しい発見がある。
「ヘンゼルとグレーテル」なんかは、ずいぶん自分の記憶と違っていた。
「赤ずきん」「ブレーメンの音楽隊」「親指小僧」「白雪姫」・・・となじみ深いものが多い。
おもしろいのは、「シンデレラ」という話が「灰まみれ」であったり、「眠り姫」は「いばら姫」であったり。
200年前にグリム兄弟が集めた昔話を、ぼくたち日本人はじつによく読んでいたんだなと思う。
メルヘンという形で、新しい時代のあり方が上手に語られている。
誠実に生きることとか、家庭の営みの大切さだとか、能力がなくても何かをもっていると幸せをつかめるとか、ナポレオンに支配されたドイツ語をつかう地域で、どんな昔話がつくられ大事に語り継がれてきたかがわかる。
第2巻の「いばらのなかのユダヤ人」などは、ヨーロッパの社会がユダヤ人に対してどんな視線を向けていたのかが見えてくる。
童話集に出てくるユダヤ人像は、ガザを攻撃し、たくさんのパレスチナの子どもたちを傷つけ殺していくユダヤ人たちの姿とダブってしまう。
いや、すべてのユダヤ人がこうではなかったはず。
20世紀、ナチスに痛めつけられたユダヤ人に、世界はシンパサイズした。
ユダヤ人はだから困ったものだと、後ろ指を指されずに生きていけるはずだし、生きていってほしいと思う。
ユダヤ人は、こういう民族だというレッテルをはがしてあげたい。
苦難のなかを生きてきたユダヤ人の歴史はよくわかる。
しかし、ガザでのようなことをしてはいけないのである。
ユダヤ人よ、目覚めてほしい。
グリムのメルヘンを読みながら、そう思った。
ぜひ、ご一読を。
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