鎌田實の一日一冊(16) 鷲田清一さんの哲学エッセイ
『死なないでいる理由』(鷲田清一著、角川文庫)のなかに、こんなことが書かれている。
「人が生まれるのも病むのも死ぬのもみな単体の身体に起こる出来事であるかのように考 えられ、またそのようなものとして処置されるが、本当は誕生も病も死もみな人の間で起こる出来事であるということ、これがいのちについて考える基本であると思う」
この本には、幸福論も語られている。
「幸福はひょっとすれぱおっぱいのようなものかもしれない。『帰っておいで』といっているのに帰れないところ。見えているのに、(あるいは見えるようになったから)、つかめないものなのだ。だから、もっともっと夢みなければならない。不幸がユーモアになるまで、幻想になるまで。幸福論は不幸の忘却であってはならないし、ありえもしない」
臨床哲学者、鷲田清一の文章は大好き。
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