病院集中化の穴
国はがん治療の拠点病院化をすすめ、救急医療の拠点化もすすめている。
中途半端な拠点化は、地域全体の医療を弱体化し、ほころびを生むことが多い。
やるなら徹底的にやらないとだめ。
兵庫県伊丹市で1月、交通事故で重症を負った69歳の男性が、14病院から受け入れを断られ、約3時間後に出血性ショックで死亡した。
救急車は5分後に、事故現場に到着したのに、である。
皮肉なことに、衝突したパイクに乗っていた29歳の男性は、目の焦点が合っておらず、緊急を要したため、「1人だけなら」と神戸の大学病院に受け入れられた。
69歳の男性は、事故直後、意識がはっきりしており、むしろ軽いと思われたために、14病院から受け入れを拒否され、出血性ショックで死亡した。
救急医療のたらいまわしは、35年前もじつに頻繁に、今以上に起きていた。
当時は、夜間や土日の救急医療を断る病院が多かった。
だが、20年ほど前から多くの病院が救急医療をきちんと受け入れるようになり、救急のたらいまわしは一時期減っていたはずである。
ここへきて、再びたらいまわしが増えだしたのは、病院の拠点化、集中化と関係があるとぼくは思っている。
拠点病院化をすすめると、拠点病院にならなかったところは自分たちの仕事ではないと思うようになってしまう。
もちろん、意識の問題だけではない。
医師はどうしても拠点病院に集中するため、今までどんな患者さんも受け入れようとしていた中小の病院が、医師不足に陥ってしまう。
中小の病院は、今まで最後の受け皿として役割を果たしてきた。
場合によっては、大学病院や専門病院ときちんとやりとりをしながら、自分たちでみれる病気と専門病院にまわす場合とをきちんとジャッジをしていた。
だが、病院の拠点化をすすめることで、弱体化していく。
その半面、拠点病院には患者が集中し、医療はパンクする。
手一杯になり、ちょっとした理由をみつけては患者を断るようになる。
これが、がんの拠点病院でがん難民を生んでいる。
がんの拠点病院は、がん対策基本法で緩和医療を充実させると法律で決められたにもかからず、再発したり進行したがんに関して、あいかわらず冷たい医療が行われている。
拠点病院化をはかるなら、国は、がんの患者さんの治癒率をあげ、助からない患者に対してはどれだけ大切にみているか、事実をきちんとフォローしていく必要があるのではないかと思う。
救急医療においても、患者を断ってはいけないはずのERで、患者の受け入れを拒否するというようなことがないよう、徹底していくしかない。
写真は、札幌で見た夜明け。日本の医療にも再びあたたかい日差しはさすのか。
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