安倍文殊院に行く
陰陽師、安倍清明のいた安倍文殊院を訪ねる途中、タクシーの運転手がこんなことを言った。
12年前、大腸がんの手術をして、4年前に腹腔内のリンパ腺に転移した。
再発したリンパ腺のがんは手術できなかったが、抗がん剤を使ってなんとか5分の1くらいまで小さくなった。
再発以来ずっと、大安寺というがん封じのお寺と、この安倍文殊院にお参りをしている。
いまも、元気にタクシーの運転手を続けられているのは、大安寺と安倍文殊院のおかげだと言っていた。
奈良は、「中央公論」3月号のがんの治癒力総合ランキングでは、各県のちょうど真ん中くらい。
長野県は1位だ。
埴岡というジャーナリストが奈良県のことを批判していた。
県のがん治療対策計画がつくられていない、どうしようもない県だという。
だが、ぼくはあまり計画なんか信じていない。
官僚がつくる計画でろくなものはない。
奈良県はけっこうよくやっている。
この埴岡さんがほめている島根県は、圧倒的に他県に比べてすばらしい対策を講じているはずなのに、がんの死亡率はけっしてよくないし、がんの治癒力もよくない。
対策のプログラムができていても、たいしたことはないのである。
しかも、がんの先端医療を担うがんセンターがあれば、がんの治癒率が高くなるというわけでもない。
もっと大切なのは、住民力だとか、病院と病院のネットワークである。
がんの拠点病院だけ整備すれば事足りるというのは誤解だと思う。
がんの治癒効果を上げるには、拠点病院だけではなく、2番目、3番目の病院の充実が大事なのである。
奈良県のがん封じのお寺が、がんの治癒力をあげるかどうかは別として、病院のセンター化や機能集中化というわかりやすく合理的なものではない、複雑な支え合いやネットワークが、いのちを支えているのかもしれない。
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