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2009年5月19日 (火)

鎌田實の日本経済への提言30

~~江戸から学ぶ~~

260余年、江戸は戦争をせず平和を守ってきた。
士農工商という身分制度がありながら、一番下の商人が江戸のいきいきと自由な空気をつくった。
1657年明暦の大火など何回か、大火があり、大きな地震もあった。
どうしようもない将軍がいて、むやみやたらに金を使い、江戸幕府は深刻な財政難にみまわれることが何度かあった。
これは現代、自民党政権が陥っているのとまったく同じである。

勘定奉行荻原重秀は、幕府が発行する小判の金の含有量を6割に減らして、元禄小判をつくった。
結果として、インフレーションになった。
小判を受け取る側は、今までより多くの小判を要求するようになり、つまり物価が上昇し、人々の生活が圧迫された。

これは、ぼくが日銀のナンバーツーと対談したときに、ナンバーツーが言ったことと似ている。
ぼくが救国国債を発行して、国民からの借金で、医療や福祉、教育、子育てなどにお金を使いウエットな資本主義を展開していくことで、経済危機を乗り越えられのではないかと提案したところが、
円の価値が下がり、インフレーションになってしまう、と言われた。
江戸幕府は、まさにこのインフレーションを起こしてしまったのである。

Photo 幕府は、同時に3回ほど倹約令をだしている。
江戸では、どうしようもない将軍が財政難を立て直すために倹約した。
現代では、どうしようもない首相が構造改革をせざるをえない状況に追い込まれている。
これは、ある程度わかるのであるが、倹約はどうも世の中を暗くしてしまう。
江戸時代では、いきいきとした町方の文化が低迷してしまった。

ほどほどの経済改革(倹約)をしながら、どうお金を回転するかが問われている。
1665年に元禄小判が発行され、インフレがおき、庶民は生きづらくなった。
そんな時代に1702年、赤穂浪士の事件が起きるのである。
おもしろくない世の中の空気のなかで、赤穂の事件で庶民は溜飲を下げたが、空気を操っている人間の、庶民に正常な判断をさせないための目くらましであった可能性はある。

江戸の三大改革のうち、享保の改革だけが成功した。
吉宗の時代の改革である。
成功は、足し高制度のせい。
有能な人物を在職期間にかぎって、石高を上げる。仕事が終わるともとの石高に戻すという。
能力のある役人を大事にするのであるが、やたらと甘い汁を吸わせていない。
これは大事な公務員改革である。
今の麻生さんでは、この公務員改革はきちんとできないだろうと思う。

吉宗は、目安箱を設置して、町民や農民の声をきいた。
例の赤ひげがいた小石川養生所をつくった。
町火消し制度を整えた。
医療や生活を守るためのサポート体制を充実させたのである。
しかも、鎖国をしたのにもかかわらず、洋書を解禁している。
時代の波を起こしている。
杉田玄白や前野良沢が「ターヘル・アナトミア」を翻訳し、「解体新書」を刊行している。
こういうのがその時代の空気をつくるのである。
空気をつくる政治家が必要である。
萎縮したくらい空気ではなく、明るく、元気で、前向きで、新しいものを取り入れる意気込みが必要なのだと思う。

写真は、諏訪中央病院の満開のムスカリ

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