鎌田劇場へようこそ!(20)『路上のソリスト』
5月30日から東宝シネマズシャンテで封切られる。
実話である。
LAタイムスの記者(ロバート・ダウニーJr)は、2本の弦しか残っていないバイオリンを見事に演奏するホームレスと出会う。
話しているうちに興味を持ち出す。
取材をしてコラムの連載が始まる。
このホームレスは、かつて音楽の名門校ジュリヤード音楽院に通っていた。
もともとはチェリストであった。
そのことをコラムに書くと、チェロを寄付する人が現れる。
ジェイミー・フォックス演じる主人公は、路上で久しぶりにチェロを弾く。
美しい音色。
道端で、ベートーヴェンを弾いている主人公と、新聞記者の光景が美しい。
2人の向こう側に何台も車がすれ違っていく。
この映画の最高の見せ場である。
主人公の音楽家は、統合失調症だった。
天才音楽家が、なぜ名門音楽校をやめ、なぜ路上に暮らしているのかわかる。
天才音楽家を救いたいと記者は思うが、空振りの連続である。
統合失調症の光と闇がだんだんわかってくる。
統合失調症という病気が、この映画を見るとよくわかる。
統合失調症は、おそらく人類が言葉を話すようになったとき、生まれた。
おそらく200人に1人の割合で、生まれてくると思われる。
人類が言葉をもち、文化を築くようになっていくにしたがって、この病気は生まれてきた。
彼らのなかには、シャーマンや巫女など、時代を変えていく人たちがいたのではないかと思う。
しがらみを断ち切り、時代を180度変えていくことができる力をもっている。
人類が進化していくのに、こういう人たちが必要だったはずである。
しかし、文化が発達して、所有の概念が生まれだすころから、統合失調症のような人たちは生きづらくなっていった。
ものを所有したり、収益をあげるのが苦手なのだ。合理的な成果をあげていく生き方は得意ではない。
ある種の天才である彼らは、この現代社会は決して生きやすいものではないことがよくわかる。
ある比率で天才が生まれてくる。
ある比率で統合失調症の人が生まれてくる。
こういう人たちが、イキイキと自分らしさを失わずに、ゆったりと生きていけるゆるやか関係作りができるといいなと思った。
新聞記者は、しがらみから離れた人間の関係を信じていたのではないだろうか。
別れた妻との関係も、そんな関係を望んでいたのではないかとこの映画をみながら、しみじみと思った。
なかなかよくできている映画であるが、原作から離れられなかっために、最後の感動がいまひとつだったのは残念。
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