辻井伸行君の伴奏で鎌田が朗読をした
じゃっかん20歳の辻井伸行君がバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した。
すごいことである。
目が見えないのに優勝したからすごいのではなくて、彼の音楽性がすごいのだ。
優れた感性をもち、これだけ動物的に反応できるピアニストはそうはいない。
クラシックの難しい曲を弾くときの、指の動きがすごいだけでなく、感性がすばらしいことは彼のオリジナル曲を聴くとよくわかる。
辻井君がまだ無名のとき、ぼくは彼のピアノにほれた。
ラジオ「鎌田實いのちの対話」では、いつも一流の音楽家が、ぼくの散文詩の朗読の伴奏をしてくれる。
昨年5月、京都から放送したときには、出演が和太鼓奏者がだったために、朗読の伴奏には向かず、CDを使うことになった。
ぼくはあえて辻井君の作曲した曲を2曲、伴奏に選ばせてもらった。
とても朗読しやすかった。
ラジオを聴いた何人もの人たちから、彼のピアノはすばらしいと言われた。
その辻井君が、まさかこんな大きな賞をもらうとは思わなかったが、いつかこの人は天下を取るなと漠然と思っていた。
ぼくがそう思って、ちょうど1年、まさに辻井君は天下を取ったのである。
かっこいいなと思う。
元気のない日本にとっては、ちょっとうれしくなる出来事であった。
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