異界の入り口紅テント
唐十郎の唐組紅テントをみてきた。
「黒手帳に頬紅を」という作品である。
黒い手帳というたった一つの題材を、イメージを広げて2時間の話にする唐は、天才脚本家だと思う。
唐十郎は、人さらいみたいなことをする。
唐十郎にさらわれた人はたくさんいたはずだ。
道を踏み外した人も、いっぱいいたはずだ。
唐十郎は、人さらいだ。
唐十郎は、異形の役者だ。
唐が舞台に出てくるだけで、舞台の空気が変わる。
いろっぽくて、華がある。
ハンサムでないし、若くもないし、よろよろのオッサンなんだが、
肩の力はすべて抜かれて、肩肘をはらない。
不思議な役者だ。
大学教授をしたり、金粉ショーに出たり、全部芝居のために命を張ってきた。
稲荷卓央は、5分間、ひとりでしゃべり通す長セリフを何回もやりこなす。
水槽にもぐったり、歌をうたったり、すごい役者に成長してきた。
藤井由紀も赤松由美もいい味をだしている。
鳥山昌克がブルースを歌い、久保井研や辻孝彦も老獪な演技をみせる。
大鶴美仁音がいい。
異形の唐十郎の芝居は、闇の芝居である。 闇のなかに輝くものが少しだけ必要なのだ。
大鶴美仁音は、その闇と光のバランスがいい役者である。
まだ子どもだが、華もあるし色もある。
長いセリフを言うときに、自分流の抑揚のつけ方が少し気にかかるが、大化けするかもしれないと思った。
全盲のピアニスト、辻井信行君がブレイクしているが、1年前にぼくは彼のCDを聞いて、おっと思った。
ぼくのラジオの朗読に使わせてもらった。
それから、たった1年でブレイク。
いいものは必ず、ちょっとしたきつかけさえあれば大化けするのである。
大鶴美仁音もひょっとしたら、いい役者に化ける。そんな気がする。
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