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2009年6月 7日 (日)

新型インフルエンザに負けない⑨

~~空気を運ぶ~~

1 障害者やがんの患者さんたちを連れて、グアムに行ってきた。
往復の飛行機はガラガラたった。
まるで空気を運んでいるようである。
グアムについても、ガラガラだった。6~7割が日本人のグアム観光にとって、大きな打撃になっているという。
以前から国内では、新幹線に乗っても座席はガラガラだった。

空気を運んでいる。
これでは経済が成り立たない。
必要な情報を提供し、必要な注意をして、必要な生活を当たり前のようにおこなわないかぎり、ぼくたちの国は崩壊してしまう。
舛添さんのパフォーマンスについて、ずっと批判してきたが、5月25日の参院予算委員会で、舛添大臣は「いちばんの盲点は、島国なので水際作戦を一生懸命やろうとしていたこと」と、水際作戦の検疫を重視しすぎたことを反省していた。
こういうところは、えらい。
はじめてのことなので、試行錯誤はありえる。

ぼくがずっと言ってきたことが、だんだん明らかになってきた。
5月16日に国内ではじめての感染例が報告された。
だが、後に5月5日に渡航歴のない男子高校生が感染していたことがわかった。
この高校生が5日に発症したということは、潜伏期間を考えると、おそらく5月はじめか4月末に感染していたことになる。
しかも、この高校生は海外に行っていないので、渡航歴のある人から感染が何回か繰り返された末、この高校生にたどりついたわけで、すでに氷山の一角を見つけたに過ぎないことが推測される。

だから、どうしたらいいかというと、世界的な常識である感染症対策マニュアルにのっとって、きちんと対処することである。
それ以上のことをヒステリックに行わないことが大事なのである。2
それは、うがいと手洗い。
それから、かぜ様の症状が出た人は人中に出ないこと。かぜの人が無理をしないで休める空気をつくることが大事なのである。
今までは「かぜくらいでは休まない、働くべき」というのが日本中の空気であった。
だが、これからは、かぜの人は学校や職場には顔を出さないという空気に変えていくべきである。
それは怠けているのではなく、感染症対策としての常識であり、知恵なのである。
がんばらないと認めてもらえないような日本の社会の空気を変えることである。

それから、もう一つ大事なことは感染症になることは不可抗力である。
その人にとっては不条理である。
感染症になった人たちを犯人のように扱うことは絶対に避けたい。
結核、ハンセン病、HIV、一時期のC型肝炎。
感染症と戦う新しい時代では、そういう人たちを排除したり、色眼鏡でみるのではなく、どうしたら広がらないようにするか科学的に考えることである。

たとえば、今回のグアム旅行に際して、ぼくたちは無謀で敢行したのではない。
事前に、グアム政府観光庁と何度もやりとりをし、きちんと情報を把握し、参加者に情報を公開した。
そのうえで個人が自分の責任で判断すればいいのである。

グアムでは、一人だけマスクをつけている日本人を見た。
一例も感染例が報告されていないグアムで、マスクは必要ないと思うのだが、これも厚生労働省がマスク、マスクと騒いだことが原因なのだろう。
マスクが本当に必要な人はわずかである。
たとえば、病院で医療を行う医師や看護師は、命を守るために必要である。それは、空気感染もある程度防げるといわれている医療用のマスクである。
普通のときにはマスクは必要ないのである。

われわれの国は空気に弱い。
なくとなく漂っている空気に敏感に反応して、ながされてしまう。
生き方を小さくしてしまう。
個性を失ってしまう。
そんな空気について、さまざまな角度から連載を展開していこうと思う。
タイトルは、「ながされない―鎌田實の《空気に負けない生き方》」。
集英社の携帯サイト「theどくしょplus」で第1~4木曜更新する。

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第1回は、6月11日。はじめの1回目は無料で読めるので、ぜひ読んでください(2回目からは月額210円)。
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アクセスはこちらからできます→

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