鎌田實の一日一冊(26) ひげとはげの関係
『旅する哲学』(アラン・ド・ボトン、集英社)を持ちながら、旅をしている。
ボトンは、2000年に出した『哲学のなぐさめ』でベストセラー作家になった。
イギリスの哲学者である。
笑ってしまう文をみつけた。
芸術上の努力なるものの疑わしさについて書いた、フローベルの言葉である。
「イタリア人。だれもが音楽的。だれもがあてにならない」とか「オアシス。砂漠の旅籠(はたご)」とか。
なんとも知的で屈折したんフローベルらしい表現である。
そのなかに「ひげ」というのがある。
「ひげ。強さのしるしである。ただし、ひげを伸ばしすぎるのははげの原因になる。ネクタイの保護に役立つ」
腹をかかえて笑ってしまった。
ひげがネクタイの保護に役立つかどうかは、なんともいい加減な表現なような気がするが、はげの原因になるというのは笑ってしまった。
もちろん科学的根拠はない。
ぼくのようにひげが多い人は男性ホルモンが多く、相対的に女性ホルモンが少ない。
体毛やひげは男性ホルモンに支配され、頭髪は女性ホルモンに支配されているので、ひげとはげは実は相関関係がある。
でも、フローベルの表現は間違いである。
ひげとはげは、相関関係になっているが、因果関係ではない。
ぼくがひげを剃ったとしても、髪ははえてこないのである。
「インスピレーション(詩的な)」とは、「海をみること、愛、女性、そのほかによって呼び起こされること」とある。
これなんかは、しゃれているなと思った。
ぼくは『旅する哲学』を持ちながら、あまり哲学的でない旅を続けている。
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