グアムにやって来た!
2日、東京でベストファーザー賞の授賞式に出て、100人以上のマスコミのインタビューを受け、慌しく飛行機に乗り込んだ。
夜中にグアムに着いて、翌朝から旅の仲間たちに会った。なかには何度も一緒に旅をしている顔なじみの人も少なくない。
新型インフルエンザ騒ぎで、当初115人の参加予定が、85人になったが、みんな来てよかったと大はしゃぎである。
今回の旅行を、家族に反対されたというおばあちゃんは、「車椅子だけれど、私は行きたい」と一人でやってきた。
偶然、おばあちゃんと同室になった女性は、5年間、筋萎縮性側索硬化症のご主人を家庭で介護してきた。
昨年秋、上諏訪温泉で「鎌田實と温泉に行こう」という催し物があり、ご夫婦で参加してくれた。
ご主人は、「来年はどうしてもグアムに行くんだ」と夢を語ってくれた。
しかし、今年の冬、ご主人は肺炎を起こし、亡くなったという。
奥さんは、泣きながらぼくに話してくれた。
「夫の写真を持って、夫が来たかったグアムに来ました。以前、夫との旅のときにトラベルサポーターにお世話になったので、今度は私が恩返しをしたいと思いました」
今回の旅では、彼女がトラベルサポーターとなり、同室になったおばあちゃんの車椅子を押し、2人で町を散歩したり、買い物をしたりして楽しんでいるという。
昨年のハワイ旅行に参加してくれたご夫婦の顔もあった。
ご主人は認知症が進み、車椅子の上で体をこわばらせていた。
奥さんは、その車椅子を押しながら、こう言った。
「先生、サプライズです。このためにやってきました。ハワイで、来年のグアムは必ず歩けるようになると先生と約束しましたが、夫をみてあげてください」
ご主人がニコっとステキな笑顔を見せた。自信ありげである。
そして、車椅子から立ち上がり、歩き出したのである。しかも、途中からジョギングのようなポースをとって、走り出しさえしたのである。
顔には満面の笑みをたたえて。
昨年、ハワイで金婚式をするという夢をもち、車椅子から離れた上山さんも、車椅子を持 たず、奥さんと来てくれた。
懐かしい。同窓会みたいである。
旅での出会いが、今も生きている。
旅には不思議な力があることがわかる。
大腸がんで肝臓に6個の転移があり、厳しい状態に追い込まれている奥さんと、その奥さんを支えているご主人。
奥さんは気丈で、にこにこしながら「免疫力を高めるために来ました」と言う。
ご主人は、泣き笑いである。
笑ったり、ほろほろしたりしながら、「夫婦でいい旅をしています」と言う。
お父さんと娘との旅もあった。はじめての旅だという。
娘さんは、乳がんを克服し、肺がんの一種の病気になり、脳卒中を起こし・・・次々に病気と闘っている。
そのお父さんが娘を支えながらやってきた。いい雰囲気である。
ぼくは、ベストファーザー賞なんてもらってしまったが、このお父さんをみて、いいお父さんだなと思った。
ベストファーザーは、日本中にいっばいいるんだ、と思った。
多発性繊維筋痛症と膠原病を併発し、まったく歩けなくなったお母さんは、小学校6年の息子と2人で来ていた。
2人で暮らしているという。2人は明るい。
お母さんを車椅子にのせたり、サポートしている息子。
その息子は、旅の間にいろんな友だちをつくり、若い女性とガールフレンドのように親しくなった。
若い女性は、いろんな事故やストーカーまがいの被害に遭い、人に傷つけられ、苦しんでいた。
小学校6年生の坊やの面倒をみながら、自分の傷ついた心を癒しているように見えた。
みんな癒したり、癒されたりしている。
癒しの旅はまだまだ続く。
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