鎌田劇場へようこそ!(26) 「愛を読むひと」
ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した映画である。
ケイトが、すごくいい。
「タイタニック」で、評判になったときは22歳。 この映画では34歳。
「タイタニック」よりは何倍も厚みのある空気を持ち出した。
暗くて、強くて、あったかくて、お母さんのようで、娼婦のようで、なんとも、ステキなハンナ・シュミッツという女性を演じている。
ベストセラーになった小説「朗読者」を映画化したものであるが、美しい映像で、本に負けないくらい出来栄えのいい映画になっている。
15歳の青年と、何か秘密がありそうな36歳の女性が恋に落ちる。
こんな恋をしてしまうと、一生が変わってしまうだろうと、想像できる。
それでもこれだけ人を好きになれるならば、一生が狂ってもいいような気がしないではないなと思った。
謎めいた女は、突然消える。
そして8年後、裁判所で再会する。
ナチスの親衛隊に入り、アウシュビッツなどの収容所で働いていた。
ハンナは、青年に本を朗読することを求めた。
それは、なぜか。
ぼくは『いいかげんがいい』で、旅役者だったために学校に行けず、文字が読めないおばあちゃんのことを書いた。
文字が読めない、書けないというのはけっこうつらい。
村の集まりに行っても、村の役が回ってこないか不安をもちながら、いつも隠れるように隅のほうに座っていたという。
自分に役が回ってきて、みんなから字が読めないことがばれないか、びくびくしていた。
何かの事情で字を覚えることができない子ども時代を過ごしてしまった人がいるのだ。
「愛を読むひと」は、なんともいくつもの問題を提示している。
人を好きなること、いかに生きるか、そして、人間の原罪、責任とは何か、いくつものことを考えさせれる。
厚みのある深い映画にしあがっている。
しかも、はらはらどきどきする展開になっている。
ケイトの潔い裸もなんとも上品でたくましい。
22歳の「タイタニック」のときとは、二の腕の太さが違うなと思いながら、こうやって人は年輪を重ね、人間としての厚みを増していくのだと確信させてくれる出来栄えのいい映画になっている。
ぴあの点数はあまり高くないが、絶対におすすめの映画である。
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