鎌田劇場へようこそ!(25) 「レスラー」
妻、家、キャリア、自尊心。
すべてをなくして闇のなかにいた男が、闇のなかからすっくと立ち現れてくるような映画である。
主演はミッキー・ローク。
1980年代、アイドル的な人気を博すが、何を血迷ったのか、91年ボクサーに転向する。
結局、大したボクサーにはならず、その間にハンサムな顔が壊れる。
94年には家庭内暴力を起こし、警察に逮捕される。
95年ボクサーをあきらめ、再び映画の世界にもどってくるが、だれにも相手にされない。
ミッキー・ロークの人生と重なり合うように、この映画はすすんでいく。
失敗の連続。
かつてマジソンスクエアガーデンで観客をいっぱいにした花形レスラーの主人公。
それから20年たって、いまはドサ回り。
自分が捨てた娘と出会う。
和解できそうになりながら、破局。
ドジな男である。
このドジさがたまらなくいい。
これが人生というものか。
マリサ・トメイというストリッパー役の44歳の女優が、またすばらしい。
みんな、おちぶれている。
みんな、人生をうまく生きれない。
それでも生きているということはすばらしいと思える映画である。
監督アロノフスキーが低予算でつくった起死回生の一作。
4館だけで上映がはじまり、徐々に評価された。
次々に映画賞を獲得していく。
ドサ回りのおちぶれたレスラーの話が、全米にヒットしていくのである。
深く感動的な映画だ。
人間ていいなと胸を打たれた。
最後の数分のエンディングがすばらしい。
映画館のシートにすっぽりと包み込まれてしまって、身動きできない感じがした。
ミッキー・ロークだからできた映画だと思う。
そして、ことごとく失敗の人生を生きてきた彼の人生は、つらいことはいっぱいあったが、無駄なことは一つもなかったと示しているような気がした。
心が揺さぶられる。
プロレスの場面は、女性はちょっと苦手かもしれないが、そこは薄目でみてみるといい。
感動間違いなし。
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