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2009年7月 3日 (金)

うれしい知らせ

「ピック病で万引きの、元課長の免職を撤回」のニュースが報じられた。

茅ヶ崎市市役所で課長をしていた中村さんは、2006年、自宅近くのスーパーで、3300円相当のお菓子などを盗んだとして、現行犯逮捕された。
本人には、盗む気などまったくなかった。
会計することを忘れてしまったのだ。
不起訴処分ととなったものの、市役所を懲戒免職された。0906281

それ以前から、ネクタイを何本も買ってきたり、トイレットペーパーを繰り返し買ってきたり、異変が現れていた。
本人も妻も、何か怪しい、と思いながら、きちんと診察は受けなかった。
そして、万引きの現行犯逮捕。
すぐに受診すると、ピック病と診断された。

万引きは、ピック病によるものだったとして、家族は市の公平委員会申し立てた。
その結果、市は懲戒免職処分を取り消し、停職6ヶ月としたのだ。
すでに停職期間はすぎているため、復職し、退職することもできる。

ぼくは中村さんご夫妻に2度お会いしている。
1度は雑誌の対談。
2度目は、医学系の研究会で、医師たちに、認知症の患者さんの声を聞いてもらおうと思い、協力をしていただいた。

中村さんは認知症であるが、まだら状で、社会とつながることができる。
ただし、奥さんのサポートは並大抵のものではない。
奥さんは、中村さんを町に連れ出し、進行をくいとめようとしてた。
市役所を突然、懲戒免職にされて、経済的にもたいへんになった。
奥さんが仕事に行くのだが、夫を一人にすることもできず、職場に連れていくということも聞いた。
ピック病は、認知症のなかでも人格崩壊が強いといわれているが、中村夫婦はそれでも明るく、必死に病気とたたかっていた。
そして、夫婦は実名を公表し、ピック病ということを隠すことなく、社会にメッセージを発している。

09062823 この夫婦の誇りが守られたのは、とてもうれしい知らせだった。
茅ヶ崎市がきちんと判断の見直しをしたことは、えらい。

中村さん夫婦には、これからもいきいきと地域で生きていってほしいと思う。
地域の人たちも、応援をしてあげてほしい。
夫婦が町に出ていったら、あたたかなまなざしでみてあげてほしい。

認知症の人たちの人権が、当たり前に守られる社会の第一歩になったらいいなと思う。

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