鎌田實の一日一冊(33)
『渡邉美樹の超常思考 勝つまで戦う』(渡邉美樹著、講談社BIZ)
渡邉美樹さんから本が送られてきた。
49歳で、ワタミの社長を辞めた。
会長・CEOになっているので経営権はもっている。
なかなかおもしろいと思った。
彼が経営する郁文館夢高校で、過去の英検試験の不正が発覚した。
その真実はどこにあったのかと気になっていたので、この本が送られてきてすぐに読んだ。
「超常思考」といっているが、渡邉美樹の発想は儒教的な発想を思考の軸にしている。
実にシンプルで常識的である。
絶対にぶれない思考の軸だとか、経営を成功させる思考法とか、価値観を転換する思考法だとか、具体的でわかりやすいが、実に儒教的である。
最後にも論語を持ち出し、「過ちてあらためざる、これを過ちという」という言葉まで引用している。
ぼくは孔子や孟子の規範のような考え方は、必要だとは思うが、あまり好きでない。
その点、タオイズムには、ちょっとあやふやであいまいなところがあるが、人間界を超えて、地球上の生き物が共生していくための大事な考え方がつまっているような気がしている。
渡邉美樹の、「いつも千の笑顔やありがとうを集めることが目標」とか、「夢は日付を入れなければいけない」という考え方を、ぼくはずっと泥臭いと思ってきた。
彼の経営している北海道の無農薬野菜の農場を、ぼくは見に行ったこともある。
カンボジアでは、200の学校をつくってきた。
そういう彼の生き方を、ちょっとクサイと感じながらも、いつも興味をもってきた。
この本の内容と彼のこれまでの生き方は、タオイズムにひかれるぼくにとって「超常思考」とは思えないが、
最後のページの一文に目がとまった。
「日付の入る夢は超えなければいけない。日付の入らない見果てぬ夢こそ、私が目指す追いかける夢ではないたろうか」
もしかするとここに、大事なものをつかむための何かを暗示しているかもしれない。
これからの渡邉美樹に、超常思考的な生き方が出てくるのかどうか、楽しみにみていきたいと思う。
誤解のないように言っておくが、儒教的な発想が悪いというわけではない。
この本は、儒教的な発想の上で、より実践的な生き方を説いているので、実にわかりすい。
特に、生き方に迷っている若者たちには、いいヒントになると思う。
若いときにタオイズムの本を読んでも、なかなかイメージできないだろうから。
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