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2009年8月20日 (木)

イラク便り③~ハラブジャより

今日は、ハラブジャという街に行ってきた。
旧フセイン政権時代、マスタードガス攻撃により5000人もの人が殺された悲劇の街である。

090821036_2 街には、虐殺の悲劇を伝える博物館がある。
博物館の手のような形をしたモニュメントが目を引いた(いちばん下の写真)。
当時の虐殺の様子を人形で再現したり、子どもを抱いたまま亡くなった母親やおびただしい死体の山など、目を覆いたくなる写真が惨劇を伝えている。090821038
マスタードガスにより、一度意識を失った男性にも会った(写真→)。
この人は、死体の山のなかに重ねられていたが、偶然、ジャーナリストに発見されて、一命を取り留めたという。

今、ハラブジャはイラクのなかでも、テロがまったくない、平和な地域になった。
ハラブジャの市長は、平和運動をしている。
8月9日の長崎の原爆記念日に来たこともあり、ヒロシマ・ナガサキやハラブジャのような悲劇が二度と繰り返されないよう平和を訴えている。
市長と会って、お互いにどうしたら平和になれるかという話をしてきた。
市長は、市民たちが自ら「テロを入りこませない」「平和にしよう」という気持ちをもつことがいちばん大事だと言う。
その通りだなと思った。

090821035 イラクを旅して思うのは、治安の大切さである。平和の大切さである。  090821040
これまで訪ねたアルビルやスレイマニアは、クルド人自治区である。
クルド人自治区は、もともとフセインの攻撃から守るために民兵をもっていた。
イラク政府軍ではなく、民兵で自分たちの自治区を守っていたのである。
フセインが倒されてからは、民兵がクルド地区の正規警察になった。
はじめはテロがあったが、警察力が強く、テロを押さえ込むことに成功し、テロリストが入り込めなくなっている。

ここから車で40分ほどのモスルは、いまも不穏な状況が続いている。
うわさではアルカイダがモスル近郊の山に潜伏していて、かなり統制のとれたテロを展開しているのではないかといわれている。
いっとき治安が回復されたように見えたが、ここへきてモスルは明らかにおかしい状況になった。
090821043 バグダッドは以前よりはましだが、相変わらず毎日、3~4件のテロがある。
先日も、同時多発テロで300人の死傷者が出ている。

バグダッドでは、警察組織のなかにサドル派も入り込み、通常は090821030警察の仕事をしながら、何かのときにテロ行為もしているのではないかといわれている。
こんな警察では、信頼は得られない。
正しい感覚をもった警察力が、市民が安心して生きていくためには大事と思う。

その点、アルビルもスレイマニアも同じイラクとは思えないほど明るく、平和で、元気である。
ぼくは今まで「ちょい左」的発想で、警察権力なんて好きではなかったが、治安を守る力が必要であるとつくづく感じた。

バグダッドのテロ事件を知って、日本から電話をいただいた。
心配をおかけしているようである。
ここに書いたように、ぼくのいるアルビル、スレイマニア、ハラブジャは治安がいい。
50度の暑さにも負けずに、イラク北部の医療状況をみてまわっているので、どうかご安心ください。

明日は早朝5時、アルビルの空港からアンマンへ飛行機で飛ぶ予定です。
インターネット状況によりますが、できるだけこちらの様子をアップしたいと思っています。
楽しみにしていてください。

★水と緑のある喜び

090821046 乾いた土地のイラクにあって、スレイマニアやハラブジャの辺りは、緑が豊かだ。
山があるので、冬の間、雨季になり、川は豊かな水をたたえている。
川魚の料理を食べた。
コイのような味だが、名前は聞かなかった。
これに、あんがかかっている。090821027

この辺りの川は、チグリス・ユーフラテス川よりも一本、東に位置する。
川は、文明の発祥と切っても切れない。
川沿いには、緑があり、農業が栄え、村ができ、文化が生まれる。
ほこりっぽい砂山のような土地を走り、ふっと川が見えてきたときには心がほっと安らぐ。
水と緑の大切さを実感している。

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