おくり火
白樺の皮でおくり火を焚き、父や母をおくった。
そして、子どもたちと一緒に、墓参りに行ってきた。
8月15日はいろんなことを考える。
悲しい戦争が終わった日である。
2005年にバスラから来た小児科医モハメッド・アバスさんのことを思い出した。
モハメッド医師は、長崎市の原爆資料館をみて、非人間的なことに驚いたという。
「今、私たちイラク人は同じ問題に直面しています。でも驚いたのは、日本人はそこから復讐ではなく、平和を学んだこと。そして国を再建する力と勇気があったことです」
ちょっとうれしい言葉だ。
湾岸戦争以降、戦争が繰り返されるイラク。
悲しみのなかで、やられたらやり返すという憎しみや恨みが蔓延しているのだろう。
でも、憎しみや恨みが、創造的な何かを生み出すことはない。
被爆という悲しみのなかから、ぼくたちは、復讐ではなく、平和をつくることを学んできた。
オバマ大統領が11月に来日したとき、広島や長崎を見てもらうといい。
モハメッド・アバスさんのように、何か大切なことに気づくのではないか。
それが核廃絶への大きなエネルギーになるように思う。
そして、日本の政府も、世界の先頭を走って、核廃絶を進めていく環境づくりができるように思う。
今年の初夏、グリーフワーク研究所で、悲嘆の癒しについて講演をした。
そこで、05年におきたJR宝塚線脱線事故の被害者と加害者たちがともに、悲しみをどう癒すかという勉強会に参加していることに驚いた。
2年間近く続いているという。
脱線事故では107人が死亡し、560人が負傷した。
その被害者たちには今もトラウマが残り、悲しみのなかにいる。
愛する人を失った悲しみは、計り知れない。
加害者もつらい状況のなかで、元社長をはじめ、たくさんの職員たちが参加していた。
加害者と被害者が同じ空気を吸いながら、命について勉強していた。
ぼくは講演をしながら、大事なことを学んだ。
愛する人を失ったときの悲しみは重いが、心の手当ては悩んで、泣いて、向き合うこと、だった。
8月15日は、亡くなった父や母のおくり火を焚きながら、平和が続くことを願った。
墓参りをした後は、あずさに乗って東京に出る。
今日の夜は、NHKのラジオ「鎌田實いのちの対話」特別編で、子どもたちと戦争と平和について語り合う。
番組は午後7時20分から、NHKラジオ第一。ぜひ、お聞きください。
そして、いよいよ明日から、戦禍に苦しむイラクへの旅に向かう。
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