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2009年9月14日 (月)

新シリーズ・この人に会いたい(1)児玉清さん

日本中をとびまわっていろんな人に会ってきた。
たくさんの刺激をうけ、なるほどなと思うことが多い。
このブログでも、いろんな人の話を書いてきたが、新しいシリーズをはじめることにする。

第1回は、児玉清さん。
ご存知、理知的でハンサムな児玉さんは、俳優や司会者として活躍している。
この人が司会をつとめる「週刊ブックレビュー」(NHK BS2)という番組がなかなかいい。
児玉さん自身がなかなかの本の虫。
ヘビーな作家たちから、透明感の強い児玉清さんが、作品の裏側を上手に聞き出してくれる。
いつも感心してみている。

彼が『負けるのは美しく』(集英社文庫)という本を書いたときに、すぐに読んだ。
冒頭のエッセイ「母とパンツ」というタイトルが気に入ったからである。
サマセット・モームの『月と6ペンス』というタイトルに魅せられて、ぼくは初めての絵本に『雪とパイナップル』というタイトルをつけた。
「母とパンツ」というタイトルも、ぼくの趣味に合っていた。Photo
母とパンツがどうつながるのか、俄然興味がわいた。
なかなかおもしろい本だった。

本の最後に、36歳でスキルス胃がんでなくなった娘さんのことが書いてあった。
つらい話である。
娘さんを亡くして、児玉さん夫婦は深い悲しみに陥っていることがわかった。
雑誌の対談の話があったときに、児玉清さんと対談したいと話した。
夢がかなった。
そのとき、娘さんの話になった。
娘さんは生きているとき、お父さんやお母さんのことを気遣っていたのではないか、とぼくは自分の経験から想像して話した。
児玉さんは、目を赤くさせ、聞いてくれた。
まだ、まだ、娘さんを亡くした傷は深いように思えた。

児玉さんは、『負けるのは美しく』の中で、自分のことを「売れない役者」という。
飄々と言ってしまうところがいい。
「アクがない役者なんですよ」
なんて、自分でぬけぬけと言ってしまうのもおもしろい。
負けてもいいのだ。
負けても、美しいというのが、なんとも児玉清らしいと思った。

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