この人に会いたい(2)医師・増田進先生
地域医療の神様、増田進先生は、今も元気で、本物の医療を目指している。
かつて、日本中から見学者が絶える日がないほど注目されていた岩手県の沢内村の地域医療。
ぼくが諏訪中央病院で病院づくりをするときも、増田先生に教えられることが多かった。
人間的にもすばらしい方で、毎年、沢内村の先生のお宅を訪ねたり、岩次郎小屋に来ていただいたり、
京都や北海道、沖縄で落ち合ったりしながら、旧交を温めている。
沢内村の病院を定年退職した後、岩手県の田老病院の院長をつとめた。
それも2年前にやめ、雫石新スキー場に緑陰診療所を開設した。
増田先生は「ゾーンディフェンス」という言葉をよく使っていた。
「地域医療は、ゾーンで守るのだ」と。
その増田先生が、緑陰診療所で、ゆっくりと患者さんの声を聞く医療を行っている。
得意な針を使って、痛みや難病などに対応する。
今の医療に見放された人たちが、遠くから集まってくるという。
いまは、究極のマンツーマンディフェンスを目指しているみたいだ。
医療というのは、地域で守る「ゾーンディフェンス」というシステムと、医師と患者との関係で成り立つ「マンツーマンディフェンス」の、両方のバランスがいい・かげんに大事なはずである。
増田先生は、医師人生の最後に、究極のマンツーマン医療の集大成を築こうとしているように思える。
もうすぐ先生の『森の診療所の終の医療』(講談社)という本が出版される。
「今こそ必要とされる人間を診る医療の原点がここにある。かつて日本中から注目された沢内村の地域医療を築いたわが師・増田進は今も、真に住民のための医療を求め続けている」
ぼくは、そう帯に書かせてもらった。
オーディオマニアで、自らもフルートを吹く。
巨大なオートバイにまたがり、冬になると颯爽とスキーをする。
ご夫婦でテニスをする。
70代で相変わらずエネルギッシュなご夫婦のペアに、今年、日光で完敗した。
そして、何より、増田進先生は、地域医療の原点を求め続ける本物のプロフェッショナルである。
写真は、増田先生(左から2番目)らと沖縄を訪ねたときのもの。鎌田は左から3番目
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