小澤征爾はすごい
サイトウ・キネン・フェスティバル松本に行ってきた。
もちろん指揮は、小澤征爾である。
ラベルの「道化師の朝の歌」は、何十人ものバイオリンやビオラ、チェロによる豊かな深い弦の音色が、特徴的なアンダルシア風のリズムを奏で、体にしみわたってくるようである。
次は、ラベルの「シェエラザード」。
スーザン・グラハムのメゾ・ソプラノがやわらかく、美しく、そして力強い。
百数十人のオーケストラと一体となっている。
一人の声が、腕力で全てを支配しているのではなく、見事にオーケストラと一体となり溶け込んでいるような歌声である。
「シェエラザード」の「アジア」を歌った。
「ぼくは見てみたい ダマスカスを、
空に回教寺院が軽々と浮かんでいる」
10日ほど前までダマスカスにいたので、ぼく自身が音楽のなかに溶け込んでいくようだった。
最後の圧巻は、ブラームスの交響曲第2番。
ブラームスは、交響曲の第1番をつくるときには、20年ほどの歳月が必要だったという。
難産に苦しんだ第1番に比べると、第2番はオーストリアの避暑地でスッと生まれた。
聴いていてもよどみがなく、第1楽章から第4楽章へとまるで一人の人生を物語るように、ゆったりとした大きな波を描きながら、フィナーレへ向かっていく。
小澤征爾は、やはりすごい。
豊かで、深い音をつくり上げている。
繊細で、劇的である。
音楽のあふれる松本の夜に酔いしれた。
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