鎌田實の一日一冊(37)
『「地域生活の質」の基づく高齢者ケアの推進―フォーマルケアとインフォーマルケアの新たな関係をめざして』(冷水豊編著、有斐閣、5080円)
冷水(しみず)先生は、上智大学総合人間科学部社会福祉学科の教授をしているとき、2002~2006年にかけて、ぼくが住んでいる茅野市をフィールドワークにしていた。
御柱が立つ、諏訪大社の上社の前宮の近くに空家を借りて、若い研究者と定期的に大学から泊りがけでやってきた。
地域生活の質はどうやってまもられていくのか。
それを、フォーマルケアとインフォーマルケアの新しい関係性から分析しようした。
当時、茅野市では「福祉21ちの」という住民主導の新しい健康と福祉のまちづくりが行われていた。
ぼくもその取り組みの副代表をしており、冷水先生の研究に少し関係することがあった。
フォーマルケアとは、介護保険や行政が行っている福祉のこと。
これに対して、「福祉21ちの」は、インフォーマルケアを大事にしようとした。
たとえば、この地方は冬になると雪が降るが、高齢者世帯では大雪が降ると、ごみを出せない。
そんなときに、近くの若者がゴミ出しをサポートする。
また、障害者がちょっと町に買い物に行ったり、外出したいときに、ついでにボランティアが車で同乗させてあげる。
そういうインフォーマルケアを町中に張り巡らそうと考えたのである。
それが、高齢者が暮らしやすい地域になるのではないかと考えた。
「地域生活の質」を上げるには、どうすべきか。
社会科学者の冷徹な分析が、この本のなかで行われている。
すぐれた視点の研究です。
ぜひ、興味のある方は読んでください。
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