鎌田實の一日一冊(38)
『コレステロール 嘘とプロパガンダ』(ミッシェル・ド・ロルジュリル著、篠原出版)
「コレステロールは心筋梗塞などに影響しない」ということを、いくつものデータを検証しながらまとめた本である。
著者は、基本的にはコレステロールは、まったく心筋梗塞の血栓をつくる原因になっていない、粥状動脈硬化の原因にもコレステロールは関係しないという。
血小板が凝集して、血管の壁にこびりついたりしながら、心筋梗塞や動脈硬化がおきるのだという。
300ページをこす大著である。
ぼくは『ちょい太でだいじょうぶ』(集英社)のなかで、「ちょいコレ」がいいと書いてきた。
「ちょいコレ」とは、コレステロール値がちょいと高いということ。
コステロール値の正常値は220とされているが、ぼくは240から260までは心配ないと思っている。
この本を読んで、ますます、ぼくの「ちょいコレ理論」に自信を深めた。
ただし、ロルジュリルの言うように「おおコレ」でもいい、大幅にコレステロールが増加していても心配ないとは、ちょっと言う気がない。
この本では、コレステロールを防ぐ薬が、かえって害になっていることも示している。
この点は参考になる。
自分の外来でも、コレステロールの薬を処方するときは、生活習慣の改善だけで、薬なしでできないかどうか、もういちど見直してみたいと思っている。
著者は「おおコレステロール」は長寿の指標であると言い切っている。
動脈硬化学会などで、この著者を招待し、コレステロールを下げるべきかどうか議論するとおもしろい。
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