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2009年10月11日 (日)

鎌田實の一日一冊(39)

『昨日と明日の間―編集者のノートから』(小尾俊人著、幻戯書房、3780円)

昭和20年、敗戦のなかで、みすず書房を立ち上げた出版人の編集ノートである。
なかなかおもしろい。

いま「言葉で治療する」というタイトルの本を書いている。Photo
その本に参考になる言葉をみつけた。
ゲバラ日記。
「われわれは21世紀の人間を創造するであろう」とゲバラは述べ、20世紀はオオカミの心をもった人間が自分の欲望のために帝国主義というスタイルを築いたということを言いたかったのだろう。21世紀は違うぞ、という未来を、ゲバラは信じていたのだろう。

ゲバラは医者であり、革命家であった。
1965年、キューバで、カストロの懐刀として大臣の仕事をしていたが、その大臣の職を辞し、キューバから消える。こんな言葉を残している。
「私は新しい戦場に、最も神聖な義務を果たそうとする感情を携えてく。言葉は私が望むことを表現しえない・・・・」

「言葉は私が望むことを表現しえない」
ゲバラはこのとき、言葉では何かを変えられないと思ったのだろう。
医師の道を捨て、革命家になろうとしていた。

医師にとって言葉は大事である。
ソクラテスは、哲学者と同じように、医師も言葉を扱う職業であると述べている。
言葉によって人を癒すこともできる、人を治すこともできる。
そんな思いで、「言葉が治療する」という本を書いている。
11月末の出版をお楽しみください。

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