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2009年10月28日 (水)

鎌田實の一日一冊(40)

『一澤信三郎帆布物語』(菅聖子著、朝日新書、777円)

老舗ブランドのお家騒動で大変な苦しみを得た信三郎さん夫妻が、新しいブランドを立ち上げるまでのノンフィクション。

泥沼で苦しむ一澤信三郎さんをなんとか援護射撃をしようと思い、ぼくは「週刊朝日」や「PHP」で原稿を書いて、応援してきた。
講演旅行のときにも、できるだけ信三郎帆布のラベルのバックを持ち歩いた。

ぼくは、信三郎のお父さんをよく知っている。Photo
お父さんがどんな思いでいたか、信三郎さんにどんなに店を継がせたかったか、家のこともよくわかっていた。
だから、兄が持ち出してきた遺言書を信じることはできなかった。
やっと最高裁までいって決着がつき、信三郎さんが正しかったことがわかった。
その顛末が、この本によく書かれている。
また、日本の裁判の弱点も見えてくるが、まだまだ正義が認められることがわかり、安心もした。

著者の菅聖子さんとは、チェルノブイリへの旅を一緒にしたことがある。
広島で被爆した笹森恵子さんを、孫のように支えながら、旅をしてくれた。
あたたかい人である。
あたたかい人が信三郎帆布というあたたかな商品の奥にあるものを見事に書ききっている。

信三郎帆布の職員たちはあたたかい。
信三郎さんと恵美さん夫婦もあたたかい。
あたたかいいい本ができたと思う。

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