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2009年12月12日 (土)

神奈川学園で命の授業

神奈川学園は横浜にある女子中・高一貫校。
先日、1200人ほどの生徒たちに命の授業をしにいった。

中・高の生徒全員が『がんばらない』を読んでくれたという。
社会科の先生がチェルノブイリ原発事故の話を1時間して、その後、国語の先生が2時間、ぼくの絵本『雪とパイナップル』を使って授業をしたクラスもあったという。
「世界一受けたい授業」のDVDを鑑賞し、告知賛成派と反対派でディベートをしたという。
NHKの「ようこそ先輩―聴く力は生きる力」も一つの教材になった。
聴くということがどんなに大切なことか、議論したという。
たいへんな準備である。

命の授業では、このごろぼくがこだわっている「われわれはどこから来たのか」というテーマで話しはじめた。
命は38億年、つながっている。その歴史のなかで、私たちは命のバトンタッチをしてきたという話をした。
事前学習がしっかりしているためか、前半は難しいテーマのはずなのに、身を乗り出して聴いてくれている。
笑ってくれるときの反応も速い。
「聴く力」をもった学校だと思った。

先生たちの努力も並大抵のことではないと思う。
それが子どもたちにきちんと伝わっている。
聴きながら、何か一つでも身につけようとする姿勢が感じられた。

じつに礼儀正しい。L1080187
この学校は、ルールが少ない学校だという。
創始者の佐藤善治郎校長は、心の規範をもって生活が丁寧に行われるならば極力ルールは少ないほうがいいという考え方によるらしい。
生徒たちもルールが少ないと自覚していることもまたいい。
このままルールが少ないままでいくには、自分たちがしっかりしていなければならないと、理解しているようだ。

佐藤善治郎先生は、三代以降は佐藤家が理事長や校長をしないようにと、きれいな身の引き方をして、
まったくの他人にすべてを譲り渡したという。
新しくホールをつくったとき、佐藤善治郎ホールと名前をつけたかったが、佐藤先生の家の方から、そういうことを望んでいないのでつけないでほしいと言われたという。
これもなかなかいい話である。
学校側は、佐藤を砂糖ともじって、「シュガーホール」と名づけた。
なかなかおしゃれな対応をしたと思う。
学校には、そういういい空気が流れている。
教育の現場を我が物にしていないところがいい。

横浜大空襲でこのあたりが焼け野原になったとき、この学校も焼けた。
その焼けていく学校を生徒たちと一緒にみながら、校長が「校舎は燃えても、教育は燃えない、大丈夫だ」と言ったという。
なかなかの人物だと思う。

そういう学校で命の授業をさせてもらったことは幸せだったと思う。
1200人の聴衆が全員が『がんばらない』の文庫本をもって、感想文を書いてくれている。
演者として、なんとも幸せな時間をいただいたと思う。

神奈川学園の中学校、高校の生徒さんたち、たいへんお世話になりました。

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