鎌田實 日本経済への提言(33)
~~100日ルール解禁~~
新政権が発足すると、国民とジャーナリストと新政権はハネムーン状態で、あまり足をひっぱらない。100日ルールという。
100日は過ぎた。
急ごしらえで事業仕分けを行い、一部ではあるが予算作りの透明性がはかられたことは意味がある。
しかし、6000億か7000億円程度の削減しかできなかった。
とはいうものの、丁寧に事業仕分けをしていくことで、今後、予算案や補正予算案をつくっていくときに、55年体制でたまってしまった垢を落とすことができる。
これは4年かがりでやればいいのである。
これだけに注目を集めてしまうと、体制が縮んでしまう。
削減させるのが政治家の腕の見せころというのは、大局を見失ってしまう。
削りながらどこにお金を使うかが、政権の手腕である。
使うお金をシフトしながら、経済を揺さぶり、そして国民の心をあたためて、将来どういう国づくりをするのかというビジョンを、国民に示していく必要がある。
今のところをみていると、江戸末期の状態に似ている。
12代将軍徳川家慶に仕えた老中水野忠邦が行った天保の改革を連想させる。
天保年間は、1833年に天保の飢饉が起こり、大塩平八郎の乱などで国内は不安な空気に満ちた。
殺伐とした時代である。
水野は、まず倹約令をだして、贅沢をやめさせようとした。
ぜいたく品や華美な衣装を禁止し、風紀を取り締まろうとした。
春本や人情本の出版も禁止する。
株仲間解散令を出すが、物価は逆に上昇し、10年後には株仲間は再開される。
財政運営がうつ的なのである。
この時代、水野がやらなければならなかったのは、うつ的な財政運営から、そう的な財政運営へと切り替えるべきだったのである。
新政権も、この1、2年に関しては事業仕分けなどで無駄を省き、削った分にプラスアルファして雇用を生み出すためのお金の使い方をしないといけない。
お金を使える人には、ぜいたく品を買えるようなルール作りをする。
そして、今の危機を脱した後は、大きくもなく小さくもない中規模の政府を目指しながら、財政規律を確保する。
そのなかで富裕層からの税金を多くするのはかまわないが、この2年ほどは、富裕層の人たちにどうやったらお金を使ってもらえるかを考えたほうがいい。
2年間の期限つきで、相続したものは全部使うことを前提に、相続税は控除する。
お金をためこんだ親の世代から、若い世代へとお金が流れ、それが家や車の購入資金になれば、経済が動き出す。
NPO法人に寄付をすると、税金が控除されるといい。
JCFは、贈与に税金がかからない「国税庁認定NPO法人」にようやくなったが、認可を受けるのに何年もかかった。
もう少しハードルを下げ、多くの団体がそうなればいい。
そういう対策を講じて、経済がよくなったところで、消費税を上げることである。
水野忠邦がやったように、倹約、倹約の一本やりでは社会を暗くしてしまう。
夜の盛り場のネオンが消えてしまえば、経済はにっちもさっちもいかなくなる。
江戸っ子の宵越しの金を持たない、あの躁状態の空気をつくり出すことが大事なのではないだろうか。
多くの国民は、マニフェストどうりになんて、あまり望んでいないと思う。
新政権に望むは、脱官僚と税金の無駄遣いを省くこと。
極論すれば、この2点をしっかりやりさえすれば、ほかは大きな方向転換をしなくてもいいのである。
そうすれば新政権は十二分に評価され、それが安定政権になっていくのである。
そして、カマタが言い続けているウエットな資本主義のために、徐々に予算を子育て、教育、医療、福祉、雇用という国家の下半身に注ぎ、あたかな血を通わす政策をゆっくりとすすめていくことが大事なのである。
写真は、広島県の海軍兵学校があった江田島(上)と、江田島からの帰りに船から夕暮れを望む。
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