鎌田實の一日一冊(51)
きょうは、三冊まとめて紹介する。
一冊目は『スローライフのために「しないこと」』(辻信一著、ポプラ社)
割り箸をできるだけ使わない。
そう、辻信一さんは、マイ箸を持ってあるいている。
ぼくは、彼の愛用の、携帯用の折りたたみ箸をいただき、使用している。
忙しいと、旅に持って行くのをつい忘れてしまう。
彼はペットボトルをできるだけもたないように、水筒を持ってあるく。
自動車を持たない。
自転車で移動する。
辻さんの「しないこと」は生き方のスタイルになっている。
テレビもできるだけ見ないようにしている。
頭を使いすぎない。
急がない、選ばない、強がらない、他人のものをほしがらない、口と耳と目を使いすぎない、先走りをしない、欲張らない、争わない・・・。
こういうの大好き。
この本のなかには、カマタの『がんばらない』や『いいかげんがいい』が取り上げられている。
ちょっと生き方のヒントになる。
『北朝鮮帰国事業―「壮大な拉致」か「追放」か』(菊池嘉晃著、中公新書)
約10万人が北朝鮮に帰国し、無残な悲劇を産んだ。
なぜ、この悲劇が起こったのか、克明に書かれている。
労作である。
ぼくはいま『空気はよまない』という本をつくっている。
日本人は、特有の空気に染まりやすい。
「地上の楽園」という宣伝にも、みんなが疑うことなく、帰国事業を進める空気に染まってしまった。
かつて勝てるわけがないことを、多くの軍のリーダーたちがわかっていながら、だれも戦争を阻止できなかった。
1980年代にバブルに突入していくときに、こんなばかなことはいつまでも続くわけがないと思いつつ、いつまでも続いたらいいと思い込んでしまった。
日本人は、空気をよもう、よもうとして、ながされてしまっている。
日本人もそろそろ「空気をよまない」生き方が大事なのではないかと思っている。
三冊目は『われら糖尿人、元気なのには理由がある―現代病を治す糖質制限食』(宮本輝、江部康二著、東洋経済新聞社)
江部先生は、昨年、諏訪中央病院のほろよい勉強会に来ていただいた。
炭水化物断ちで、糖尿病はコントロールできるというお話だった。
作家の宮本輝さんは、糖質制限食を実践し、糖尿病がよくなったという。
この本では、江部先生と対談している。
だが、2005年に江部先生が出した『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新聞社)以上の内容はなかった。
それほど新しい理論を聞き出していない。
宮本輝のファンなので、期待して読んだのだが、ちょっと残念。
宮本輝は小説のほうがいい。
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