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2010年1月17日 (日)

音の言葉

朝4時に起きた。
真っ暗である。
暗闇のなかでカーテンを開けながら、今日の天気をうかがう。
どうも雪ではなさそうだ。
このところ晴天が続いている。Photo_3

いつものように、コーヒーを淹れる。
城之内ミサの「追遠」(ついおん)を聴く。
静謐という言葉がぴったりである。

城之内ミサは、5歳から作曲をしたという。
10代の後半からテレビドラマの音楽を作ってきたというから、すごい。
パリオペラ座管弦楽団に、自分の譜面を送って、演奏してもらったという、すごい度胸の持ち主だと思う。
そのとき、音楽界の巨匠ジャン=クロード・プティの指揮を目の当たりにした。
ジャンの指示の言葉がおもしろい。
「シャンパンがはじけた瞬間の音を出して」なんて言うらしい。
とても具体的にイメージできる。
ぼくたちは、何かを食べておいしいと思うときや、音楽や絵画などを鑑賞するとき、感覚的な右脳を使っているのはよく知られているが、同時に、言語を司る左脳も働いているという。
右脳だけではあいまいな感覚が、左脳で言葉と結びつくことで、明確な記憶となり、感動を生み出したりする。
ワインのソムリエも、「夏の晴れやかな空」などと、ワインのテイストを表現するが、爽やかとか、甘いとか、感覚的なあいまいさがぐっと具体的になってくる。
コーヒーの味や香を評価するカッパーも同じである。
言葉が、感覚や体験や感動を強化している。
言葉による治療が医療のなかにもあるように、音楽のなかにも言葉が存在しているのだと思う。

音楽は、ぼくたちの右脳に揺さぶりをかけてくれるが、ちょっとだけ言葉で表現してみる努力をしてみると、深いところで感動を味わえるのではないか。

しばらく城之内ミサの音楽を聴いていると、八ケ岳の裾野から太陽がのぼってくる時間になった。
彼女の音楽は、静かで穏やか。
だが、まさにこの太陽がのぼってくるような、希望に満ちた空気を含んでいる。

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