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2010年2月21日 (日)

鎌田實の一日一冊(53)

『クローチェ1866-1952』(倉科岳志、藤原書店、3780円)

読みたかった本が出た。

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クローチェについては、ファシズムと戦ったイタリアの知の巨人ということだけは知っていた。
クローチェはファシズムは批判したが、政治的な文脈のなかでファシズムと戦ったというよりは、彼は自由主義者で自由を守りたかったということらしい。
ファシズムが自由を認めなかっため、ファシズム批判をした。
そういう意味では、自由主義という主義が自由を守らないとしたら、彼は自由主義にも批判をしたと思われる。
この本のなかの自由論はなかなか鋭い。

クローチェはファシズムを批判するだけでなく、アカデミズムに対抗した。
当時のアカデミズムは、専門分化しながら進化する方向にあった。
それに対して、彼は、統合の学を目指す思想家であった。

医学はまさに専門分化して進化してきた。
近代医学は、臓器ごとに分化してデータを集積し、あいまいな人間関係の要素を排除することによって成立した。
関係を切って、現象をみる。そのたくさんの現象をみることによって普遍性を導いている。
これが、科学的な方法論である。
しかし、医学は普通の科学とは違う。
人間の関係をいれないでみていくことは、はたして人間にとって役に立つ医学になるのだろうか。

クローチェは医学のことを言っているわけではないが、彼のアカデミズムへの批判がまさに医学にも、そのほかの科学にも、反省を促す。
詩やレトリックなどの文体も、非科学的とせずに、科学的な統合の学のなかに含まれるのではないかとクローチェは考える。
「全体をみる知」をホンモノの知と考えたのである。
そうすることによって、大衆先導的なナショナリズムとも戦えると考えた。

クローチェの自由論はなかなか優れていると思う。
重い本を読む勇気のある人にはおすすめである。

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