メタボ健診の腹囲に根拠なし
厚生労働省研究班が、心筋梗塞や脳梗塞の発症の危険性を明確に判断できないとする結果をまとめた。
現在の腹囲基準、男性85センチ、女性90センチ以上に科学的根拠はない。
そのとおりなのである。
それはこのブログでも前から言ってきた。
内臓脂肪から血圧を上げる物質や血糖値を上げる物質、高脂血症を起こす物質が出ていることは科学的にはっきりしているので、腹囲がまったく意味がないわけではないが、腹囲だけを問題にしても、解決するとは考えにくい。
まず、腹囲の基準が必須条項で、その上に脂質異常や高血圧、血糖値が高いことのうちの2つ以上を満たすと、メタボリックシンドロームという診断基準が作られた。
この診断基準がおかしい。
腹囲も、脂質異常や高血圧、血糖値が高いことと同じ程度のリスクと考えるべきで、腹囲だけを第一の必須条項として、腹囲が減った、増えたと一喜一憂するような注目の仕方はおかしい。
メタボリックシンドロームという考え方はいいが、メタボ健診の診断基準とその進め方に、国が振舞わされたと思う。
健康づくりは、本人にどう「行動変容」を起こすかということが大事で、現在のメタボ健診では「行動変容」を起こりにくくしている。
たとえば、健診率が重要視されて、健診率が低いとペナルティーが科せらるというのは、健診してしまえばいいという発想につながる。
今年度の速報をみると受診率は、目標35%に対して、実際は30%。
健診指導率も、目標25%に対して15%しか達していない。
全国的にみれば、数字上、メタボ健診は敗退している。
なおかつ、「行動変容」を起こさない健康指導になっている。
一人ひとりが健康のため生活の仕方を変えなければならないのに、数字にこだわり、その数字の目標も達成していない。
目標設定が疑問である。
女性の腹囲が90センチ以上とゆるく、世界の基準からずれている。
同時に、メタボの定義と診断基準とつくった構成メンバーの医師11人全員に、2002年から04年の3年間に、メーカーから多額の研究補助費が贈られた。そういう人たちが診断基準をきているのである。
ある意思が働いているとかんぐられて仕方ない。
診断基準をどう設定するかによって、薬の使われ方は圧倒的に変わる。
健康づくりのための「行動変容」よりも、薬が使われるような流れができているのではないか。
さらに、現在の診断基準では、腹囲がそれほど大きくない人では、糖尿病の予備軍や高血圧症のボーダーラインであっても、以前のように「行動変容」を起こさせるような、生活指導がなされなくなっている。
メタボ健診が行われるようになってから、がん検診の受診率も一気に低下している。
このメタボ健診の導入は、日本の健康づくりは大きな被害を起こしたと思われる。
厚生労働省の研究班が3万2000人に行った調査が、こういう結果になるということは、何ヶ月も前からうわさとして聞いていた。
女性の腹囲基準が90センチから80センチに変わることになるが、逆に、この考え方全体の信頼性が失われて、そんなものだったのかと思われると、ますます国民の行動変容は起こりづらくなっていく。
制度設計に、科学的根拠があるかどうか、信頼性は大事である。
政権も交代したので、メタボ健診が意味があるかどうか再検討する委員会をつくったほうがいいと思う。
その検証委員会の委員には、もちろん製薬会社からお金をもらわない人を選ばなければならない。
メタボ健診に巨大なお金を投入する自治体の労力や、企業の健康管理をしている労力は大変なものである。
糖尿病や高脂血症、高血圧などの人たち一人ひとりに、行動変容が起こるような、本来の健診のあり方を問い直してもらいたい。
前政権がどさくさまぎれにやった後期高齢者医療制度とこのメタボ健診は、厚生行政のなかでは大きな誤りだったと思う。
足の引っ張り合いやうらみではなく、本当に必要なことのために、軌道修正していく必要がある。
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