つながる命
今年の冬も、諏訪湖に御神渡(おみわたり)がなかった。
ぼくの『がんばらない』のなかに、御神渡というエッセイがある。
92歳で大腸がんの手術をして、100歳まで野良仕事を手伝っていたミチさんの話だ。
100歳で脳卒中になり、ぼくが往診するようになった。
はじめて往診に行ったとき、「はじめまして」と言うと、ミチさんははじめてではないよと言った。
ミチさんの夫うしおさんを36年前、ぼくは看取っていた。
ミチさんは、村の人に昼花火をあげてもらい、100歳の長寿を祝ってもらった。
その娘さんがかれこれ80歳。
ぼくの外来にやってきた。
地域医療のおもしろいところ、すごいところは、ずっと続いている命にかかわらせてもらうことだ。
ダイナミックな仕事だと思う。
このエッセイのなかに、プエプロ・インディアンの老人の詩を引用した。
「今日はとても死ぬのにちょうどよい日だ。
あらゆる生あるものが
私と共に仲よくしている」
こうやって人間は、最後まで自分の命を生き、次の世代の人たちに命を渡していく。
生きるということはこういうことだと思った。
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