« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »

2010年5月

2010年5月31日 (月)

鎌田實の一日一冊(63)

『神の手』(久坂部羊著、日本放送出版協会)

現場では、安楽死がいろいろな形で密かに行われている。
Photo安楽死法の制定をもくろむ政治家や医師団体。
医療崩壊の現実をうまく絡めながら、事件が展開されていく。

著者は、医師で作家。
医療ものの推理小説がブームであるが、なかなかの推理小説だと思う。
上下巻と長編だが、おすすめである。

~~~★~~~★~~~★~~~

『空気は読まない』(集英社)に書いた柏原病院の和久先生からメールが来た。
『空気は読まない』が売り切れで、病院の売店においてもらおうとしたが、第二版が出ないとだめということだ。

読みたいのに、手に入らないという方、申し訳ありません。
大都市の大きな書店には少し残っているようです。
お早めにお求めください。

|

2010年5月30日 (日)

鎌田實の一日一冊(62)

『絵本処方箋』(落合恵子著、朝日新聞出版)

自分の弱さに腹に立ったら、こんな絵本がおすすめ、という具合に絵本が紹介されている。
たとえば、昨夜のケンカを持ち越さないために『ふたり』。

Photo_2

よそのことなど関係ないと思っていたら、『バスラの図書館員』(ジャネット・ウィンター著、晶文社)。
これはぼくもおすすめ。

2003年春、アメリカを中心とする連合軍がイラクに侵攻した。
バスラの女性の図書館員は本を守ろうと、3万冊の本を隣のレストランや自分の家に隠した。
図書館は破壊されたが、本は守られた。

落合恵子さんは、この図書館員は発作を起こして心臓手術をしたが、その後、どうしただろうかと心配している。

Photo_4

実は、その図書館員は生きている。
図書館の館長になった。
腰痛症があり歩きずらくなっていると聞き、ぼくはバスラの病院で院内学級の先生をしているイブラヒムを通して、コルセットをプレゼントした。

どんな絵本を読んだらいいのか、子どもにどんな絵本を読んであげたいか、迷っている人に人にはおすすめである。

|

2010年5月29日 (土)

リカア先生の講演

イラク人の医師リカア先生は、JICAの制度で信州大学の大学院に来て、血液学を学んでいる。
来日してもう1年、日本の文化にも慣れたようだ。

Photo

会話も日本語が6割くらい。あとは英語を交えて話す。
御柱祭のときに、ご招待すると、はっぴを着て、とても喜んでくれた。

そのリカア先生が、6月11日、北海道工業大学で講演する。
タイトルは、「イラクと平和への夢」。
戦火のイラクで多発する小児がんの実状を話していただく。

画面上をクリックすると拡大します→

リカア先生が、松本以外の地域で講演するのは珍しい。
こんなふうに、ときどき全国から講演に呼んでもらうと、日本のいろんな地域を知ってもらう機会になると思う。
イラクの子どもたちについて知る、貴重なチャンスでもある。
ぜひ、リカア先生を講演に呼んでいただきたい。

6月11日の講演会の聴講希望者、リカア先生の講演開催にご興味のある方は、JCFへお問い合わせください。

|

2010年5月28日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(41)

「RAILWAYS(レイルウェイズ)」

今週末からロードショー。
日本映画が人気とよく言われるが、なるほどと思わせる映画である。

49歳。男は大企業で出世をしていく。Photo_2
最後の出世の条件は、仲間をリストラをすること。
男は疲れていた。
家族との関係もぼろぼろであることに気がつく。
お母さんが倒れる。
今の生活を見つめなおす。

40代後半は思秋期といわれる。
思春期のように、じたばたするときが来るという。
ぼくも48歳のとき、パニック障害になった。
妻のサトさんに、震える体を抱きしめられて、何とか支えられて時期がある。
自分の行く道を変えようと思ったのは、このときだった。
思秋期だったと思う。

映画の主人公は、モーレツ社員から、故郷、出雲の一畑電車の運転士に応募する。
出雲に行ったときに、この電車を見た。
なんとも、マッチ箱のようにかわいい電車である。
創業100年、地域の学生やお年寄りたちの大切な足になっている。

ローカル線の車窓から見る景色が美しい。
そこでゆっくり生きて死んでいく人たちが美しい。
静かな輝きを発している。

徐々に家族の絆が取り戻されていく。
男は、人と人とのつながりや人と自然のつながりのなかで、断ち切れそうになっていた心と体がもう一度、結びなおされていく。
映画は、人と人、人と自然、体と心をみごとにつなげていく物語である。

49歳の男を演じるのは中井喜一。好演している。
ちょっと疲れている人、つまずいている人、ほっとしたい人、見てはずれはないと思う。

|

2010年5月27日 (木)

福井から

昨日は、産業衛生学会の講演で、福井に来ている。
講演が終わり、ほっと一息。

日本海の荒波を見ながら、おいしいお刺身を食べ、温泉に浸かって疲れを取った。

1005261image5771005262image578_2

今日は、葉加瀬太郎さんと対談。
日本テレビのニュース・エブリィにも出演する。

|

2010年5月26日 (水)

この人に会いたい(24)柳田邦男さん

いつも日本チェルノブイリ連帯基金に、あたたかで、大きなご支援をいただいている。

新潮文庫の『壊れる日本人再生編』の解説を、鎌田が書かせてもらうという光栄なことがあった。Img_1692 おもしろい本なので、ぜひ、読んでいただきたい。

昨年12月に出された『新・がん 50人の勇気』(文芸春秋)は、ベストセラーになった『がん 50人の勇気』の新しい本。
ぼくが『空気は読まない』(集英社)を出すきっかけになった、山本七平さんのがんとの闘病が書かれていて興味深い。

柳田さんから、3冊の絵本をいただいた。
柳田さんは、外国の本も含めて、月30冊の絵本を読んでいるという。
そのなかから、どうしてもいう本は、柳田さん自身が翻訳している。
『少年の木 希望のものがたり』(マイケル・フォアマン著、岩崎書店)は、命の再生が語られている。
『でも、わたし生きていくわ』(コレット・ニース=マズール著、文渓堂)。
つらい思いを抱える子たちに、勇気を与えてくれる絵本である。
もう一冊は、『その手に1本の苗木を マータイさんのものがたり』(クレア・A・ニヴォラ著、評論社)。
モッタイナイでノーベル賞をとったマータイさんの物語である。
Photo 絵が美しい。
ニヴォラには『あの森へ』(評論社)という美しい絵本がある。以前、柳田さんからすすめられて読んだことがある。

柳田さんからは、教えられることが多い。
この方にお会いすると、命のことや生きることを考えさせれる。
いつも大切なことをサジェスチョンしてくれる。

|

ドリームフェスティバルinグアム2010(2)

バリアフリーツアー・グアムのスクリーンショー第2回です。 ドライブ仕立ての楽しい映像です。

|

2010年5月25日 (火)

28日ラジオ出演

28日、「大沢悠里のゆうゆうワイド」(TBSラジオ、8.30~13.0)に出演することになった。
今回は、原田泰治さんと一緒だ。

1005211image567

悠里さんの番組は久しぶり。
4月の御柱の里引きのときには、木落としを見に、諏訪に来てくれた。

ぜひ、ラジオを聴いてください。

ちなみに、28日の夜は、さだまさしさんたちと一緒に、原田泰治さんの70歳のお祝いをする。
楽しみである。

写真は、諏訪中央病院にグリーンガーデン。季節は一気にさわやかな初夏

|

鎌田實の一日一冊(61)

『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』(大熊一夫著、岩波書店)

精神病院をなくして、全土に公的地域精神保健サービス網を敷いたイタリア。
精神病院を使わずとも、重い統合失調症の人たちを支えることができることを証明した。

イタリアの第一回フランコ・バザーリア賞受賞記念作品。
受賞したお金を利用しながら、著者はイタリアに長期在住して、イタリアの精神科治療の改革を克明にこの本につづった。

Photo

1970年に朝日新聞に「ルポ・精神病棟」を連載。
アルコール依存症を装って、精神病院に入り込み、日本の閉鎖型の精神病院の内部を社会に明らかにした。
大ベストセラーになった。

1985年に『新ルポ・精神病棟』を書いた。
まだ、日本の精神医療の問題は解決されていない。

なぜ、閉鎖型の精神病院はいらないのか。
いくつかの理由を明確にしている。
人道主義的な理由。
精神病院は人間をモノとして扱うので、個性、自律、独立、個人の責任感などどの基本的人間性が損なわれる。
精神病院の利用を減らすことで、人間性の剥奪を防ぐことができる。
倫理的な理由。
精神病院は医原性疾患である施設症や社会的挫折症候群を引き起こす。
病院を利用しなければ、そうした症候群の発生率を最小限にすることができる。
経済的な理由。
入院医療には、精神保健関係費の70%が支出されている。
病院の利用を減らせば、地域社会のノーマリゼーション事業の推進にエンジンがかかる。
科学的な理由。
入院医療と、それに代わるさまざまな形態の医療を比較した研究では、20中19の報告が、入院に代わる治療携帯のほうが、効果的で経費が少なくてすむと明らかにしている。
しかも、入院治療は再び治療を受けようしないが、それ以外の治療を受けた人は治療を受けようとしている。

日本人は、統合失調症などの精神障害は入院治療しかないと思いこみ、地域精神保健サービスという精神医療のあり方を知らない。

『ルポ・精神病棟』から40年。
まだ、日本は精神病院を捨てていない。
しかし、大熊は、新しい芽が出ていることを書いている。
日本の精神科医療をどうすべきか、いろいろなヒントがある。

よい本です。
ぜひ、お読みください。

|

2010年5月24日 (月)

そらまめ

Img_2114

ぼくは、そらまめが異常に好き。
ご飯ができる間のほんのちょっとの時間、そらまめをゆでてもらえるとなんとも幸せな気持ちになる。

今年も、千葉県の館山からそらまめが山のように送られてきた。
東京医科歯科大学で恩師だった、故篠塚教授の奥様が送ってくれたのだ。
ありがたい。

Img_2115

今年は、ちょっとさびしくなる手紙がついていた。

85歳になります。
自分のことも十分ではなくなりました。
最後のそらまめになるかもしれません。

そんなことが書かれていた。
おそれ多い、もったいない、ありがたい。

ぼくはたくさんの人に大切にされてきた。
そのご恩をお返しすることも少ない。
ほんとうにありがたいと思いながら、手を合わせるような気持ちで、大好きなそらまめをしみじみといただいた。

|

2010年5月23日 (日)

ドリームフェスティバルinグアム2010(1)

2010年5月16日~20日。病気のある人や障害のある人約80名が、鎌田實とグアムを旅した。

車イスで海に入ったり、
おいしいものを食べたり、
美しい景色を見たり、
ドルフィンウォッチングをしたり。

楽しい思い出の名場面をスクリーンショーでご覧下さい。(全3回)

病気があっても
障害があっても
旅をあきらめない。

|

温泉で旅の疲れをとる

昨日は、蓼科東急リゾートの鹿山の湯へ。100522image572_2
先日の、障害や病気を抱える人たちとのグアム旅行は楽しかったが、やはり疲れないといえば嘘になる。

テニスで汗を流し、いつも行くインド料理「ナマステ」で腹ごしらえ。
おいしいほうれん草のカレーを食べて、さらに汗を流した。

その後、ゆっくりと鹿山の湯の温泉につかった。
久しぶりの温泉。
極楽である。

|

2010年5月22日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(40)「あの夏の子供たち」

フランス映画。監督は、この映画が2作目のミア・ハンセン・ラブ。

映画のプロデューサーが製作途中で自殺する。Photo
3人の小さな娘たちをおいて。
妻と娘たちは、突然の父親の死の衝撃を乗り越え、その映画製作事務所を引き継ぎ、この最後の映画を完成させたいと動き出す。
悲しみのなかから再生していく姿を、美しい光と影を使いながら、詩情豊かに物語がつくられていく。
子どもたちのまぶしいほどの輝きは、最後に流れるケセラセラの歌とマッチしている。

ぼくが監督なら、残された家族が製作途中の映画を完成させていくところに、もうちょっとドラマチックな要素を加えたのにな、と思わないではないが、とにかく、美しい映画である。
2009年のカンヌ映画祭で絶賛されている。
ちょい、おすすめである。

~~~★~~~★~~~

ゴールデンウイークおすすめの映画として、このブログでも、テレビでも「オーケストラ!」を推奨した。
大好評だという。
通常、公開されて3週間たつと、客足が減るものだが、3週目に来場者3万5000人を記録した。
アカデミー賞などをとらない限り、あまりないことのようだ。
その映画が、興行収入1億円を目の前にしている。
間違いなく、1億円を突破するだろう。
大ホームランだ。

ちょっとお手軽で脇が甘い映画だが、いい。
見ていただければわかる。

チャンスがあれば、ぜひご覧ください。

|

2010年5月21日 (金)

24日は「こころの遺伝子」

24日は「こころの遺伝子」(NHK総合、午後10.0~)に出演する。
西田敏行さん司会の番組。Pic044

鎌田實が、患者さんからどのように影響を受けてきたのか、鎌田の「こころの遺伝子」を探る。

たくさんの人たちに支えられ、教えられて生きてきた。
そのことをあらためて感じ、スタジオで目頭が熱くなった。

ぜひ、たくさんの人に見ていただきたいと思う。

~~~

現在発売中の週刊ポストの連載「じたばたしない」には、ヤマネのばあとその孫、ひ孫とのかかわりを書いている。
ヤマネのばあは、『がんばらない』に書かせてもらった。
そのヤマネのばあから、4代の家族とかかわれるというのは、地域医療の醍醐味だ。
地域の人が、ぼくに伝えてくれた「こころの遺伝子」の物語。

ぜひ、お読みください。

写真は、西田敏行さんが、ドラマ「がんばらない」の撮影のため、諏訪中央病院に来たときのもの

|

2010年5月20日 (木)

旅の感動を忘れない

昨日のランチパーティーにあわせて、鎌田實の講演会が開かれた。

Guam41_2

新刊「よくばらない」の中の詩、「1%誰かのために生きる」

「あたたかない心の中に、邪悪な心があったり、
弱い心の中に強い心があったり、
やさしい心の中に、鬼がいたり、
人間の心は、まだらだ」

という詩を読んだ。

Guam46

旅をしたときの感動を忘れないこと。
日常に戻った時に、その感動の繰返しを続けること。

Guam43グアムの夕日に感動した心。
東京に戻っても、ビルの隙間に落ちる夕日に、3秒でもいいから「わあ、キレイ」と思うことが大事なのだと伝えた。

仲間をつくること、
家族を大切にすること、
毎日の生活の中にギスギスしたときにも、
心と体を温めることが大切だと話した。

1時間20分ほどの講演を終えて、表彰式をした。

Guam48

11人の人にぼくの本をプレゼントした。

Guam45

91歳の女性。背筋がピンとして、歩き方も若々しい。
お化粧は、今回の旅行にも一切もってこなかった。
化粧品がなくても、こんな若々しい肌は保てるんだ。

ぼくが「若さの秘密はなんですか」と聞いた。
「悪いことは苦にしないこと。
私バカだから、余計なことを考えないようにしています」
自分も91歳になったとき、こんな風にしゃんとしていたいものだと、つくづく思った。

Guam44ついでに、100歳の権四郎さんに、長生きの秘訣を聞いた。

「あんまり先のことは考えないようにしている。今日何やるかだけ。
うんと未来のことを考えても、3日以上先のことは考えないようにしている。

今回の旅は楽しかった。
100歳のお祝いもうれしかった」

感謝しながら、なんとかなるさと思って生きているみたいだ。
これが健康で長生きの秘訣かもしれない。

人生のスタートで躓いていた22歳の若者も、
晴れやかな顔でぼくの「幸せさがし」(朝日新聞社)をもらってくれた。
「うれしい」と言ってくれた。
若者に幸せを掴んでもらいたいと思う。

いろんな病気を持っている人たちが、
彼女にずいぶん心配りをしていた。
そのうちに彼女が障害のある人に心配りをしだした。
支えたり、支えられたりなんだなあと、しみじみ思った。

|

2010年5月19日 (水)

海に入る

80人ほとんどの人が、砂浜にやってきた。

Guam32

100歳の権四郎さんもやってきた。
アロハがかっこいい。
好奇心のかたまりだ。
なんでもやりたがる。
じっとしていない。
これが長生きの秘訣のようだ。

Guam33

上山さんは、介護度5から介護度2に改善した。
このご夫婦とは6年間つきあってきた。
今年も進歩することがあった。
浮く車いすから、今年は自分で浮輪で入りたいと言い出した。
車いすから脱出に成功。浮輪で海をたのしんだ。
そしてなんと、そのまま砂浜へ歩いて上がってきた。
介護度5の寝たきり老人が、歩きづらい砂浜を、杖なしで歩いたのだ。

人間にはどんな状態になっても可能性があることを示している。

Guam34

詩人の今井くんも海に入った。
うれしそうなVサインを連発した。
トーキングボードなしにはコミュニケーションが難しいが、
顔と指で幸せを表している。

目の見えない石井さんも海に入った。
どんな人も人生を楽しむことができる。
彼女は、40歳で中途失明。
中途失明は、感も養えないので、とてもつらい経験をする。
しかし石井さんは明るい。77歳。心筋梗塞もしたという。
自分は負けないという。
生きている限り、人生は楽しむ。だから、グアムにやってきたという。
このツアーには3年ぶりの参加だ。

Guam35

18歳のとき、脳間出血を起こし、四肢麻痺と言語障害を起こした青年も、海に入った。
彼も車いすから浮き輪に移動したいと要望が出された。

Guam36

5分後、ぼくが陸に上がるかと聞くと、
もう少し海にいたいという。計算外。
サポーターがあわてて、彼の顔や肩に日焼け止めクリームを塗る。

10分ほどしてぼくが
「上がろう」と声をかけた。
ゆっくりとした言葉で
「アガラナイト、イケナイデスカ」
と聞いてきた。
「上がらなくていい」とすぐに答えた。
いつまでも海にいたいという。
自分の希望を口にだせることが大事なのだ。
「タノシカッタ」と満足そうだった。

Guam31

障害者の車いすを押して陸にあがると、
「おう、カマタ」という声がかかった。
小学校の同級生だ。佐藤俊一。
2週間前からグアムに来ているという。
もう定年退職した。
「おまえのこと、グアムの新聞に載ってた。
顔が見たくて会いに来た。
感動したよ」

こんなところで、昔の同級生に会うと、うれしくなる。

旅っていいなあ。

※明日、5/20(木)17:00~「NewsEvery.」(日本テレビ)に出演します。
このたびの模様は、翌週5/27(木)同番組にて放映します。
お楽しみに…。

|

2010年5月18日 (火)

トラベルサポーター

Guam25バリアフリーツアー3日目。
慰霊の旅や市内観光へ分散した。

100歳の権四郎(ごんしろう)さんが、般若心経をよみあげた。
みんなが感動した。
とにかくすごい100歳である。

Guam26

それをサポートするトラベルサポーターたちとの記念写真を撮った。

Guam23

その中の一人の女性は、二年前、上諏訪温泉にバリアフリーツアーにご主人を連れてやってきた。
脳梗塞に倒れ、すでに30年近く介護をしてきた。

バリアフリーツアーの10日後に、もともとわかっていた腹部大動脈瘤が破裂して亡くなった。
十分に介護してきたつもりはあるが、心が寂しかった。
誰かの役に立ちたいと思ったという。

Guam24

Guam21

もともと夫の介護をするため、ヘルパー二級をとっていた。
今度はボランティアとして、困っている人のために、トラベルサポーターになろうと、やってきてくれた。

Guam22こういうあたたかな人がいるのだ。

今回のツアーも、四割は自己負担をしている。六割が会社負担。

このトラベルサポーターのおかげで、重症な障害をもった人たちが、
旅行中、ホテルのお風呂に入るのをサポートしたり、
イルカウォッチングができたり、
慰霊の旅をすることができる。

明日はいよいよみんなで海に入る。

海の夕日がきれいだったので、たくさんシャッターを切った。

|

2010年5月17日 (月)

バリアフリーツアー2日目

Guam07

バリアフリーツアー2日目。
グアムから報告です。

Guam10 Guam09

イルカを見に行くツアーでは、運よく30頭ほどのイルカに出会い、大喜び。

別の一団は、ハマモトフルーツワールドへ。

Guam15Guam17

ハマモトさんは、四国で生き詰まり、銀行マンになるのをやめて、グアムへ渡航。
自分の人生を開拓した。
苦労の末、ジャングルを切り開き、フルーツ農園を作った。

客車3台を引くトラクター、トラムという着想がすごい。
Guam16障害者もOKとのことで、みんな大喜び。
100歳のおじいちゃんも、車いすの人も、このトラムならジャングルに入れる。
ジャングルは、横井しょういちさんが27年間隠れていた場所にほど近い。
横井さんの苦労がしのばれる。

Guam13

目の見えない方と23歳の女の子。
ヤシの実ブラをつけて大はしゃぎ。

Guam14

山の上で、100歳のおじいちゃんと記念写真。
100歳で元気な理由がよくわかった。
とにかくよく食べる。
とにかくよく歩く。
2回車いすを使ったが、それ以外は断固として車いすを拒否する。

Guam12ジャングルを一周すると、お昼ごはんを食べ、南国フルーツ食べ放題。
ブラックベリーチョコレートジャム、ビリンビ、パンの実など、
食べたことのないフルーツだらけだった。
ヤシの実をわさび醤油で食べたのがおいしかった。

Guam11_2

街に戻ると、みんなで免税店へ車いすでお買いもの。
一番若い参加者は、23歳。
一番の高齢者が100歳。

夜はサンドキャッスルディナーショー。
マジックあり、ダンスあり、アクロバットありのショーを楽しんだ。

Guam08

ツーショットで写真を撮った91歳のおばあちゃん。
91歳とは見えないほど美しくて若々しい。

Guam06

みんな問題を抱えている。
精神的な問題だったり、がんだったり、障害であったり…。
それでも、なんとか歯を食いしばって生きていると、
一瞬明るい日差しが差し込んでくる。
その一瞬の明るい日差しが旅なのではないだろうか。

続きを読む "バリアフリーツアー2日目"

|

2010年5月16日 (日)

グアムにやってきた!

Guam02_2今日からグアムへやってきた。

参加者は80人。
最高齢者が100歳。

脳卒中になった人や、
がんと闘っている人、
精神病と闘っている人が参加している。

目の見えない人もいる。
かぜを感じたり、においを感じたり、
ふれることで何かを感じるという。

リクライニングの車いすを使用して、
重度障害にもめげず、詩を書いている青年。

重いパーキンソン病の方もいる。

Guam04頸髄損傷で一度は寝たきりになった人も、
この旅であるけるようになった。

要介護5→2になった人も、
リピーターとして参加している。

美しい海。
すこし湿気は強いけど、豊かな自然を満喫。

夕暮れから、ハイヤットホテルのディナーショーでポリネシアンダンスを見ながらバーベキューを食べた。

Guam05昼間の海もきれいだが、
夕暮れはもっと美しく、
夕日が沈んだ後の夜の海がまた美しい。

一人ひとり、みんなが元気になるための旅の第1日目。
美しさとおいしい料理でみんな満腹のようだった。
Guam01_2Guam03

|

ドリームフェスティバル イン グアム

障害や病気があっても、旅をあきらめない!
今年も、鎌田實とグアムへ行こう「ドリームフェスタィバル イン グアム」の日がやってきた。
約80人が参加。
介護する人も、される人も、病気を抱える人も、その家族も、みんなが日常を飛び出して、4泊5日の旅を楽しむ。

昼過ぎに成田空港を出発し、グアムに到着。
これから、できるだけリアルタイムでグアムの様子をご紹介していきますので、お楽しみに!!

1005161image564

1005162image565

1005163image566

|

新潟のイタリアン

Img_1782

うわさのB級グルメ、イタリアンを食べた。
スパゲティーではない。
焼きそばの上に、イタリアン風のソースがかけてある不思議なめんである。

チープな紙皿にのって出てきた。
トマトカレー風味380円というのを食べた。
うまい。

めんは、太めの焼そば。
もやしやキャベツの焼きそばの上に、エビチリみたいなものがのっているものもあれば、ホワイトソースやトマトソースがのっているものもある。
カレーがのっているカレーイタリアンというのもあった。
値段は320円から、と安い。

みかづきというファストフードのチェーン店などで食べることができる。
鉄板焼き屋やお好み焼き屋が、新しい感覚の焼きそばを出したらうけるのではないかと作ったようだ。
せっかくおいしいものなので、もうちょっと雰囲気がいいといいなと思った。
よそから来て、はじめて行く人は、ちょっと入りづらい。

しかし、安くておいしいのはたしか。
新潟に行かれたときには、焼きそばイタリアン、おすすめです。

|

2010年5月15日 (土)

この人に会いたい(23) 藤村俊二さん

「月刊がんサポート」の対談のため、藤村さんが経営している、南青山にあるO'hyoi's(オヒョイズ)というワインバーでお会いした。Img_4082
ヒョイ、ヒョイと嫌なことから逃げてしまうので、みんなから「おヒョイさん」と呼ばていれる。
優れた生き方の一つだと思う。

「がんばるなんて、カッコわるい」と、おヒョイさんは著書に書いている。
水鳥は、水面下で必死にもがいていても、水面の上では涼しい顔でスーッと渡っていく。
これがかっこいい生き方だ、という。
そうだ、そうだ、と意見が一致した。

ぼくも、「がんばらない」とかいいがら、実はがんばっている。
でも、がんばっているところは見せない。100430image542
100メートル走で全力で走った後、ぼくはまるでらくらく走ったような顔をしたくなるたちである。
父は、ぼくが全力で走っていないと思い、そういうぼくを好きではなかったのだろう。
でも、ぼくは全力を出していた。
全力を出していない顔をしていたかったのである。

藤村さんは、胃がんになっても、腹部大動脈瘤になっても、あわてなかったという。
なるようにしかならないと思っているようだ。
スーツにワイシャツ、チーフ、すてきなおヒョイさんのワインバーにぴったりのスタイルである。
生き方も、ファッションも、若い素敵な奥さんも全部おしゃれだった。

写真は、藤村さんが経営するワインバー「O'hyoi's」。イギリスから移築した内装はしゃれた空間

|

2010年5月14日 (金)

絵“足”紙作家

脳性まひ(CP)のふうちゃんが諏訪中央病院にやってきて、足でキーボードを弾いてくれた。
自分の詩集を読んでくれた。
しゃべるのも大変だが、声を絞り出すようにして読んでくれた。
P4191335

手はまったく使えない。
足で筆を持って字を書く。
その文字をみてほしい。
P4191338

P4191342

今、ふうちゃんは、書道家、絵手紙作家としても評判。
いや、本当は足でかくから、絵足紙作家と本人は笑う。

箸も、足でもって食べる。
ぼくたちからみれば、アクロバットのように見えるが、彼女にとっては当たり前のこと。
看護学生たちに「私の体は不自由だけれど、私は自由だ」と熱く語ってくれた。

|

2010年5月13日 (木)

カマタ御柱に乗る!2010年5月

7年に一度の奇祭、諏訪の御柱祭。 ニコニコ顔で御柱にまたがるカマタ。 祭は大迫力! 当日は、カマタが出演する日本テレビ「news every.」の撮影があり、 キャスターを務めるNEWSの小山くんも揃いのはっぴで参加した。

|

空気売買のいかがわしさ

温室効果ガスの排出枠売買については信用できない。
このことは『空気は読まない』にも書いた。
日本は、排出権取引よりも、科学技術の力でそもそもの温室効果ガスの排出を抑えるべきだ。
1005011image543 中国、インド、ヨーロッパなどが一方的に利益が上がるような仕掛けになっている排出権取引は、とにかく胡散臭い。

ウクライナ共和国では、前政権の不正が問題になっている。
温室効果ガスの排出枠を売却して得たお金を不正使用したとして、捜査されているという。

日本は、2009年までにウクライナから3000万トンの排出枠を購入し、200億円を支払っている。そのお金が、不正に使われたようだ。

ウクライナの政権交代に伴う権力争いのなかで、噴出してきた問題で事実はまだわからないが、日本の200億円がもてあそばれたのは不愉快でならない。
排出権売買は、もともと額に汗したお金ではなく、実体のないお金の取引。
いかがわしい取引があると、人間の心もいかがわしくなる。

写真は、ホテル諏訪湖の森の浴場から眺める、諏訪湖。いい景色、いい空気はプライスレス

|

2010年5月12日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(39)

「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」

モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の劇作家、ダ・ポンテの人生が描かれる。
ドン・ジョヴァンニは、このダ・ポンテと重なる。

Photo

ユダヤ人の親が、キリスト教に改宗。
詩人であり、劇作家であり、教会とベネチアの腐敗を鋭くつく評論家でもあった。
女性とギャンブルに明け暮れ、ベネチアを15年間、追放される。
流れていったウイーンで、モーツァルトと出会い、「フィガロの結婚」などのオペラを共作する。
ダ・ポンテの生活と、オペラのドン・ジョヴァンニが、映画のなかで巧みにからまっていく。
クラシック音楽好きの人にはたまらない映画である。

宗教家や貴族のただれた生活ぶりが描かれている。
18世紀後半、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」が上演されたときには、きっとこんなだっただろうと思わせる。
放蕩者の映画であるが、放蕩と芸術がつながっていることがよくわかる。
罰せられるほどの放蕩者になってみたいものだ。

|

2010年5月11日 (火)

鎌田實の一日一冊

『牛乳で作るアイスクリーム』(島本薫著、文化出版局)・・・・(59)
低脂肪で体にやさしいアイスクリームの作り方が書いてある。
きれいな本で、アイスクリームが大好きなぼくは、よだれが出そう。
作り方を見てみると、不器用なぼくでも作れそうな感じがする。

Photo

しかも、プチトマトアイスや枝豆アイス、スイカのシャーベットなど、なんともおいしそうなアイスが出てくる。

島本さんはタルトの本など、たくさんの本を出している。
彼女の弟こうちゃんとは、友だちだ。
ハワイに行ったとき、海ガメがやってくる夕日海岸で一緒に泳いだ。
ジャズのライブハウスに行って、2人でワルノリして、ジャズのセッションに加わったりした。
そのこうちゃんのお姉さんが、本を出すたびに送ってくれる。
ケーキはさすがに作るのは難しそうだが、アイスならぼくでも作れそうな気がした。
いつかアイスを作ったら、このブログで紹介したいと思う。

『里山ビジネス』(玉村豊男著、集英社新書)・・・・(60)
みんなにうまくいくはずがないといわれたワイナリーとレストランが成功した。
玉村さんは「里山ビジネスの究極の目標は、小さな農業をやりながら、小さな観光の対象として、小さな独立王国をつくることです。そこで働く全員がフリーランスとして独立できるような技量をもつマルチな職人集団として、互いに連帯することで成立する一つの世界」
と語る。

これが里山ビジネスを成功させるコツなのか。
Photo_3 一人ひとりが高い技術をもち、職人集団のなかで自由が守られると、組織としての経営がうまくいく。
玉村さんのレストランは、夏などは予約をしないとなかなか入れない。
ワインも年々評価が高まっているという。
里山ビジネスは、「極力、成長拡大をせず、維持をしていくような組織にしたい」という。
卓見である。
年をとっても、効率重視によって切り捨てられず、それぞれが一芸をもっているかぎり、仕事をする権利を与えられている、そんな里山レストランをつくりたいという。
続けることに意味があるのだという。
効率の悪い山のなかで、なぜビジネスが成功したのか、この本にはその秘密が書かれている。

~~~★~~~★~~~

『いいかげんがいい』(集英社)がさらに1万部増刷で、12万部になった。
このシリーズの第2弾『空気は読まない』が出たことで、『いいかげんがいい』に再び、火がついたようである。
相乗効果があるようだ。
現在、第3弾を準備中。お楽しみに!

|

2010年5月10日 (月)

地下の野菜工場

Img_1519

安奈淳さんと日本呼吸器病学会の市民公開講座で講演した。
会場は、京都国際会議場。
前の晩、祇園のおすし屋さん「なか一」で、たけのこなどの旬の料理をおなかいっぱい食べた後、おすしを食べて満足。

当日、講演は午後からだったので、会場まで車で5分くらいのところにある、フランス料理のレストラン・フェアリーエンジェル北山店に行った。Img_1537
地下に野菜工場があるというお店で、以前から行きたいと思っていた。

野菜は、地下のクリーンルームで、水耕栽培されている。
植物が育つには光と温度が大事だが、LEDライトを使って、人工的に昼と夜をつくっている。
もちろん完全な無農薬。
今は、水菜やレタスなどが作られていたが、種をまいて、だいたい14日で食べられるという。

レストランでは野菜は食べたいだけおかわりができ、ドレッシングかオリーブオイルを選べる。
やわらかくて、みずみずしい。
野菜だけでも食べる価値がある。Img_1523
今月12日発売の『ウエットな資本主義』(日本経済新聞出版社)では、エネルギー問題や食の問題を書いていて、野菜工場のことも簡単に取り上げている。
イラクやシリア、ヨルダンなどの砂漠に、こういう野菜工場をつくったらおもしろいなと思う。

ランチでは、鯛と野菜を組み合わせた料理など、いくつものの斬新な料理が出てきた。
店の雰囲気もいい。
地下の野菜工場は、希望すればみせてもらえるので、ぜひ見学してみるといい。

|

2010年5月 9日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(38)「抵抗 死刑囚の手記より」

以前、「海の沈黙」という映画を紹介したが、「抵抗 死刑囚の手記より」も1956年のフランスの名画である。
監督はロベール・ブレッソン。
ドイツ軍の占領下、レジスタンス派のフランス軍中尉が、ドイツ軍につかまり、独房から脱走を試みる物語である。
牢獄の外のことはすべて省かれているが、実に魂がふるわされる映画になっている。
占領されてもあきらめない強い意志がある。

Photo

ジャン=リュック・ゴダール監督が、「ドストエフスキーがロシアの小説に、モーツアルトがドイツの音楽に占める位置を、ブレッソンはフランス映画に占めている」と語っている。
なるほどと思う。
フランス映画的なのだ。
ぼくはポーランドのアンジェイ・ワイダが好きだが、「灰とダイヤモンド」などはやはりフランス映画とは違う。
ゴダールが言うように、「抵抗」にはフランス映画の伝統のようなものが流れ、それがゴダールの作品へとつながっていくのがわかる。

ヨーロッパは一つの国になろうとして模索しているが、それぞれの国の伝統や文化はみんな違う。
岩波ホールでは、「海の沈黙」や「抵抗」などの古い名画を掘り起こしている。
現在は、岩波ホールでの上映は終り、各地でいくつか上映が予定されているようだ。
映画というと、どうしても新しい作品に目がいきがちだが、世界が認めた名作もいい。
発表当時、何らかの事情で日本では公開されなかった映画をみられるというのは、映画好きにはたまらない。

|

2010年5月 8日 (土)

この人に会いたい(22)玉村豊男さん

Img_1509

エッセイストで画家の玉村豊男さんは、都立西高の先輩である。
3年違いなので、同じ時期に学校に通ってはいなかった。
東大の仏文を出て、フランスに留学。
そのままフリーの生活に入ったという。

都立西高は自由な空気があって、ぼくも含めて“変わり者”が多い。
同級生の好村兼一君は、剣道でフランスに渡り、そのままフランスに住んでしまい、フランスで日本の時代小説を書いている。
『世界がもし100人の村だったら』の池田香代子さんも、同級生である。
玉村さんも、その変わり者の一人。

農業をはじめたのが46歳。
ブドウを育てているうちにワインがつくりたくなり、ほかのワイナリーに頼んだが満足できず、58歳で自分でワイナリーをはじめた。
その翌年、ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリーを開いた。
農家レストランの魁となったという。
シェフも、パティシエも、パンを焼く人も、それぞれプロフェッショナルをつれてきたり、養成したりしながら、おいしい食事とワインが楽しめる店として評判を呼んでいる。
土日などは、予約しないと入れないらしい。
毎年5万人が訪れるという。

Img_1513

玉村さんから対談しようというお話があり、諏訪中央病院か岩次郎小屋にお越しいただけるということだったが、先輩を来させるわけにはいなかい。
ぼくのほうから、玉村さんを訪ねることにした。
そう自分で言いながら、正直、ちょっと遠いなと思ったりもしたが、訪ねてみて本当によかった。
千曲川が流れ、上田市を見下ろす、すてきなレストランでの対談となった。
玉村さんの絵を、奥さんがお皿にプリントしたという、しゃれた食器が使われていたのが印象的だった。
玉村さんのお宅もなかなかすてきで、タイを中心にした東南アジアの家具が並び、なんともいい雰囲気をかもし出していた。

|

2010年5月 7日 (金)

ワクチン接種は自己決定とセットで

栃木県大田原市が、小6女児を対象に、子宮頸がん予防ワクチンの集団接種を開始するという。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスで発症する。
性交渉を通じて感染するため、ワクチン接種が奨励されるのが11~14歳。
子宮頸がんは、年間1万5000人が発症し、3500人が亡くなっている。

もし、自分の孫がこういう年齢になったら、家族としては受けさせてあげたいと思う。
もちろん、最終的にはおじいちゃんが口を出すことでなく、親が決めることだが。

Img_1567

日本では、ワクチンギャップといい、先進国に比べると予防接種が後手にまわってしまった。
1990年前後に三種混合ワクチンなかのおたふくかぜのワクチンで、無菌性髄膜炎が1500接種に一例の割合でおきてしまい、その後一気に予防接種に対して消極的になった。
政府も責任を追及されるのがいやで、きちんとした保障制度を構築せず、任意接種という形で逃げた。
そのために、予防接種をしていない若者が増え、大学ではしかがはやるなど、先進国で起こらないようなことが起こってしまっている。
アメリカでは、1970年代にインフルエンザワクチンを受けた4000万人のうち、500人にギランバレー症候群が発症している。
かつてのワクチンによる副作用が心の傷になっているのは間違いないが、すでにアメリカは予防接種の先進国になっている。

100%安全なワクチンはつくれないが、その病気になったときのたいへんさと、予防接種を受けたときのリスクをきちんと比べて、自己決定することが大事である。
子宮頸がんワクチンも、副作用の可能性はある。
副作用の情報は、ただ恐怖をあおるのでなく、発生率も含めてきちんと公表すること。そして、ワクチンを受けなかったとき、毎年、子宮頸がんで3500人が死亡するというリスクと比べて、どちらが有益なのか、それぞれが秤にかけることが大切だ。

集団接種は効率よく便利である。
しかし、本人や親御さんがきちんと自己決定のプロセスを経ることができるかどうかが心配だ。

子宮頸がん予防ワクチンは諏訪中央病院では1回1万5000円。
3回やらないといけないので、4万5000円かかる。
病院によっては、5万~6万円かかるところもある。

長野県のなかでは南牧村や根羽村が、子宮頸がん予防ワクチンの希望者に接種費用の補助をしている。
全額公費負担ではなく、費用補助にすることで、接種希望者はいくら自己負担しなければならないが、たとえば1回500円なら500円自己負担することで、自己決定をするいい機会になるのではないか。
予防接種は、自己決定とセットでなければならない。

ワクチンギャップは、外国と日本で差があるというだけでなく、日本国内でも、市町村によって差が出はじめている。
旧政権がワクチン行政を後退させた結果である。
すぐには無理かもしれないが、鳥インフルエンザがはやる前に、国はしっかりワクチン行政を立て直すべきである。

|

2010年5月 6日 (木)

パソコンで聞けます

「鎌田實 いのちの対話」(NHKラジオ第一)の5月5日の放送が、インターネットでお聞きになれます。

http://www.nhk.or.jp/r1/inochi/

ぜひ、お聞きください。

|

涙腺のテロリスト?

『空気は読まない』(集英社)に、柏原病院小児科再生の物語を書いた。
地域医療が崩壊しはじめ、ある小児科医が病院をやめようとしたとき、地域のお母さんたちから「ありがとう」と言われ、踏みとどまった。
たいへんな状況を抱える小児科医療のなかで、地域住民の「ありがとう」が奇跡をおこした病院である。

「小児科を守る会」が発足して3年が経った。Img_1565
それは、小児科医、和久先生にとっても、「小児科医・医者としての志が救われて」3年が経ったことを意味する。

和久先生は、「小児科を守る会」のブログにこんなコメントを書いている。

「丹波は自慢のふるさとになりました。ありがとうございます。ほんとうにありがとうございます。
よくばりですが、次はぜひ、自慢できる日本になればいいなと思います」

和久先生は自分や自分の病院だけでなく、日本のことも考えている。
医師としての志が高い。

『空気は読まない』のことも書いてくれた。

「『空気は読まない』をご存知でしょうか?(中略) 読む人読む人をところかまわず泣かせてしまう本だそうです。(いじめ本? 「涙腺のテロリスト? よっ鎌田先生!」(笑)」

「守る会のことも書いてあるので、またまた日本に医療再生の種が、人々の心の中にまかれるといいなと思います。
そしてそれぞれが大切に育てて花を咲かせてほしいと思います。
医者も住民も、田舎も都会も関係なく。
温かい時代がくることを願いたいです」

ぼくも同感である。
柏原病院の「ありがとう」には、今の日本の医療を救う大きなヒントがあると思い、熱い気持ちで書いた。

和久先生から、3周年を記念してメッセージをほしいといわれた。
ぼくは、「守る会は地域の宝。いや、日本の宝である」というメッセージを筆で書いて送った。地域に支えられている、和久先生は日本一幸せな小児科医だ。

http://mamorusyounika.sblo.jp/category/466501-1.html

すぐに和久先生から、泣きながら読みました、と返事が来た。

『空気は読まない』は、女性だけでなく、よく男性の読者から「泣けました」という声をいただく。
「涙腺のテロリスト」という言い方、ちょっと気に入ってしまった。

和久先生から、ぜひ丹波へお越しくださいと、お声をかけられた。
2年前、柏原病院の近くで、坂田明と鎌田のコンサート&いのちの講演会を開いたが、とても盛況だった。
いずれ、また和久先生をお訪ねしたいと思っている。

写真は、緑が鮮やかな岩次郎小屋

|

2010年5月 5日 (水)

鎌田實の一日一冊(58)

『臨床とことば』(河合隼雄、鷲田清一、朝日文庫)

最近、出版された文庫のなかで2番目に売れていると評判だ。
臨床心理学の河合と、臨床哲学の鷲田ががっぷり四つに組んでいる。
鎌田が「臨床哲学と臨床心理学という二人の横綱の名勝負は、リズムよく、わかりやすく、ときに詩的で感動的である」と解説を書いている。
2人が横綱ならば、「学」のつかない臨床医のぼくは、前頭三枚目くらい。

実におもしろい本である。Photo
鷲田が、殺人事件を起こした人の年齢で多いのは、1位が49歳、2位が47歳、3位が48歳であるというデータを出すと、河合が第二の思春期である「思秋期」のことを述べる。
ぼくも48歳のとき、パニック障害を起こした。
見栄っ張りのぼくは、30歳代で院長になって、いい医療を展開しようと無理をした。
心臓がバクバクするパニック発作に見舞われた。
さいわい、殺人事件も起こさなかったし、自殺も試みなかったが、鷲田が言う「タダをこねる」最後の時期「ラスト・ダダ」の時期であったのかもしれない。

この本のなかには、自分が生きてきた道筋を解明したり、これから生きていくための手がかりがあふれている。
根源的な対話をしているのだが、難しい言葉を一切使わずに、実にわかりやすい。
言葉とは何か、人間とは何か、人と人との距離とは、聴くこととは。
本質的かつ深遠な問題についてやさしく問いかけあう。
河合隼雄という横綱が亡くなった今、もう再び見ることができない好勝負である。
ぜひ、お読みください。

|

2010年5月 4日 (火)

5日はラジオとテレビで

Img_1610

御柱の里引きが始まった。
その様子が、明日5日の「ニュースエブリィ」(日本テレビ系、16.53~)で放送される。
ジャニーズの小山慶一郎くんが御柱のめどでこに乗せてもらっている。
かっこよかった。
ぼくは丸太の先頭に立たせてもらった。
4月の荒々しい山出しとは違って、里引きは華やかで楽しい。
長持ちやどじょうすくい、かごやさんが出たりする。
街道沿いに歩いていくと、あがっていけ、あがっていけと声をかけられ、何軒も上がらせてもらった。
手打ちのそばまで振舞っていただいたお宅もあった。

Img_1634

5日は、「鎌田實 いのちの対話」(NHKラジオ第一、9.05~)の放送もある。
テーマは「絶望は希望に変わる」。
ヤクザの世界や薬物の世界に入り込んだ加藤秀視さん。
白血病で1%の可能性といわれ、骨髄移植で助かった大谷さん。
イランで家族全員が空爆で殺され、15歳しか年の違わない女性がお母さんになってくれ、日本で女優になったサヘル・ローズさん。
絶望を体験したゲスト3人が、どんなふうに希望を見出したかをお聞きする。
生きるヒントがいっぱいもらえると思う。

ぜひ、5日はラジオとテレビの前でお会いしましょう。

|

2010年5月 3日 (月)

鎌田劇場へようこそ!

「第9地区」
82回アカデミー賞作品賞、脚本賞、視覚効果賞など4部門にノミネート。
2009年世界を最も驚かせた映画とも言われた。
製作費3000万ドルという、SF映画にしてはたいへん安い。Photo
監督もキャストも無名の新人。アメリカで大ヒットし、世界に広がった。

SF映画は大嫌いな鎌田が、これはちょっと心を揺さぶられた。
ドキュメンタリータッチで、ものすごくリアルに作られている。
しかも、今年サッカーのワールドカップが開かれる南アフリカに、突如現れた正体不明の宇宙船。宇宙の難民が乗っていた。
その難民の収容地区が、第9地区という。

イラク支援を続けているぼくにとって、難民問題は関心の高いテーマである。
この映画は、もしも何百万人もの宇宙人が難民としてやってきたらどうなるかという、ありえない独創的な想定でつくられているが、政治的にもリアリティーがあり、見ようによっては、現代の問題と置き換えることができそうである。

2

「ロード・オブ・ザ・リング」三部作で成功したピーター・ジャクソンがプロデュースし、コマーシャルをとっていた新人に監督をさせている。
そのためか、ユニークで、先鋭的なカットが続いていく。
これが異様なリアリティーをかもし出す。

SF映画やCG映画にアレルギーがあった人も、この映画なら真実と虚構の間を行きかう映画の醍醐味を十分に味わえると思う。
人間を描いた映画が好きな鎌田も、この映画はちょっと考えを新たにした。
映画だからこそ、こんな正体不明の物語をつくることができる。
映画は進化しているなと感動した。

「機関車トーマス 伝説の英雄(ヒロ)」
うちの息子は子どものころ、機関車トーマスが大好きだった。Photo_2
サトさんに誕生日のプレゼントをしたのも、機関車トーマスの目覚まし時計。
時間が来れば「ぼく、トーマス、早く起きないと遅れちゃうよ」という言葉が繰り返される。
鎌田家のトーマスはヒーローである。

原作が出版されて65周年。ずっと子どもたちに夢を与え続けてきた。

今回は日本の古い蒸気機関車がヒーローとして登場する。
楽しくて、あったかな友情物語である。
初のフルCG作品となった。
ゴールデンウィークに子どもと一緒に見るならば、この映画をすすめたい。

|

2010年5月 2日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(35)「てぃだかんかん」

ナインティナインの岡村君が主役。
ぼくはあまりテレビを見なくなった。
テレビをどんどんくだらなくしている犯人が20人くらいいて、人気者の岡村君もその1人と思っていた。

俳優としては本当に下手。
Photoしかし、この下手な俳優が、主人公の空気を見事にあらわしていく。
「欠陥商品」と言われる主人公を、体中であらわせる俳優という意味では、たしかにすごい。
「ディア・ドクター」の鶴瓶の名優ぶりとは正反対だが、不思議にいい味を出している。

サンゴに夢中になる男の話である。実話。
生活能力がまったくない。
満足に子どもに食事も食べさせられない。
お菓子も買ってあげられない。
突っ走る男。
しかし、たくさんの仲間がいる。普通じゃない男なのだ。

最後はもう涙、涙。
サンゴの卵が海中にわあっと広がったときの光景はなんともいえない。
涙腺のゆるいぼくは、泣いて泣いて泣いて泣いた。

沖縄の基地問題はまったく出てこないが、ちょっと考えさせられる映画でもある。
この沖縄の自然をどう守るか。大きな問題だ。

すべての男は女の子どもだなとしみじみ思った。
2最後に岡村が、松雪泰子ふんする妻に「母ちゃん、ありがとう」と言う。
男は母ちゃんに守られている。
本物の母ちゃん役の原田美枝子の演技もすごい。
岡村は何度も原田に殴られる。後半では松雪に殴られる。
男は何度も殴られながら、よたよたと立ち上がる。

男のロマンと女の不満。
しかし、男のロマンと女の不満が上手にかみ合ったときに、夢と現実が合体をして、大きな本物の夢の達成ができるのではないか。
その大きな本物の夢を支えているのが女のロマンかなと思った。
いい映画。オススメ。

|

2010年5月 1日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(34)「コロンブス 永遠の海」

世界が尊敬する101歳の映画監督マノエル・デ・オリヴェイラ。
年に一本の勢いで映画をつくっている。Photo

1492年にアメリカ大陸を発見したといわれているクリストファー・コロンブスは、イタリア人という説と、コロンブスが発見した島々にスペインの名をつけたことからスペイン人説が有力である。
この映画では、実はコロンブスはポルトガル人だったという歴史研究家の夫妻を主人公にしている。
そのシルバー夫婦の、年老いたときの役は、オリヴェイラ監督夫妻が演じている。
大航海時代のコロンブスの旅と、歴史研究家のシルバー夫妻の旅、そして、監督夫妻の旅が見事に重なっていく。

101歳とは思えないみずみずしいアングル、美しいカットにはほれぼれする。
映画好きの人には、たまらない一作だろう。
おすすめである。
2 特別な映画好きでない人には、ちょっとまどろっこしいかもしれない。
ポルトガル人でもないと、コロンブスがイタリア人だろうが、スペイン人だろうが、ポルトガル人であろうが、あまりこだわりがない。
監督はポルトガル人。

映画の前半を耐えていくと、後半はぐっと面白くなっていく。
タイトルもなんとなく、すてき。

今日から岩波ホールで上映されている。

|

« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »