ワクチン接種は自己決定とセットで
栃木県大田原市が、小6女児を対象に、子宮頸がん予防ワクチンの集団接種を開始するという。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスで発症する。
性交渉を通じて感染するため、ワクチン接種が奨励されるのが11~14歳。
子宮頸がんは、年間1万5000人が発症し、3500人が亡くなっている。
もし、自分の孫がこういう年齢になったら、家族としては受けさせてあげたいと思う。
もちろん、最終的にはおじいちゃんが口を出すことでなく、親が決めることだが。
日本では、ワクチンギャップといい、先進国に比べると予防接種が後手にまわってしまった。
1990年前後に三種混合ワクチンなかのおたふくかぜのワクチンで、無菌性髄膜炎が1500接種に一例の割合でおきてしまい、その後一気に予防接種に対して消極的になった。
政府も責任を追及されるのがいやで、きちんとした保障制度を構築せず、任意接種という形で逃げた。
そのために、予防接種をしていない若者が増え、大学ではしかがはやるなど、先進国で起こらないようなことが起こってしまっている。
アメリカでは、1970年代にインフルエンザワクチンを受けた4000万人のうち、500人にギランバレー症候群が発症している。
かつてのワクチンによる副作用が心の傷になっているのは間違いないが、すでにアメリカは予防接種の先進国になっている。
100%安全なワクチンはつくれないが、その病気になったときのたいへんさと、予防接種を受けたときのリスクをきちんと比べて、自己決定することが大事である。
子宮頸がんワクチンも、副作用の可能性はある。
副作用の情報は、ただ恐怖をあおるのでなく、発生率も含めてきちんと公表すること。そして、ワクチンを受けなかったとき、毎年、子宮頸がんで3500人が死亡するというリスクと比べて、どちらが有益なのか、それぞれが秤にかけることが大切だ。
集団接種は効率よく便利である。
しかし、本人や親御さんがきちんと自己決定のプロセスを経ることができるかどうかが心配だ。
子宮頸がん予防ワクチンは諏訪中央病院では1回1万5000円。
3回やらないといけないので、4万5000円かかる。
病院によっては、5万~6万円かかるところもある。
長野県のなかでは南牧村や根羽村が、子宮頸がん予防ワクチンの希望者に接種費用の補助をしている。
全額公費負担ではなく、費用補助にすることで、接種希望者はいくら自己負担しなければならないが、たとえば1回500円なら500円自己負担することで、自己決定をするいい機会になるのではないか。
予防接種は、自己決定とセットでなければならない。
ワクチンギャップは、外国と日本で差があるというだけでなく、日本国内でも、市町村によって差が出はじめている。
旧政権がワクチン行政を後退させた結果である。
すぐには無理かもしれないが、鳥インフルエンザがはやる前に、国はしっかりワクチン行政を立て直すべきである。
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