鎌田實 日本経済への提言(35)
~強い経済、強い社会保障~
菅新政権が発足した。
就任会見で、「強い経済、強い財政、強い社会保障」という言葉を使った。
就任演説で「社会保障」を強調した首相ははしめてのような気がする。
ぼくが『ウエットな資本主義』に書いたことは、まさにこれ。
国家の下半身である医療、介護、子育て、教育、雇用など社会保障や福祉にあたたかい血を通わせながら、上半身では経済の強い国にする。
そのためにはどうすべきか、「波」「回転」「フロンティア」という言葉を使って、鎌田流の切り口で提案した。
日本テレビ系の「ニース・エデリィ」でも、このことを取り上げた。
日本の出生率が1.37に対して、長野県の下条村では2.54。
なぜ、こんなに違うのか。
下条村は人口減に歯止めをかけるために、地域再生を試みた。
もう公共投資にお金をかけていては村がつぶれると考え、たとえば、道路がいたんだら、住民自身が汗をかき、村から支給された砂利やセメントを利用して補修した。
その浮いたお金で、若者のアパートをつくり、保育園の保育料を20%値下げした。
中学3年までの子どもの医療費も無料にしていたが、ついに今年は対象を高校3年まで引き上げた。
その結果、どんどん若い人たちが移住してきた。
村に一つの工場ができた。
村の財政状況が改善していった。
社会福祉によって、強い財政が生まれることが証明されたのだ。
少し前、テレビ朝日の報道ステーションで、島根県隠岐郡にある海士(あま)町のことを取り上げた。
この町のことは、『ウエットな資本主義』にも書いた。
町の財政危機に対して、まず、町長が給料を半分にした。
職員も自ら給料のカットを申し出た。
老人会も自分たちだけ甘えているわけにはいかないといって、福祉サービスを断った。
そして、牡蠣を中心にした新しい産業をつくりだした。
ここの岩牡蠣はとてもおいしい。
若者たちが首都圏から移住してきた。
行政の長や公務員が自らの身をただすと、住民は町に協力するムードになっていく。
下条村や海士町を一つのモデルにしながら、この国に強い経済や強い財政を作り出すことができるのではないか。
新しい政権ができると、みんなで足を引っ張ろうとする。
足の引っ張り合いはもう、たくさん。
みんなで応援して、この国の経済をよくしていかなければ、次世代の若者たちは救われない。
新政権に強いリーダーシップを望む。
写真は、初夏の岩次郎小屋。
ニセアカシア(上の写真)の花が甘い香りを放つと、もう夏。花はてんぷらにして食べる
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