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2010年6月22日 (火)

鎌田實の一日一冊(69)

『安奈淳物語 私は歌う、命ある限り』(北康利著、PHP研究所)

宝塚ファンや安奈淳ファンにはたまらない本ができた。
「ベルサイユのばら」のオスカルで評判になっていく安奈淳のまっすぐな生き方が書かれている。
宝塚歌劇団にも波があった。
空席が目立つ時代があったのだ。

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宝塚ブームを起こしたのは「ベルサイユのばら」だった。
安奈淳がどんなふうに時代の寵児になっていくかわかる。

舞台では、おかしなハプニングもよく起こる。
白いタイツにベルベットの半ズボンをはいて演技をした。
半ズボンが破れていることに気づかず、タイツが丸見えのまま演じた。
この話は安奈さんから聞いて知っていた。
北海道の公演では、「オスカル!」と叫ぶクライマックスのところで、タイミングよく、迷子の放送が入った。
「迷子のお知らせをいたします~」
ゲラゲラ笑ってしまった。

安奈さんの手書きの手紙が添えられていた。
「ミノちゃん、お忙しいでしょうが、お時間のあいたときに読んでくださいませね。淳」

少し前に電話があった。
四国で、これからディナーショーだという。

「映画『オーケストラ!』、見たわよ。ミノさんがおもしろいというので、私、見たわよ。手抜きも手抜き、ひどいものよ。私はちょっと欲求不満になって、その後、トラボルタの『パリより愛をこめて』をみた。それはとってもすてきだった。ミノさん、それを見なくちゃ」

安奈さんが言うことはよくわかる。
「オーケストラ!」は脇が甘い映画なのだ。
映画好きの人には耐えられないかもしれない。

以前、講演のため京都でご一緒したとき、ぼくはおすすめ映画を紹介するために、移動中も、DVDを見ていた。
安奈さんに、みますかと聞くと、
安奈さんは「私は映画は、映画館でみるの」。
えらいなと思った。
丁寧に、原則的に生きる人だと思う。
それが彼女の芸を支え、見る人を裏切らないものにしているのだと思う。

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