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2010年6月

2010年6月30日 (水)

イラクから来た女の子

イラクのバグダッドから、3歳のルーラちゃんがやってきた。
二分脊椎症という病気をもっている。
このままにしておくと、歩けなくなるなどいろいろな障害が出る可能性がある。
バグダッドの病院で外科医をしているお父さんがSOSを出した。
JIM-NETの一員であるスマイルこどもクリニックが、このSOSを受け止めた。
ルーラちゃんの手術は6月24日に無事成功した。

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イラクのドクターたちの多くが海外へ移っていくなかで、ルーラちゃんのお父さんは何とかイラクの人たちを助けるために、危険なバグダッドにとどまって診療活動を続けている。

スマイルこどもクリニックのことは、『へこたれない』(PHP研究所)のなかに書いた。
24時間体制で診療活動をしている。
院長の加藤隆先生や奥さんのユカリ先生たちが、24時間体制で子どもたちの命を守っている。24時間体制というのは、本当にたいへんだと思う。
だが、とても評判になり、横浜市の東戸塚のほか、浦安市にも分院を出した。

病院の職員もあったかい。
こういう小児科クリニックが全国にあれば、お母さんたちは安心だと思う。

ルーラちゃんが、元気になることを祈っている。
ガンバレ! ルーラちゃん。
ガンバレ!! スマイルこどもクリニック。

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2010年6月29日 (火)

チームは一瞬で変わる

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人は一瞬で変われる。
こんなテーマで、本をつくろうとしている。
サッカーW杯の日本チームは、まさにそのことを実感させられた。

テストマッチ4試合では惨憺たる結果だった日本。
岡田監督は進退伺いをしたとかしないとか、追い込まれていた。
チームのムードはばらばら。
しかし、カメルーン戦の一勝がチームを変えた。
チャンスをものにできなかった日本が、本田という個性的な若者によって1点を取った。
この一瞬で、日本のサッカーは変わったのだと思う。
オカちゃんの顔が明るくなりだした。
マスコミが、一斉に神様仏様岡田様とつまりあげる。
すべては一瞬なのだ。

フロントに、本田を中心にして動きのいい松井と大久保をつかったことが大きい。
真ん中の守備の要に阿部が入ったことも大きかった。
相手側のチームがゴール周りに来ても、安部のブロックが強かった。

岡田監督の判断のよさを感じたのは、イングランドとのテストマッチで、ゴールキーバーに川島を起用したこと。
川島はほれぼれするような好セーブを見せた。
結局負けたが、この姿が、チームにもファンにも残った。
ここぞというときに、チャンスをものにした。
これが川島のすごさであり、川島を使う岡田監督のジャッジの成果である。

デンマーク戦の2点目、遠藤のフリーキックはすばらしかった。
遠藤が得点する夢をみたと、今野は遠藤に語ったという。
こういう一言が聞くのである。
遠藤のキックは奇跡的なループを描いて、ゴールを決めた。
遠藤は、今野のところへ走った。
今野が夢をみても、遠藤に言わなかったらこの奇跡は起こらなかったかもしれない。
夢を言葉にしたのが大事なのである。

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2010年6月28日 (月)

平和への祈りコンサート

ヴラダン・コチがチェコからやってくる。
『空気は読まない』(集英社)に書いた良心の囚人、あのヴラダン・コチである。
10年以上前から来日し、病をもつ人や子どもたちの施設に音楽を届けるボランティアをしている。
昨年は、CD「ふるさと~プラハの春」発売を記念して、東京の津田ホールでコンサートをした。

1_2昼夜の二回とも、超満員となり、感動のコンサートとなった。

今回は、ヴラダン・コチの家族で構成する、プラハチェロファミリーが、初来日。
広島や長崎での平和への祈りコンサートの準備をすすめている。

それに先駆けて、8月5日は東京の杉並公会堂で、8月10日は山梨のアルソア本社森羅ホールでコンサートを行う。

コンサートのチラシは、絵本作家の葉祥明さんが美しい絵を寄せてくれた(↑クリックすると拡大します)。
みんなが応援している。

コンサートの収益は、広島の原爆ドーム(チェコの建築家ヤン・レッツェル氏設計)の修復費用や、広島、長崎の高校生らが中心になって国連に平和大使を送るための活動を支援するためにあてられる。Photo

ぜひ、プラハチェロファミリーの音楽の感動にひたりながら、平和について考えてほしい。

        ◇  ◇  ◇

 平 和 へ の 祈 り ・ 核 の な い 未 来 へ

* 東京公演  8月5日(木)  杉並公会堂 大ホール 
18:00(開場) 19:00(開演) 全指定席
S席¥4,000(当日¥4,500)A席¥3,500(当日¥4,000)
お申し込み先     TEL 042-366-7758 室 惇子

東京公演のみチケットぴあでも購入いただけます。(Pコード:107-792)

* 山梨公演  8月10日(火) 小淵沢(株)アルソア本社 森羅ホール
  18:30(開場) 19:00(開演)  全自由席 ¥3,000
お申し込み先 TEL 0551-36-3826 ペンション風路
       TEL 0551-36-4166 ペンション・あるびおん
       TEL 0551-20-5086 NPO法人八ヶ岳自然村
尚、東京公演は、S席、A席ご指定の上、上記、実行委員会担当まで、
両公演共に必要枚数、お名前、ご住所、TEL番号をご連絡の上指定口座に
ご入金ください。折り返し、チケットとチラシをお送りさせて頂きます。

または、世話人 山 口 豪、宛の場合もご連絡の上、下記口座にご入金
頂きますようよろしくお願いいたします。
* ゆうちょ銀行総合口座 記号 10810  番号 4949631
    ヴラダン・コチチャリティーコンサート実行委員会 宛

* 山梨中央銀行小淵沢支店普通預金 口座番号 440602
    プラハ・チェロファミリー平和への祈り・チャリティーコンサート
     世話人  山 口  豪(つよし)宛

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2010年6月27日 (日)

毎週月曜の朝はラジオで

6/28スタートの「高嶋ひでたけのあさラジ!」(ニッポン放送、毎週月~金、午前5~8時)に出演することになった。P6061454

ぼくは、毎週月曜、午前6時20分からのコーナー「有楽町 朝活クラブ」で、5分ほど話をする。
「心の学校」というタイトルだ。

初回出演は、明日28日。
一日の準備をしながら、聞いてください。

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2010年6月26日 (土)

ウエットな資本主義とカルロス・ゴーン

『ウエットな資本主義』(日本経済新聞社)が、週刊東洋経済に大きく取り上げられた。
ぼくが訴えたい新しい形の資本主義や、経済再生のキーワード「波」「回転」「フロンティア」について、わかりやすい質問をしてくれている。
精神医学者フロイトは、人間が成長するうえで大切なのは愛する対象がいることと、働くことと言っている。

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働くことは大事だ。
若者に雇用を与えられない国家は二流国と思う。
愛する日本を二流国にしないために、どうしたらいいか、今後も考えていきたい。

資本主義経済を引っ張っていくうえで、リーダーの資質は大切だと思う。
日産のカルロス・ゴーンは、リストラやコストカットなどを行い、ぼくはあまり評価していなかった。
だが、新しいビジョンで働くときが来たと述べているのを見て、興味をもった。

日産は今年の秋、リーフという電気自動車を出す。
その戦略として、車だけでなく、その車に乗る人たちの生活を変えていく、と彼は言っている。
週刊東洋経済6/26発売号の記事を読むと、ゴーンのビジョンはなかなか素敵である。
リストラやコストカットを平然とやれるリーダーが、こういうロマンティクなことを言い出すと、会社は一丸となるはずだ。
ぼくの言いたかったウエットな資本主義という主張に、ゴーンの新しいビジョンはぴったり当てはまっているような気がする。

ぼくはかつて日産のフェアレディZというスポーツカーに乗っていたが、実に名車だった。
今年、日産は続々とモデルチェンジを迎える。
今後の日産に注目している。

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2010年6月25日 (金)

地域医療の“神様”とリフレッシュの日

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岩手県沢内村の増田先生や、北海道大学で地域医療や総合診療を教えていた前沢前教授たちと、年に一回、旧交をあたためる会をしている。

先日は、京都でその会があった。
京都の山中先生が幹事をしてくれた。1006191image592

銀閣寺や哲学の道に近いところにある、ゴスペルというしゃれたカフェに集まった。
集まったのは13人。
このカフェは、パティシエ津田陽子さんのロールケーキがあり、わざわざ東京から食べに来る人も多いという。

1006193image594「京上賀茂 秋山」で会席料理を食べた。
ミシュランの一つ星をもらった店だ。
間違いなく、大満足だった。

琵琶湖のあたりを散策した。
彦根城や、紫式部が「源氏物語」の明石の巻などを書いたお寺さんを見学しながら、日本の地域医療について語り合った。1006195image596

たくさんのいい情報をもらった。
おいしいご飯も食べた。
いい空気もいっぱい吸った。
旧交もあたためた。

いい休日となった。

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2010年6月24日 (木)

元気なまち上勝町

日本テレビ系の「ニュース・エブリィ」に毎週出演している。
時々おもしろいことに気が付く。

前回出演した6/16の放送では、アイドルの小山慶一郎君が、徳島県の上勝町に取材に行った。
おばあちゃんたちが山で葉っぱをとってきて、それがかなりの収入を生み出している。
このことは有名。ぼくもよく知っていた。

医療費についてコメントした。P6061433
徳島県の24市町村のなかで、上勝町はこの3年間の一人当たりの後期高齢者医療費がいちばん安い。
いちばん高い徳島市89万円と比べて、上勝町61万円は圧倒的に安い。
生きがいが関係しているのだと思う。

長野県がなぜ、日本一、高齢者医療費が安いのかを、調べたことがある。
高齢者の就業率が高い。
保健指導員というヘルスボランティアの市民組織がある。
この二つが大きな要因になっていた。

上勝町の医療費が安いのも、年をとっても仕事があり、張り合いになっていることと関係があるように思う。
なかには外国を旅行するおばあちゃんがいる。
ますます好奇心が旺盛になり、元気になっていく。
心と体はつながっているので、心が元気になっていくと、体も病気になりにくくなっていく。

フロイトは、人間が成長するうえで必要なのは、愛する対象がいることと、働く場があることと言っている。
さすがフロイトだと思う。

上勝町のおばあちゃんたちは、葉っぱをとってきて、レストランや料亭に売る。
売り上げを上げるには、情報が必要である。
ニードに敏感になる。
町の売り上げ高の順番がわかる。
資本主義社会だから、競争があっていい。
ちょっと売ればいいと思っている人と、うんと売って、外国に遊びに行きたいと思っている人がいていい。
資本主義社会は、自由と自己決定の社会である。
大事なことは働きたい人に働く場があること。

それにしても、徳島県はおもしろいなと思う。
『空気は読まない』に書いた松茂町は、障害者の雇用支援では、ぼくは勝手に日本一だと思っている。
地方にはすてきな町がある。
気が付いていないだけ。

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2010年6月23日 (水)

消費税の問題を考える

消費税の問題が突然、浮上した。
参院選の争点となりそうだ。
消費税を上げるかどうか、国民が選挙によって決めるほうがいい。
前々から消費税の議論を開始すべきと主張してきたので、いいことだと思う。

すでに世論調査では、消費税に言及した民主党の支持率はダウンしている。
消費税をどうするべきか議論する必要があるが、選挙のために、国民を惑わすことを言うのはまずい。

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今年の当初予算の公共投資5.8兆円は、昨年より1.3兆円も少ない。
1990年代は、GDP比6%あった。
補正予算を含めると、1998年の小渕内閣のときなどは、15兆円近くあった。
今年度は削減しすぎている。
民主党がやりたいことはわかるが、これ以上、下げることは国民のためのよくないと思う。
軍事費もGDP比1%と、これ以上は手をつけることは難しいだろうと思う。
企業に税金をもっと多く出せというのも、無理。
法人実行税率は、先進国のなかでは最も高く、40%に近い。
むしろ、今の舵取りとしては、法人税率を下げることだ。
一見、大企業寄りの政治のように見えるが、今の時点では国民のためになる。
そのことはぼくの『ウエットな資本主義』にも書いた。

一つあるとすれば、個人所得税の見直しだ。
日本の個人所得税はGDP比5.1%で、アメリカ10.2%、カナダ12.1%、イギリス10.8%と比べると低い。
この個人所得税を、所得の多い人にもう少し多く払ってもらうように、累進課税を見直すようにする。

ただでさえ、毎年、高齢化にともなって1兆円の社会保障費が自然増する。
年金の建て直しにも、毎年2.5兆円がかかる。
国と地方と長期債務残高が、今年度末には860兆円になる。
これらのことを考えると、とにかく財政バランスを改善していくというメッセージを世界に発信しないと、日本の信用は失墜してしまう。

おそらく、このままでいくと、2012年には長期債務残高が1000兆円を超える。
そのときには、まさにギリシャと同じ悲劇が起こる可能性がある。
借金を一気に返すことはできないが、徐々にこの国の財政が快方に向かうことを世界にアピールしないと、外国人投資家などは、日本の株式から撤退するだろう。
そうなれば、今以上の株の暴落が起こる。
経済が冷えると、雇用が縮小する。
さらに悪い状況になる可能性がある。

そうならないように、みんなで考えなければならない。
参院選はいいチャンスである。
みんなで議論して、自分なりの考えを一人ひとりが持つことが大事だ。
国民一人ひとりが自分の生活を起点にしながら、この国全体がどうあるべきか、そして若者に、元気な国を引き継ぐにはどうしたらいいかを考えるときが来ているように思う。

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2010年6月22日 (火)

鎌田實の一日一冊(69)

『安奈淳物語 私は歌う、命ある限り』(北康利著、PHP研究所)

宝塚ファンや安奈淳ファンにはたまらない本ができた。
「ベルサイユのばら」のオスカルで評判になっていく安奈淳のまっすぐな生き方が書かれている。
宝塚歌劇団にも波があった。
空席が目立つ時代があったのだ。

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宝塚ブームを起こしたのは「ベルサイユのばら」だった。
安奈淳がどんなふうに時代の寵児になっていくかわかる。

舞台では、おかしなハプニングもよく起こる。
白いタイツにベルベットの半ズボンをはいて演技をした。
半ズボンが破れていることに気づかず、タイツが丸見えのまま演じた。
この話は安奈さんから聞いて知っていた。
北海道の公演では、「オスカル!」と叫ぶクライマックスのところで、タイミングよく、迷子の放送が入った。
「迷子のお知らせをいたします~」
ゲラゲラ笑ってしまった。

安奈さんの手書きの手紙が添えられていた。
「ミノちゃん、お忙しいでしょうが、お時間のあいたときに読んでくださいませね。淳」

少し前に電話があった。
四国で、これからディナーショーだという。

「映画『オーケストラ!』、見たわよ。ミノさんがおもしろいというので、私、見たわよ。手抜きも手抜き、ひどいものよ。私はちょっと欲求不満になって、その後、トラボルタの『パリより愛をこめて』をみた。それはとってもすてきだった。ミノさん、それを見なくちゃ」

安奈さんが言うことはよくわかる。
「オーケストラ!」は脇が甘い映画なのだ。
映画好きの人には耐えられないかもしれない。

以前、講演のため京都でご一緒したとき、ぼくはおすすめ映画を紹介するために、移動中も、DVDを見ていた。
安奈さんに、みますかと聞くと、
安奈さんは「私は映画は、映画館でみるの」。
えらいなと思った。
丁寧に、原則的に生きる人だと思う。
それが彼女の芸を支え、見る人を裏切らないものにしているのだと思う。

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2010年6月21日 (月)

鎌田實の一日一冊(68)

『いのちの森の台所』(佐藤初女著、集英社)

佐藤初女さんが岩木山のふもとにつくった「森のイスキア」は、ペンションのような不思議な場所。

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迷い、疲れ、救いを求めて訪れる人たちによりそい、再生のきっかけとなるように、食事を振舞う。
映画「地球交響曲第2番」で、多くの人に知られた。

「鎌田實いのちの対話」に出ていただいたこともある。
そのときも、初女さんに無理をいって、おむすびを握ってもらった。
放送当日には、朝7時にはホテルを出発して、会場で打ち合わせやリハーサルがある。
初女さんは朝早くから、おいしいごはんを炊き、みんなのためにおむすびをにぎってくれた。
本当においしいおむすびだった。
なんでなんだろう、よくわからない。

みんな迷いながら、初女さんのところに行き、訥々とした津軽弁の初女爪さんの言葉を聞き、初女さんのおむすびを食べながら、自分を見つめるのである。
なんだかわからないうちに、ちょっと元気になる。
本気になって生きてみようと思う。

初女さんのおむすびもすてきだが、初女さんの言葉もすてき。

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2010年6月20日 (日)

鎌田實の一日一冊(67)

『もうひとつのスーダン 日本人医師川原尚行の挑戦』(著・川原尚行、写真・内藤順司、主婦の友社)

すごい写真集。
ぼくのところにはたくさんの本が送られてくる。
でも、買わなければいけない本は、自分できちんと買う。Photo
もちろん、この写真集は自分で買った。

川原尚行先生は、外務省を辞め、遠いアフリカの国スーダンに渡った。
診療所を開設し、サッカーを通じての平和構築を目指している。

数年前、川原先生が諏訪中央病院に訪ねてきたことがあった。
すごい男だなと思った。
一度、彼の現場を見たいと思い続けていた。
見なければ応援もしてあげられないと思っているうちに、忙しさにまぎれ、結局、何もできていない。

内藤順司の写真がすばらしい。
被写体のすごさもあるが、写真のクオリティーも抜群。
写真の賞がとれそうな写真集だと思う。
説明はいらない。
言葉を通さず、伝わってくるのである。
過酷な状況のなかで必死に生きている子どもたちの姿が、痛々しく、美しく、力強い。
命って、なんてすごいんだろうと、何度も、何度も、ページをめくった。

川原尚行の仕事のすごさ。
アフリカの大地のすごさ。
写真という芸術のすごさを感じる。
なんともすごい本。

税込3000円と高い本だが、売り上げの一部は川原先生が活動するNPOに寄付される。

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2010年6月19日 (土)

基地の町を歩く

沖縄に講演に行った。
『沖縄(ウチナー)-抵抗と希望の島』(鎌田慧著、七つ森書館)」という分厚い本を持って、飛行機のなかでキャビンアテンダントに「鎌田先生の本のファンです」なんていわれながら、ところどころで、この本をむさぼるように読んだ。

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普天間基地を見た。
滑走路と重なりあうように町がある。
2004年に、ヘリコプターが基地の横にある大学に落ちた。
危険と不安のなかで、沖縄の人は生活している。

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辺野古岬の海岸沿いを歩いた。
なんだかわからないが、美しい海をそっとしておいてあげたほうがいいのではないかと思った。
若者と30分ほど立ち話をした。
この海にジュゴンがいるという。

この辺野古岬を囲む3つの地区では、移転反対と移転賛成に分かれている。
いろんな考えの人がいる。
難しい問題である。

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それでも、オープンに日本の安全保障をどうするのか議論していかなければならない。
沖縄にどこまで負担をしてもらえるのか。
住民の反対が続けば、アメリカも考えなければならなくなる。
いずれにしても、難しい議論を重ねていかなければならない。
そのとき、美しい海をみながら議論したらいいと思う。

政府は、日米関係を大事にするとしても、沖縄住民の賛成が得られるかどうかが瀬戸際だと思う。
沖縄に背負ってもらうにしても、沖縄の基地全体が、今後10年、3分の1くらいに減らしていくという大きな目標のなかで、移転の問題を考えていく必要があるように思う。

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2010年6月18日 (金)

鎌田實 日本経済への提言(35)

~強い経済、強い社会保障~

菅新政権が発足した。
就任会見で、「強い経済、強い財政、強い社会保障」という言葉を使った。
就任演説で「社会保障」を強調した首相ははしめてのような気がする。

ぼくが『ウエットな資本主義』に書いたことは、まさにこれ。
Img_2291国家の下半身である医療、介護、子育て、教育、雇用など社会保障や福祉にあたたかい血を通わせながら、上半身では経済の強い国にする。
そのためにはどうすべきか、「波」「回転」「フロンティア」という言葉を使って、鎌田流の切り口で提案した。

日本テレビ系の「ニース・エデリィ」でも、このことを取り上げた。
日本の出生率が1.37に対して、長野県の下条村では2.54。
なぜ、こんなに違うのか。
下条村は人口減に歯止めをかけるために、地域再生を試みた。
もう公共投資にお金をかけていては村がつぶれると考え、たとえば、道路がいたんだら、住民自身が汗をかき、村から支給された砂利やセメントを利用して補修した。
その浮いたお金で、若者のアパートをつくり、保育園の保育料を20%値下げした。
中学3年までの子どもの医療費も無料にしていたが、ついに今年は対象を高校3年まで引き上げた。
その結果、どんどん若い人たちが移住してきた。
村に一つの工場ができた。
村の財政状況が改善していった。
社会福祉によって、強い財政が生まれることが証明されたのだ。

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少し前、テレビ朝日の報道ステーションで、島根県隠岐郡にある海士(あま)町のことを取り上げた。
この町のことは、『ウエットな資本主義』にも書いた。
町の財政危機に対して、まず、町長が給料を半分にした。
職員も自ら給料のカットを申し出た。
老人会も自分たちだけ甘えているわけにはいかないといって、福祉サービスを断った。
そして、牡蠣を中心にした新しい産業をつくりだした。
ここの岩牡蠣はとてもおいしい。
若者たちが首都圏から移住してきた。
行政の長や公務員が自らの身をただすと、住民は町に協力するムードになっていく。
下条村や海士町を一つのモデルにしながら、この国に強い経済や強い財政を作り出すことができるのではないか。

新しい政権ができると、みんなで足を引っ張ろうとする。
足の引っ張り合いはもう、たくさん。
みんなで応援して、この国の経済をよくしていかなければ、次世代の若者たちは救われない。
新政権に強いリーダーシップを望む。

写真は、初夏の岩次郎小屋。
ニセアカシア(上の写真)の花が甘い香りを放つと、もう夏。花はてんぷらにして食べる

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2010年6月17日 (木)

鎌田實の一日一冊(66)

『はるちゃんのいただきます』(文・大平光代 絵・村上祐喜子、本願寺出版社)

今年2月、大平光代さんと2人で『くらべない生き方』(中央公論新社)を書いた。
その大平さんの子、はるちゃんは、いっぱい病気をもって生まれてきた。
ダウン症で、生後まもなく心臓の手術をし、白血病もわかった。
Photo

大平さんは、はるちゃんをいとおしく、大切に、大切に育ててきた。
ぼくも一度、会ったことがある。
男の人が苦手というが、ぼくが手を広げると、飛び込んできて、抱っこさせてくれた。
なんともかわいい。

大平光代さんはこの絵本で、はるちゃんを通しながら、大切なことを文章にしている。
絵は、村上祐喜子さん。
NHKエクゼクティブアナウンサーの村上信夫さんの奥さんだ。
村上信夫さんは、「鎌田實 いのちの対話」を一緒にやっている、ぼくの大切なパートナー。
なんだか、不思議な縁を感じる。

村上祐喜子さんは、もともと絵本作家。
『丹波竜のおくりもの』(丹波新聞社)という恐竜の絵本もなかなか素敵だ。
『ハラダさんのハラハラ記念日』(ポプラ社)は、スキーの原田選手の活躍に感動して生まれた絵本。富山県の大島町絵本館全国手づくり絵本コンクール最優秀賞を受賞した。

『はるちゃんのいただきます』は、村上さんが大平さんに手作り絵本の作り方を教えているうちに、2人で絵本をつくることになったという。
ぜひ、ご覧ください。

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2010年6月16日 (水)

完全なる試合

大リーガーのガララーガという投手が絶好調だった。
9回2アウトまで完全試合。

野球に興味のない方にちょっと一言。
完全試合というのは、27人(9回×3人)のバッターをすべてアウトにすること。
なかなか達成できない偉業だ。

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27人目のバッターがバッターボックスに入った。
ガララーガがボールを投げる。
バッターの打ったボールは、セカンドゴロ。
ピッチャー・ガララーガが1塁に走る。
2塁守は簡単に取って、1塁に走りこんでいくピッチャーのダララーガに投げた。
完全試合、達成と思われた。
どうみても、そう思えた。
スロービデオが流された。
やはり、アウトである。

奇跡に近い完全試合が達成したと思ったところ、1塁審判がセーフのサインを出した。
ガララーガがにやっと笑って、ソリャナイダロウという顔をした。
球場も興奮の坩堝となった。
一度下されたジャッジは覆らない。それがルール。
試合は次のバッターをアウトにして終わった。

審判はビデオを見直して、ミスジャッジであることがわかった。
審判は正直に自分のミスジャッジをわびた。
このときのガララーガ投手がかっこいい。
「パーフェクトな人間はいない」
許したのである。
すばらしい。

審判が潔く自分のミスを認めたことはかっこいい。
それを許したダララーガはもっとかっこいい。
完全試合は逃したが、これこそ、見事な人間ドラマの「完全なる試合」だったのではないか。
あたたかな人間の心が示された、これ以上の完全試合はない。

写真は、岩次郎小屋から望む初夏の空

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2010年6月15日 (火)

鎌田實の一日一冊(65)

『高橋竹山に聴く-津軽から世界へ』(佐藤貞樹著、津軽書房)

津軽三味線の名手、初代高橋竹山につきそった男、佐藤貞樹が竹山から聞いたことを書き残した。

佐藤は、晩年、付き人のように竹山に付き添った。
だが、「同行二人」の演奏の旅をともにしながら、竹山の才能を見出し、独創的な芸術を開花させる大きな貢献をしている。

佐藤は、ものすごい読書家である。Photo
自分で得た知識や教養を、目の見えない竹山に読み聞かせ、彼の世界を広げていった。
ジャズやクラシックを繰り返し聞かせた。
竹山の、不思議な聞こえない音は、こうしてつむぎだされていく。

ぼくの父、岩次郎は高橋竹山が好きだった。
毎日、毎日、聞いていた。
亡くなるときも、病院のベッドの上で竹山を聴いていた。

このことを『それでもやっぱりがんばらない』(集英社)に書いてから、佐藤貞樹と親交が始まった。
津軽を案内してもらったこともある。
そして、食道がんがわかり、あっと言う間に亡くなっていった。

高橋竹山生誕100年の今年、その佐藤貞樹の遺言のような本が、津軽の小さな出版社から再販された。
しかも、竹山の未発表ライブ音源のCDがついていた。
ぼくも、渋谷のジァンジァンのライブで、竹山を聴いているが、そのころの音である。
このなかの即興曲「岩木」というのが、たまらなくすごい。
楽譜のないところから、じょんがら節を感性で変えながら、悠々たる世界を広げている。
トレモロやピチカートも見事だ。
今の津軽三味線ブームのロックような演奏とは全く違う。
あたたかで、やわらかな演奏である。

来月、鳥取で「第18回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会in鳥取」が開かれる。
大会初日の7月10日、ぼくは、「我々はどこから来たのか、我々はどこへ行くのか-命の原点をみつめて-」と題して、講演することになった。
食道がんで亡くなった佐藤貞樹さんのことや高橋竹山のこと、父岩次郎のことを通して、命の原点について考えてみたいと思っている。
徳永進大会長と相談中であるが、会場で演奏してくれる、津軽三味線の演奏家を探してもらっている。

本のほうは、幻のCDが付いているため、2800円とちょっと高いが、ぜひ、高橋竹山の津軽三味線を聴いてもらいたいと思う。

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2010年6月14日 (月)

遠くへ行きたい 益子直美in諏訪~原村

2009年11月29日(日)放送

「遠くへ行きたい」#1984
益子直美の旅からの贈物in諏訪

鎌田實と行く諏訪のバリアフリーツアー、原田泰治美術館など

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すばらしい命の授業

広沢里枝子さんが、諏訪中央病院看護専門学校の授業に来てくれた。

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網膜色素変性症のために、徐々に視力を失っていった。
結婚したときにはまだわずかに見えた。
子どもを生むときに、もしかしたら視力がなくなるかもしれないと医師に言われたが、子どもはどうしてもほしかった。
出産後、完全に見えなくなった。
それでも光だけは何とか見えたが、数年前、光も感じなくなった。

盲導犬のラブラドールレトリーバーに誘導してもらいなから、やって来た。
元保健師の関さんが、ボランティアとしてかかわってくれた。
関さんは、長野県の健康づくり運動のリーダーとして長い間活躍してきた。
70代後半になっているのに、いまも元気で、心のあたたかい人だ。

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広沢さんには、目が見えないということはどんなに大変なことか、それでも生きるためにどんな工夫をしているか、看護学生たちに話してもらった。
すばらしい命の授業になった。
学生たちは、広沢さんの話を泣きながら聞いた。

広沢さんは目が見えないことで、人生に負けてない。
目の見えない不自由はあるが、彼女は自由に生きている。

「障害のある人を差別をしないでください
できるだけ普通の人と同じように扱ってほしい
ほんのちょっと支援をしてもらえれば、普通に生きられるんです」
彼女は、そう訴えた。

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2010年6月13日 (日)

かえでの樹

原村でカナディアンファームをやっているハセヤンが、茅野市内に「かえでの樹」というレストランをつくっている。

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相変わらず大胆な丸太小屋である。
曲線をおびたカウンターやストーブキッチンは見るだけで楽しい。

娘さんのかえでさんが、やっていて、
おいしいカレーとスパゲティーが出てくる。

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原村まで行くのは、ちょっと大変と思った人は、ぜひ「かえでの樹」へ。

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2010年6月12日 (土)

この人に会いたい(27)葉加瀬太郎さん

葉加瀬さんがナビゲーターを務めるJウェーブのラジオ番組に出演した。

外国で経験した話を聞かせてほしいということ。
ぼくは、チェルノブイリやイラクでの支援の話をした。

Photoアラブの世界を暴力的で怖いと思っている人もいるかもしれないが、実際に行ってみると、とてもフレンドリーだ、という話。

ポーランドのクラコフの話をすると、葉加瀬さんも乗ってきた。
アウシュビッツから車で30分くらいのところにあるクラコフ。その美しいまちのことで盛り上がった。

葉加瀬さんは、日本とイギリスで半々の生活をしているという。
イギリスでは、クラシックの演奏をして、常に自分を磨くことを心がけている。
「101回目のプロポーズ」の西村由紀江さんと同級生だと聞いてびっくりした。

気が合った。
今度、イギリスから帰ってきたときは、西村さんを誘って、再び会おうという話になった。

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2010年6月11日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(42)

「パリ20区、僕たちのクラス」

第61回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。
全世界で絶賛されている。

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ドキュメンタリーではないのに、まるでドキュメンタリーのようにリアリティーがある。
教室で起こっていることを丹念に撮っているのであるが、
子どもたちの才能や悲しみ、つらさを、あふれるほどのみずみずしいタッチで描いている。

移民の多いパリ20区の学校。
子どもたちの暴力沙汰に翻弄されたりする。
先生たちの大変さがよくわかる。
学校がこんなに民主的に運営されるのかと、フランスの教育制度がちょっとうらやましくなる。
だが、その民主的な学校運営とは裏腹に、子どもたちに対する処分はちっとも人間的ではない。
これなら日本のほうがましか、と思うような場面もある。

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矛盾と希望、暴力が縦や横に織りなされていく。
演技経験のない24人の子どもたちがなんとも存在感をみせつける。

映画好きには、たまらなく素敵な映画である。
映画大好き人間でないと、はじめの3分の1くらいは退屈してしまうかもしれない。
しまった、見なけりゃよかった、と思うかもしれない。
だが、中盤以降、ぐいぐいと引き込まれていく。

学校の先生や、子どもをもつ親にも、ぜひみてもらいたい。
若者たちは世界のどの国でも同じような悩みを抱えている。
そして、どの国の子どもたちも、可能性を秘めている。
学ぶということがどんなことかもわかってくる。

明日12日から、岩波ホールで上映される。
とってもいい映画です。

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2010年6月10日 (木)

がん情報ガイド

がんの患者さんから相談の電話や手紙をよくいただく。
特に、最近は多い。
先日、NHKで「こころの遺伝子」が放送されたことや、毎週木曜、日本テレビ系「ニュースエブリィ」にコメンテーターとして出ているためかもしれない。

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『言葉で治療する』(朝日新聞出版)を読んでの感想や質問も多い。

がんの相談といっても、幅広い。
がんの疑いのある人から治療中の人、再発転移と診断された人など、状況によってどんな悩みに直面するのか違ってくる。
中外製薬のサイト「がんの情報ガイド」では、癌研有明病院名誉院長の武藤徹一郎先生と鎌田が、それぞれの状況に合わせて、基本的な心構えや情報収集の仕方、不安に陥ったときの心の整理の仕方、役立つ制度などについて、わかりやすく紹介している。

医師とコミュニケーションがとりづらくなったときにどうするか、病気と向き合うにはどうしたらいいか、ときには筆文字も交えながら、メッセージを載せている。

がんで悩んでいる本人やご家族は、ぜひ、一度、「がん情報ガイド」をご覧ください。
自分は何をすればいいのか、どんなことが必要なのか、情報を整理するうえでも役立つと思う。

がん情報ガイドはこちら→http://www.gan-guide.jp/index.html

写真は、諏訪中央病院の庭に咲く花

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2010年6月 9日 (水)

アフガンのカレー

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小淵沢から車で20ほど清里方面へ走り、北杜市大泉にあるヴィラ・アフガンというカレー屋に行った。


ぼくはカレー好き。
ここのカレーは、欧風カレー。なかなかおいしい。

写真はドライカレーだが、ここのおすすめは、なんといってもベーコンエッグカレー。

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辛さが選べる。
辛いのが好きな人はC、ちょっと苦手な人はBがいいと思う。

ちょっとしゃれたカレー屋さん。
ぜひ、行ってみて。

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2010年6月 8日 (火)

この人に会いたい(26)柳生博さん

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山梨県北杜市大泉に、柳生博さんの八ヶ岳倶楽部がある。
彼は、雑木林づくりの名人。
林のなかに枕木を敷いた美しい庭が、レストランを囲んでいる。
というより、林が先にあり、その美しさに人が集まるようになり、後からしゃれたレストランができた。

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ここのフルーツティーはおいしい。
うちも20年ほど前から、ここのフルーツティーのポットを買って、お客さんが来るとお出しするようになった。
岩次郎小屋の庭に枕木を敷いたのも、柳生博さんの雑木林に触発された。

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今回は柳生さんから、一杯、飲んでいきなさいと声をかけられ、夜8時ごろまで、盛り上がった。
7月からおいしい白パンができるということで、またうかがうことを約束した。

とてもすてきなレストラン。
諏訪中央病院から車で45分くらい。

ぜひ、一度訪ねてみてはいかが。

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2010年6月 7日 (月)

岩次郎小屋の四季

ナンジャモンジャの木に花が咲いた。

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葉の上に白い花が咲き、まるで葉の上に雪が積もったように見える。
遅い春と初夏がいっぺんに来たような気がする。


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岩次郎小屋の下の田んぼは、田植えが終わった。

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5月の連休中に何度も雪が降るなど、不思議な天候だった今年。
米づくりに影響がないといいなと心配している。
アイスランドの火山が爆発した年、江戸時代に米の不作による飢饉が起こったという。
これから順調にお米が育ってくれるといいな。

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2010年6月 6日 (日)

予感

朝4時半に起き、カーテンを開ける。
夏のはじまりが、岩次郎小屋にもやってきている。
岩次郎小屋の最も大きなニセアカシアの木に、新しい芽がはじけるように芽吹いている。
緑がまぶしい。
一人前のコーヒーを半分、小さなカップに移し、岩次郎さんの仏壇に供える。
手を合わせたあと、昨夜、さだまさしさんからもらった『予感』を聴く。

出だしの「片恋」がいい。

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「私は犬に叱られた」
笑ってしまった。
勝手に犬死なんていわせない、という。
まさしさん流の世界が広がる。
笑いながら聴いた。

「予感」
「季節が変わるように静かに押し寄せる波が、
しみるように、あなたで満たされている予感」
美しい出だしである。
静かな音楽にのって、ささやくように語られると、
なんか幸せの予感がする。

こうやってたくさんの曲を作り出し、人の背中を押してあげる。
なんともすごい人だと思う。
そこらじゅうに気配りをして、次々にアルバムを出す。
あふれるような好奇心が、彼の心をつき動かしているのだろう。

原田泰治さんの古希のお祝いでは、実行委員会の副委員長を務めた。
泰治さんは人を大事にする。
その泰治さんの絵にあこがれたさだまさしさんも、人を大事にする。
新しいアルバム「予感」を聴きながら、なんだかおもしろいつながりだなと思った。

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2010年6月 5日 (土)

ドリームフェスティバルinグアム2010(3)

2010年5月16日~20日。病気のある人や障害のある人約80名が、鎌田實とグアムを旅した。 車イスで海に入ったり、おいしいものを食べたり、美しい景色を見たり、ドルフィンウォッチングをしたり。楽しい思い出の名場面をスクリーンショーでご覧下さい。(第3回/全3回) 病気があっても 障害があっても 旅をあきらめない。

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「こころの遺伝子」に反響

NHKテレビ「こころの遺伝子」を見たと、全国からはがきや手紙をいただいている。
たくさんの人が泣きながら見た、という。

宮城県の障害者の生活を応援するグループ「虹の園」の職員の方々も、「こころの遺伝子」を見たと手紙をくれた。
虹の園は、ぼくがずっと応援団長をしている。

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「鎌田先生の後をつぎ、往診にいかれている先生が、おばあさんを見るとき、まず自分の手で聴診器をあたためてから行うという、やさしさがにじみでている自然なしぐさに感動しました」

この行為は、ぼくの前の院長、今井澄先生が心がけていたことでもある。
後任の高木先生は、今井先生の診療行為を直接、見ていない。
聴診器をあたためるという心配りが、今井先生からぼくへ、ぼくから高木先生へ、言葉を超えて、バトンタッチされているのだとすれば、うれしい。

番組では、もし、夫の余命が少ないことを知っていたら、夫の布団のなかに入って、もっと一緒にいたかった、というおばあちゃんの告白を紹介している。
ぼくは、患者さんは、なかなか医師に言いたいことを言えないのだということに気がつき、衝撃を受けた。

この話に、自分がかかわっている障害をもつ人たちは、本当に言いたいことを言えているのだろうか。そんなふうに想像力を働かせ、自分の問題として捉えてくれた職員の方もいた。

とてもうれしくなった。
一つの事実を普遍化していくと、自分たちの生活を変えるヒントになる。

この番組制作のために、毎日、テレビカメラに追いかけられた。
正直、ストレスもたまったが、出来上がった番組を見ると、たくさんの人に生きる勇気を伝えられたようで、今はよかったと思っている。

虹の園では、障害をもつ人たちが、パンやピザ、弁当をつくったり、炭をつくったり、お団子屋さんを展開している。
どれもこれも本物志向で、体にいいものにこだわっている。
特に、パンは驚くほどのおいしさ。
どこでも買えないようなものをつくっている虹の園のお店は、こちら
ぜひ、宮城県に行かれるときには、お立ち寄りください。

虹の園のことは、11月発売予定の本で、原稿を作成中。
「人間は変われる」というテーマで、虹の園の取り組みを紹介しようと思っている。

写真は、草花の手入れをしてくれている諏訪中央病院のグリーンボランティア

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2010年6月 4日 (金)

世界一周の船旅

8月に東京を出発する70回ピースボート世界一周の船旅。
ぼくは、8月末から9月初旬の2週間ほど、エジプトからモロッコまで、船に乗ることになった。
3回ほど、船の上で「いのちの講演」をする予定である。

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若者のためのフリースクールなどが企画されているが、そこでも、何か話そうと思っている。

ピースボートの船旅は、豪華客船とは違って質素だけれど、寄港地で一般の観光では味わえない体験ができる。
先住民と接し、一緒に食事をしたり。
ベトナムに寄港したときには、日本の若者とベトナムの若者が一緒に旅をしたりした。

今回は、不登校や引きこもりを経験した若者たちが、すでに参加を申し込んでいるようだ。
最近は、中高年の参加も多くなった。
船のなかで勉強もできる、世界一周の旅は団塊の世代にぴったりだと思う。

ぜひ、一緒に旅をしてみませんか。

詳しくはこちらを→http://www.peaceboat.org/cruise/1008/index.html

写真は、昨年のピースボートの船上で見た、ポリネシアの海に沈む夕日

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2010年6月 3日 (木)

福井のさば

昨日は福井の美浜に講演に行った。100602image580_2

福井名物のさばのへしこを食べた(=写真右)。
さばを塩漬けした後、ぬか床で1年ほど漬けて発酵させたものだという。
地元の人にとって、ごちそうの、ごはんのおかずである。

滋賀には、鮒のなれ寿司などの発酵食品があるが、日本各地にはそれぞれのおいしい発酵食品がある。

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立派なさばの棒ずしも食べた。

福井はうまい。

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サースフェー

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いよいよサッカーW杯がはじまる。
日本代表は、スイスのサースフェーで高地トレーニングを行ってきた。
氷河の村だ。

2年前、ぼくもこのサースフェーでスキーをした。
美しいところだ。
食事がおいしかったのを覚えている。
トレーニングの場所として、おもしろいところを選んだと思う。

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高地トレーニングの目的は、ヘモグロビンを増やし、赤血球と酸素が結びつく力を増強することにある。
だが、もう少し長く滞在しないと、効果は出にくい。
日本代表の日程をみると、もう2週間ほど長く滞在したほうが、本当はいい。

高地トレーニングは、練習の効率もよくなる。
だが、残念なことに、下に下りてしばらくすると元の体に戻ってしまう。
理想的には、高地トレーニングの場所に直前までいて、そのままW杯本番の南アフリカに行くくらいのほうがよいのではないか。

イングランドなどとの練習試合のために下に下りてしまうと、高地トレーニングの効果は薄れてしまう。
高地の疲れが出てくる可能性がある。L1050635 ちょっと心配。

しかし、トップ選手は、外国などでそれぞれ活躍しているため、長期間、一緒にトレーニングすることは、息を合わせるうえで大事なことだと思う。

本田選手に、あくが強く、気の強いプレーを期待したいものだ。

写真は、2年前、サースフェーを訪れたときのカマタ。

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2010年6月 2日 (水)

この人に会いたい(25)ジョン・チャヌ氏

在日韓国人の有名なバイオリニスト。
この人の演奏する「イムジン川」は、雄大で、繊細で、やさしくて、強い。
4年ほど前、「鎌田實 いのちの対話」で、おそれ多くも、書き下ろしエッセイ朗読の伴奏をしていただいた。

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久しぶりに銀座でお会いした。
フランスに留学し、バイオリニストとして認められた。
韓国交響楽団や東京交響楽団のコンサートマスターなどを務めてきた。

2001年1月、新大久保の駅で、転落した日本のカメラマンを助けようとし、韓国の留学生が命を落とす痛ましい事故があった。
ジョン・チャヌはすぐに駅に赴き、鎮魂のバイオリンを弾いた。
熱い男である。

一度、ジョン・チャヌのバイオリンを聴いてもらいたいと思う。

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2010年6月 1日 (火)

鎌田實の一日一冊(64)

『「がんばらない」経営 不況下でも増収増益を続けるケーズデンキの秘密』(立石泰則著、草思社)

家電量販のケーズデンキでは、定時退社が徹底されている。Photo
週休二日制も当たり前。
数値目標でスタッフをしばらない。
会社が従業員を守り、従業員が会社を支える。

著者の立石は、35歳で社長に就任。
「うちとからんだ人はぜんぶ幸せになるようにします」
定年まで働いたら財産ができる会社にするという。

ぼくの『ウエットな資本主義』のなかで言いたかったことが、実際の経営で行われている。
長く走り続けるにはがんばらないこと。
「がんばる」では、いずれ破綻する。
なかなかの経営者。
おすすめの本だ。

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