鎌田劇場へようこそ!(43)
「ボローニャの夕暮れ」
ヴェネチア国際映画祭主演男優賞受賞。
父親を演じるシルヴィオ・オルランドの存在感がいい。
第二次世界大戦期、イタリアのボローニャで繰り広げられる、家族再生の物語である。
父親は高校の教師。
家族を大切に思っている。
娘を愛している。
愛しているがために、いくつもの失敗が重なり、大事件が起こる。
殺人事件である。
それまで、日常に埋もれて見えなかった問題が、事件をきっかけに、問題として顕在化する。
本物の愛を見つめれば見つめるほど、自分と妻との関係が薄っぺらであることに気づく。
娘と母親の関係も、修復しがたいことに気がつく。
想像を超えた不幸を、父親は根気よく丁寧に解決しようとする。
だが、ちっとも解決しない。
事態は不幸へ、不幸へと向かう。
それでも父親は逃げない。
「愛は強要できない」
この映画は、この父親の一言のためにつくられたのではないか。
妻は、悲しいことに親友である男のもとに走る。
いや、むしろ、「自分に正直に生きろ」と妻にけしかける。
ピュアな男である。
悲しい愛の物語。
娘との関係、妻との愛も、決して強要させることはできないことを、彼はわかっている。
しかし、不思議なことが起こる。
とりかえしのつかないような事件。
妻が違う男のところへ走るという裏切り。
人生はそんなことが起こったとしても、ブーメランのように不思議な回転をしながら、大切なつながりのところへ戻ってくることがある。
美しい風景なかで、人間を丁寧に描いている。
これぞ映画。
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