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2010年7月 2日 (金)

バスラの院内学級

病気の子どもたちが勉強できる環境を整えることは、希望を与えること。
ぼくはJCFで、チェルノブイリの高汚染地域の支援をしているが、以前、小児病棟に院内学級をつくったとき、病棟が急に明るくなった、という経験をしている。
学んでいく子どもの姿ほど、力強いものはない。
子どもたちの目が輝き、それを見たお母さんたちも、希望をもつのである。

イラクのバスラは、今もテロの多い、危険なまち。
そのバスラの小児病院に院内学級を設け、JIM-NETのイラク人スタッフ、イプラヒム先生がずっと、白血病や小児がんの子どもたちに勉強を教えてきた。

イラクには、院内学級という仕組みはなかったが、イラクの教育省からマナール先生という教師が派遣されるようになった。
日本の支援からはじまったのだ。

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今年は、さらにすごいことが起こった。
JIM-NETはもう一人、先生を院内学級に送りこんだ。
18歳のザイナル。白血病のサバイバーである。
イラクでは、白血病は治らない病気と思われている。
そのなかで、白血病が治ったお姉さんが、目の前で勉強を教えてくれるのである。
子どもたちみんなの目の色が変わった。
クラスは、多いときには20人くらい。
アラビア語の読み書きや算数、お絵かきなどを教えている。

イラクでは授業を30日間、休むと進級できないという制度があったが、教育省と交渉し、がん患者は2ヶ月間休んでもいいという制度に改められた。
日本の小さなNPOが、イラクの教育制度を動かしたのである。
その結果、患者全員が進級できた。

子どもたちは院内学級でのびのびと学び、リラックスしながら、安心のなかで化学療法を受けることができている。
子どもたちの描いた絵の展覧会を開く予定だったが、治安が悪く、実現できなかった。
もし、展覧会が開ければ、子どもたちは喜び、もっと張り合いをもっただろう。

白血病の子どもたちや家族を含めた120人が、ピクニックにもいった。
家族同士が情報を交換し、励ましあう場面がみられるようなった。
日本的なあたたかな交流が、院内学級を通してできるようになったのである。
こういう一歩一歩を通しながら、憎しみ合いを断ち切りたい。
テロを生み出すような空気を断ち切りたい。

2009年5月に行われたイラク小児がん学会では、白血病の生存者がステージで歌い、観客に感動を与えた。

イラクのなかでも一番テロが多く、荒れているバスラに、いちばんあたたかな空気が漂いはじめた。
小児病院の院内学級だけでなく、バラスのまち全体をあたたかくできるといいな、と思う。

JIM-NETにご支援をお願いいたします。
http://www.jim-net.net/contents.html

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