改正臓器移植法に思う
改正臓器移植法がスタートした。
本人の意思表示が不明な場合も、生前に拒否していないかぎり、家族が承諾すれば可能になる。
生前の年齢が12週未満をのぞいて、年齢の制限もなくなった。
条件は厳しいが、親族に指定した臓器提供も例外的に優先提供できるようになった。
臓器移植法が法制化してから13年。
移植を待っている人に比べて、移植を受けられる人はまだまだ数が少ない。
今回の改正で臓器移植がすすむことが見込まれている。
しかし、医師や移植コーディネーターが不足している状況のなかで、臓器移植が安全に、安定的に行えるのだろうか。
もし、患者、とりわけ子どもの患者が脳死状態になったとき、いつ家族に話を切り出すか、医師は悩むだろうなと思う。
また、脳死判定をするためには従来の6時間から、24時間、同じ状態が続くことを確認することが求められるようになった。
判定に時間がかかる。
その後に臓器の取り出しをすることになる。
たとえば、救急医療をしている病院では、その間、救急医療が手薄にならないだろうか。
かつて院長をしていたときに、亡くなった後、腎臓と角膜を提供したいと強い意思を示された患者さんがいた。
脳死移植ではなく、呼吸停止や脳の停止、心臓の停止を確認した後、臓器を取り出し、ある2つの県で臓器移植が行われた。
そのとき、病院はとてもたいへんであった。
ご家族は、たいへんな状況下で、たいへんな決断を強いられる。
そして、その後もかなり心がゆれる。
遺族の心のケアは今の病院の体制でできるのだろうか。
日本は、1~4歳までの小児救急の救命率が、先進国のなかでも、アメリカについで2番目に悪いとされている。
その日本で、きちんと救急医療が行われた後の臓器移植であるのか、という点も心配である。
脳死移植を本当に広めていくには、病院の医師や看護師たちにもう少し余裕をあげなければ、法律をつくっただけではだめなのではないか。
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